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【訪日外国人の傾向を知る】インド編:人口、ウェディング市場で世界2位、中間所得~富裕層の増加に期待

2019.04.08

刈部 けい子

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先日のニュース記事「インドのウェディングの平均消費額は3500万円」という内容に驚かれた方は少なくないだろう。しかし、次の数字を見ればそれも納得と思われるかもしれない。

人口世界第2位
ウェディング市場世界第2位

人口でいえば1位の中国が13億9000万人、インドは2位で13億1700万人。2028年には14億5000人に達し、中国を抜いて世界一になるとの予測もある。また、ウェディング市場の規模では、アメリカが700億ドルで1位、インドはそれに次ぐ500億ドル市場といわれている。

これだけ人口が多く、しかも一生に一度の重要な儀式、両家を結びつける大切な行事としてウェディングには惜しみなく費用をかけるというのが一般的になっているインド、国内でのウェディングにも53%以上の人が平均1600万円を消費し、最近人気の海外ウェディングでは49%以上の人が平均4800万円〜8000万円を消費するというのだ。

海外ウェディングで人気なのはプーケットやパタヤ(共にタイ)、バリ(インドネシア)などのビーチリゾートで、最近では積極的に誘致活動を行なっているトルコも人気が高い。

訪日客数は8年で2.3倍も海外旅行人口から見るとごくわずか

2018年のインドからの訪日客数は15万4029人で、初めて15万人を超えた。2010年から比べると2.3倍になっている。ただし、インド人の海外旅行者数2187万人(2016年)から考えると、ごくわずかでしかないのが現状だ。

インド人の海外旅行先で最もポピュラーなのが、3時間ほどのフライトで行ける東南アジアや中東(1)、続いて親戚・知人などが住んでいることの多いアメリカ、イギリス、オーストラリア、あるいは欧州諸国(2)、その次が日本、韓国、中国などの東アジア(3)となっており、訪日旅行は(1)、(2)をすでに経験している海外旅行上級者で、30〜60代の男性、家族やカップル、中間所得者層から富裕層が多い。

訪日インド人の推移-v2

政府はこれまで2013年に数次ビザを導入し、その後もビザの発給要件の緩和などの措置を何度か行っている。今年もすでに1月に数次ビザの発給対象者の拡大や申請書類の簡素化、2月にはインド人学生等に対するビザ緩和措置をとり、訪日の促進を図っている。

インド市場の一番の特徴は圧倒的に多いビジネス客

現在のインドからの訪日客には明らかに他の国とは違う特徴がある。それはJNTOの重点20市場の中で、観光客の占める割合が最も少なく、ビジネス客が最も多いことだ。2018年の訪日客全体では78.2%が観光目的だったが、インドから観光目的で訪日したのはわずか20.7%で、ビジネス客が7割近くを占めるという市場となっている。また、女性の社会進出が後進的であることから、男女比でも男性が全体の79.3%を占め、中でも30代が29.8%と多い。

訪日外国人の主な来訪目的
 (訪日客数トップ6=中国〜タイと観光目的が50%未満の4カ国でグラフを作成)

訪日インド人の主な来訪目的-v2

最近ではMICEのデスティネーションとして日本が認知され始めており、特にインセンティブ(報奨)旅行で高い評価を得ているという。また、学生にとっては教育旅行先としても人気が高まっている。いずれにしろ、これをきっかけに、日本の良さを知ってもらえば、観光での訪日へ発展する可能性も高まるだろう。

家族単位で旅行、インド料理は必須

家族を大切にするインド人は家族単位で旅行するのが基本で、親戚なども含め大所帯で移動することも多い。その点、日本は文化、歴史、自然、テーマパーク、アニメ、ファッション、スポーツなど、幅広い層に受ける観光素材に恵まれているといわれている。インドの海外旅行シーズンは4月〜6月(地域によって異なるが4月〜7月が学校の夏休み)だが、訪日客が一番多いのも4月〜5月、また次のピークはインセンティブの多い9〜10月で、いずれも、桜や紅葉など自然を楽しむのにいい季節と重なっている。

日本は前述の東南アジアや中東諸国(1)と比べるとフライト時間が長く航空運賃も高い、アメリカ、オーストラリア、欧州諸国(2)と比べると在住インド人が少ないなど、ハードルが高い点はある。ただ、インドでは高所得者層(年間可処分所得35,000ドル以上)や上位中間層(同15,000ドル以上)が拡大している現状で、海外旅行者数はさらに増えると予想される(UNWTOの予測では2020年には5000万人を超える)ため、観光目的で訪日する海外旅行上級者の増加も期待できる。

インドの大手旅行会社が実施する訪日ツアーのスケジュールを一例としてあげよう。ターゲットは上位中間層、10泊11日で価格は15万〜30万円。ルートはゴールデンルートに広島(海外旅行者は高等教育を受けた人が多く、第二次世界大戦の歴史に関心がある)、立山黒部アルペンルート(雪壁などの自然景観がアピールする)を加えたもの。また、インドからの訪日客は旅行中でも食事はインド料理やベジタリフードがメインとなるため、ツアーによってはシェフを帯同させてホテルのキッチンを借りて料理する場合もあるそうだ。

世界2位の人口を誇るインド市場、今後の伸びが期待できる市場の一つとして注目したい。

注:記事中の訪日目的のデータに関しては、2018年の訪日外国人動向調査が発表されたのを受け、4月25日に情報を更新しました。

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