データインバウンド
コロナ禍における国内ランドオペレーターへの調査結果、半数以上が2021年の売り上げゼロと予測。壊滅的な状況が明らかに
2021.06.14
ワクチン接種の進行とともに、インバウンド旅行の復活が期待される。インバウンド再開時には、オーダーメイド旅行やMICEといった高単価の旅行商品から動くという予想もあるが、そのような訪日旅行を成功させるには国内ランドオペレーターの存在が不可欠だ。しかし、コロナ禍で事業撤退や倒産が相次ぎ、存続している会社も厳しい経営状況に陥っている。そういった現状を把握するため、今回、日本インバウンド・メディア・コンソーシアムが国内ランドオペレーターに対して緊急意識調査を行った。国内400社とのコンタクトを試みたが、連絡がとれなくなっているところも多く、回答が得られたのは約1割の40社と、通常の調査に比べ回答率は非常に低かった。
90%以上の会社で人員を削減、25%が2020年の売り上げ、前年比0%
まず、2019年の社員数を100とした場合の現在の社員数を聞いたところ、90%以上で人員が削減されており、半減以下と答えた社が40%に達した。2020年の売り上げ状況と2021年以降の予測については、2020年にはほとんどの会社が売り上げの8割以上を失っており、2021年の売り上げはゼロを予想する会社が半数を超えていた。数字の回復を見込んでいない理由としては、今年はインバウンド市場の本格回復は期待できず、速度も緩やかだという悲観的な見方に加え、従業員が辞めてしまって対応ができないことや、新規事業へ移行するなど、各社がコロナ禍で陥った状況によるものもあった。
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Go To Travelキャンペーンは8割近くが「効果なし・ほとんど効果なし」と回答
政府が観光業への支援対策として行ったGo To Travelキャンペーンは、全体の50%が「全く効果がなかった」、28%が「ほとんど効果がなかった」と回答した。キャンペーンの効果があったのは、効果があったと答えた22%の会社も、インバウンドのマイナス分は補えなかったとしており、キャンペーンは国内ランドオペレーターにとっては恩恵はなかったと言える。
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効果があったのは雇用調整助成金などで、政府に対してさらなる経営支援対策を希望
一方、利用して効果的だった支援は政府の「雇用調整助成金」「家賃支援給付金」「緊急コロナ融資」などで、例えば全体の80%が雇用調整助成金を利用し効果的だったと回答している。今後も全体の98%が何らかの政府の支援を期待しているが、経営の見通しについての質問に対しては、45%が「支援策があっても今後も経営状況が厳しくなる可能性がある」と答えた。5%は事業からの撤退を検討しており「インバウンド中小企業への具体的支援がない」とのコメントも寄せられた。
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業界全体の落ち込みは深刻、今後のインバウンドの急回復に対応不可になる可能性も
「コロナ禍後にインバウンド市場が急回復した場合の不安点・懸念点はあるか」という問いに対しては、75%が「ある」と回答した。不安要素として一番多かったのは、「取引先(送り出し先)が倒産や事業縮小をしていて、回復の波に乗れない」だった。アフターコロナのインバウンドを2019年のような隆盛期まで回復させるには、高付加価値旅行のコンテンツ実現を支え、丁寧で確実な対応と手配ができる国内ランドオペレーターの力が必要だが、担い手不足が懸念される。
一方で、今後のインバウンド市場でのビジネス規模について尋ねると、半数は「2019年以上に拡大していく」と答えており、「インバウンド市場には取り組まない」との回答はゼロだった。78%が物販のネット販売やオンラインツアーなどの新規事業に取り組んでおり、来るべき急回復に向け、苦しい今をなんとか乗り越えようと努力をしている様子が伺える。
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外国人観客の来日がなくなり「東京五輪の開催での期待感はない」が7割に
東京2020の開催について尋ねると、東京オリンピック・パラリンピックの開催においては、外国人観客の来日ができなくなったため、国内ランドオペレーターの出番は殆どなくなったのが実情で、約7割が「あまり期待できない」「期待していない」と答えた。それでも、「期待している」または「大いに期待している」と回答したのは全体の30%に上り、「開催は今後のインバウンドのコマーシャルにはなる」「社会全体の閉塞感を打開する起爆剤にはなると思う」など、今後のインバウンド再浮上に期待感を持つ事業者も少なくないことがわかった。(C)JIMC
中小国内ランオペの厳しい現状が明らかに
国内ランドオペレーターと一口に言っても、インバウンド業務にどれだけ、どのように関わっているかで大きく状況が異なる。今回、アンケートの回答があった旅行会社は、従業員数10名以下の企業が58%、10名〜50名の企業が30%と、中小企業の現状をあぶり出す結果になった。インバウンド業の枯渇により新規事業や市場に参入して会社の特性が変わったり、インバウンド以外の業務振り分けができず従業員数が減少、今までのような対応ができなくなるなど、理由は様々だが業種自体が確実に脆弱化していることは否めない。アフターコロナの訪日観光が回復に向かうための橋渡しを行う国内のインバウンド受け入れ側が、要求に応じてペースアップできるかどうかは疑問が残るところだ。困難に直面する国内ランドオペレーターの実情を把握し、細かな掬い上げを可能にする支援策を打ち出すことが、アフターコロナのインバウンド復活を大きく左右すると見られる。
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