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2020年上半期の世界旅行者数4.4億人減少、経済損失48兆円に。アジア・太平洋の打撃大きく —UNWTO

2020.09.29

刈部 けい子

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UNWTO(国連世界観光機関)によると、2020年上半期の世界の旅行者数(国際観光客到着数・海外から1泊以上で入国した旅行客の数)は、前年同期と比べると65.3%減少したことがわかった。特に6月は92.6%減と最も減少率が大きかった。

また、7、8月の海外旅行者数の速報ではそれぞれ85%減と80%減となっており、1月から8月の累計では70%減になる見通しだという。

観光客は4億4000万人の減少

2020年1月から6月の半年で、世界の旅行者数は4億4000万人減少し、国際観光収入は4600億ドル(約48兆5700億円)の損失となった。これは2005年の世界金融危機の5倍以上となる。

最も打撃を受けた北東アジア

地域別に見ると、新型コロナウイルス感染症が最初に拡大したアジア・太平洋地域では今年上半期は前年比72.2%減で最も打撃が大きく、次に欧州の66.5%減となっている。

また、アジア・太平洋地域のなかでは日本を含む北東アジアが82.5%減と最も大きなダメージを被っている。

国境の再開によってフランスやドイツで6月の海外旅行者数に回復の兆しは見えたがその動きも短期間に終わり、欧州では現在、第2波、第3波の懸念が大きい。また、人口の多い中国やアメリカなどをはじめとして海外旅行者数は落ち込んだままだ。ただし、国内需要に支えられて戻りがみられる国・地域もある。たとえば中国では国内旅行の復活で7月の航空座席数は2019年の9割までに回復、ロシアでも同じく国内需要の増加で航空座席数が回復しているという。

2019レベルに回復するのは早くて2023年半ば

UNWTOが5月に発表した3つのシナリオでは、2020年の海外旅行者は前年と比較して58%から78%の減少としていた。上半期で65.3%減少という数値を見ると、現状ではシナリオ1とシナリオ2の中間にあるが、シナリオ1で7月初旬とした旅行規制の緩和は欧州で限定的に短期間行われただけであり、今後シナリオ1で進む可能性はほとんどないという。

国際観光が2019年のレベルに戻るには、1)旅行者の信頼の回復、2)段階的な規制の解除、3)一般的な経済状況など、様々な要因に基づくが、1)2)と2つの要因が回復を後押ししたとしても、経済環境の悪化がリバウンドに負担をかけかねないとしている。なお、2021年以降のシナリオとしては、パンデミックが収まり、ワクチンまたは効果的な治療法が確立されて旅行客の信頼が大幅に回復し、2021年半ばまで旅行制限が解除されれば、2021年には強い回復傾向を示すものの、2019年のレベルに戻るには2年半(2023年半ば)から4年(2024年末)かかるということだ。

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