インバウンド事例

2018.11.01

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【豊岡市】外国人宿泊者数が6年で約45倍に!城崎温泉をフックにインバウンド誘致に成功した、取り組み事例

事例のポイント

1
民間の力を取り入れて体制を整備
2
小規模な宿泊施設が多いことで、ターゲットは欧米豪の個人客に
3
官民連携による豊岡版DMOを発足させることで旅行商品の販売など
4
来訪者の定量・定性調査等のデータに基づく戦略
5
海外の旅行会社がコンタクトを取りやすいようBtoB向けサイトの構築

兵庫県の日本海側に位置する豊岡市は、情緒あふれる城崎温泉をフックに外国人観光客の誘致に力を入れている。その取り組みが功を奏し、同市を訪れる外国人宿泊者数は過去6年間で45倍にまで急増した。風光明媚な城崎温泉街はおよそ1300年前にコウノトリが湯浴みしたことで発見されたというほど歴史が深く、外国人の興味を惹くには十分な魅力を備えている。決して空港からのアクセスが良いとは言えないこの地で、いかにしてインバウンド誘致に成功したのか。その経緯と現在の取り組みを辿る。

 

▲城崎温泉街 (撮影:Shogo Nishiyama)

▲城崎温泉街 (撮影:Shogo Nishiyama)

 

民間の力を取り入れて、インバウンド戦略を強化

今から遡ること10年前の2008年、世界的に有名なガイドブック『ロンリープラネット』で城崎温泉が「Best Onsen Town」として紹介されたことをきっかけに、豊岡市を訪れる外国人観光客は少しずつ増えていった。しかしその頃はちらほらと見かける程度の“自然増”の状態で、2011年の外国人宿泊者数は1,118人。豊岡市の期待に沿うほどの数字ではなかった。そこで同市は、2013年頃から本格的なインバウンド戦略に力を入れ始めるようになる。まず、国内外の観光客誘致と情報発信を担う「大交流課」を設置。さらに総務省の「地域おこし企業人」制度を利用し、旅行会社からの出向者を迎えるなど、民間の力を取り入れて体制を整備し、海外戦略を進めていった。

 

まずは、個人旅行者の多い「欧米豪」にターゲットを絞る

城崎温泉街にはもともと小規模な個人経営の旅館が多く、大規模な宿泊施設は少ない。そのため、当時急増していた中国人団体客を受け入れることは難しく、逆に個人旅行のシェアが高い欧米豪の個人客に焦点を絞った。その結果、豊岡市が発表した直近のデータ「2018年第二四半期の外国人延べ宿泊者数(市全体)」の市場別トップ10には、フランス(4位)、アメリカ(6位)、オーストラリア(7位)、イギリス(9位)、カナダ(10位)の欧米豪5カ国が名を連ね、城崎地域においては欧米豪からの宿泊者数が全体の41.7%を占めている。

▲インターナショナルスクール受入

▲インターナショナルスクールの受入も実施している

 

グローバルな視点を養い、豊岡版DMOを発足!

▲定性調査

▲定期的に実施している定性調査

豊岡市がこれまでに取り組んできたインバウンド施策には、英語・仏語版の情報発信・宿泊予約サイト「Visit Kinosaki」(VK)の運営や、世界各国の旅行博への参加、フリーWi-Fiの整備、観光案内所の運営、PR動画の制作、ウェブマーケティングの強化などが挙げられる。さらに、2015年にはパリに、2016年にアメリカ・オーストラリアに拠点を置き、現地での情報発信を行っている。

世界各国の旅行博に出展し、現地旅行会社へのセールスなどを通して業界者とコミュニケーションを図る中で、豊岡市は行政であるが故に商品を持っていないことを痛感。そこで、2016年6月には官民連携による豊岡版DMO(※)「豊岡観光イノベーション」(TTI)を発足し、旅行商品の販売や海外への営業、外国語での宿泊予約などを手がけてきた。TTIでは、VK利用者の分析や、来訪者の定量・定性調査等のデータに基づく戦略にも力を入れている。

こうして、2011年に1,118人だった豊岡市の外国人宿泊数は、2017年に50,800人となり、6年間で約45倍に急増するという大きな成果を挙げた。

 

城崎温泉以外の魅力も発信!官民連携でインバウンド誘致

▲WEBマーケティング

▲WEBマーケティング講座

では、豊岡市の最近の取り組みどうなっているだろうか。先述した直近の「2018年第二四半期の外国人延べ宿泊者数」の数字を追うと、城崎温泉以外にも外国人宿泊者数が急増している地域がある。特に顕著なのは神鍋高原(スキー場)を有する日高地域で、外国人延べ宿泊者数が、前年同期比の10倍以上に増加した。その背景には民間事業者による台湾からの団体客誘致が影響しているという。

 

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▲海外の旅行会社向けにスタートさせたサイト

またTTIでは、年間を通じた事業者向けのウェブマーケティング講座の開講、台湾・上海・香港から神鍋への教育旅行の誘致、豊岡市街地のインバウンド受入整備(居酒屋等飲食店の英語表記化)、竹野・出石の周遊施策(定性調査、出石キャンペーン、街歩きMAP等の作成)、海外の旅行会社をターゲットとしたBtoB向けサイトの構築など、多種多様な施策に取り組んでいる。

 

豊岡市はコウノトリの日本最後の生息地としても有名で、TTIはコウノトリツーリズムのプロモーション活動も実施。今年はイギリスの「British Birds Fair」に出展するなど、城崎温泉以外にも視野を広げ、積極的にインバウンド誘致を推進している。

▲British Birds Fair ▲British Birds Fair

▲British Birds Fair

人口約8万人の豊岡市は、2020年に外国人宿泊客10万人という目標を掲げている。しかし、その数字以上に「世界の人々から尊敬され、尊重されるまち」という本質を目指すインバウンド観光都市としても、今後より一層の飛躍が期待される。

 

取材協力:一般社団法人豊岡観光イノベーション 

※「Destination Management/Marketing Organization」の略で、観光地域が一体となって観光マネジメントをするために形成される組織体を指す。欧米で普及するシステムで、豊岡版DMOでは、豊岡市、但馬銀行、但馬信用金庫、全但バス、高速バス大手のWILLER(ウィラー)株式会社などが結集し、官民一体で組織されている。

 

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