データインバウンド

企業のインバウンド対応状況調査、効果的な取り組みはキャッシュレス決済

2019.11.15

刈部 けい子

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日本政策金融公庫が2019年に6月中旬に行なった日本企業へのインバウンド対応に関するアンケート調査結果が発表された。訪問面接による調査は、47都道府県の3,142企業(飲食業、美容業、理容業、クリーニング業、ホテル・旅館業等)から回答を得たもの。

3割近くが自エリアでの外国人観光客の増加を実感

1年前と比べて自店の属する地域で見かける外国人観光客の増減では、29.0%が増えたと回答し、前年調査を2.2ポイント上回った。地域別では北陸、近畿、四国、九州で全国平均を上回り、都道府県別では特に大阪府、東京都、京都府、香川県、愛媛県、石川県などで大きく増えている。

また、外国人観光客の「利用がある」と回答したのは38.3%で、前年調査を1.1ポイント上回った。業種別で「利用がある」の割合は、ホテル・旅館業(83.1%)、飲食業(51.5%)、公衆浴場業(50.5%)の順に高い。

外国人観光客の集客に取り組む企業は3年連続で増加

外国人観光客の集客に向けた取り組みを「実施している」のは全体の30.3%で前年調査を4.5ポイント上回り、3年連続で増加した。業種別では、ホテル・旅館業(75.4%)、公衆浴場業(47.7%)、飲食業(33.9%)の順に高い。

そうした中で、どのような取り組みが効果的なのだろうか。前年は「Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備」が最も多くの回答を得たが、今年は「キャッシュレス決済の導入」の割合が34.4%で最も高かった。10月の消費税率の引き上げと同時に始まったポイント還元などのキャンペーンに伴い、キャッシュレス決済を新たに導入した業者も多いと見られ、今後もこの数字はさらに伸びる可能性がある。

業種別では、美容業での「キャッシュレス決済の導入」の割合が42.9%と他の業種を大きく上回った。ホテル・旅館業では「Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備」の割合が59.5%と最も高く、飲食業では、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」の割合が37.2%で最も高かった。

 

過半数が外国人受け入れに肯定的

外国人観光客に対する今後の方針では、「積極的に受け入れていきたい」「受け入れてもよい」の合計が56.4%となり、過半数が受け入れに前向きな回答をしている 。業種別では、映画館の割合が80.4%と最も高く、ホテル・旅館業(78.7%)、公衆浴場業(76.1%)が続く。

その上で、課題をあげてもらうと、グラフのように「従業員の語学力の向上」の割合が38.5%で前年に引き続き最も高く、キャッシュレス決済の導入は前年の13.0%から24.5%に増えている。つまり効果的な取り組みという意識がありながら、導入へ向けては課題が多いということを実感するようになったということだろうか。

また、前年は「外国人を受け入れたくない」と回答した企業の受け入れたくない理由の1位が、「外国語がわからない、話せない(わかる、話せる人がいない)」だったが、今回は「外国人観光客を受け入れる必要性を感じない」という理由が67.8%と最も高かった。外国人観光客がまわりに増えてきて、自分の店に外国人観光客が必要がどうか改めて考えるようになった状況が反映されているのかもしれない。

キャッシュレス対応の効果実感

取り組み事例の中で「キャッシュレス決済対応」に絞って見ていくと、
・会計処理がスムーズになり、外国人観光客に喜ばれている。
・店頭に「キャッシュレス決済ができます」と表示したところ、外国人客の集客に役立った。
・電子マネー等対応の端末機を設置し、店頭にキャッシュレス決済の表示をしたところ、高級和牛等を求める外国人客が新規客として増えた。
・キャッシュレス決済は外国人客も店側も助かる手段。
といった声が聞かれた。

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