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2019年東北6県のインバウンド宿泊者数、東日本大震災から8倍超の155万人で政府目標前倒し達成。LCCなどの誘致が功を奏す

2020.03.11

刈部 けい子

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今日(3月11日)で、東日本大震災から丸9年が経過したことになる。

政府は2016年の『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』で、東北6県の復興を目指し、2020年までに東北6県の外国人延べ宿泊者数を150万人泊とする目標を掲げた。観光庁「宿泊旅行統計調査」(2月28日発表の速報値)によると、2019年の東北6県の外国人延べ宿泊者数は155万7910人泊となり、1年前倒しで150万人泊を達成したことがわかった。

延べ宿泊者数は5年で3倍増

グラフを見ていただけるとわかるが、2010年に50万5千人泊あった東北6県の外国人延べ宿泊者数は、2011年に東日本大震災が発生し、18万4千人泊まで減少した。しかし、1年後にはプラスに転じ、その後徐々に増えると、2015年には2010年の水準を超えるまでに回復。2016年には、東北地方の風評被害を払拭し、東日本大震災の影響により大きく落ち込んだ訪日外国人旅行者を回復させることにより、観光を通じて被災地の復興を加速化するための交付金等による支援が開された。その後2年間で延べ宿泊者数は倍増し、2019年に150万人を突破した。東日本大震災が発生した2011年の18万4千人泊と比べると、2019年の数値は8.46倍になっている。

ちなみに、2019年の訪日客数全体は3188万人で、2011年の621万人と比べると約5.13倍に、2019年の外国人宿泊者数(速報)全体は1億143万人泊で、2011年の1842万人泊と比較しても5.5倍だったことからも、東北の伸びが全国平均を上回っていることが分かる。

2019年の延べ宿泊者数を県別に見ると、青森県33万7870人泊(前年比3.2%減)、岩手県29万7770人泊(同15.0%増)、宮城県54万1980人泊(同34.8%増)、秋田県13万780人泊(同6.0%増)、山形県21万7580人泊(同33.1%増)、福島県20万2660人泊(同14.9%増)となっている。全国平均の前年比が7.6%増だっただけに、青森県、秋田県を除くと全国平均を大きく上回っていることがわかる。 ただし、東北6県の2019年延べ宿泊者数全体(4133万5340人泊)に対する外国人延べ宿泊者数の構成比は3.8%で、全国平均の18.7%に比べるとまだまだ低い。

また、全国の2019年外国人延べ宿泊者数(1億143万4710人泊)に東北6県が占める割合は1.5%で、いずれも前年とほぼ変わらない数字となった。

台湾からの宿泊者数が5割超える岩手県

東北6県の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数構成比を見ていこう。グラフのように6県いずれも最も多いのは台湾からの訪日客で、特に岩手県では5割を超えている。

2010年以降、東北地域への訪日客は台湾からが最も多いが、さらなる誘致のために台湾をターゲットにしたプロモーションを実施したのが奏功し、他の国・地域と比較して伸び率が大きい。仙台空港では2016年にLCCの台北線が新規就航するなど定期便の増便があり、現在は直行便が6社運航、2018年には、いわて花巻空港に唯一の国際線として新たにLCCの台北線が就航するなど、航空路線の充実が大きな要因となっている。また、2019年には東北の玄関口を自認する仙台空港でタイのバンコクを結ぶ定期便が5年半ぶりに運航を再開した。

 

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