インタビュー

株式会社世界 代表取締役 小林一弘氏(後編)

2016.12.16

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東京の不動産を外国人に案内するツアーを企画!

前編に引き続き、台湾からの不動産視察ツアーを手配している株式会社世界、代表取締役の小林氏のインタビューを掲載。インバウンドの新しいアプローチとも言える、海外の投資家たちの熱い関心を示している東京の不動産に日本の不動産の優位性をうかがった。
<2016年12月16日>

 

海外の投資家から人気の日本の投資先としては、東京以外に大阪、札幌、福岡があります。私どものご案内物件は、都内を中心としています。東京でも人気のある場所は、駅から徒歩5分、ターミナルの駅に近い等、利便性が高い物件に集中します。根強い人気のエリアは、港区、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区の5箇所です。基本的に投資利回りという考え方で検討される方が多いようです。自分で住むという実需要は、20%ほどで、80%は投資目的ですね。

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若い投資家が多く、20歳代後半から40代がボリュームゾーンです。恐らく台湾では、将来への危機感が高いからではないでしょうか。年金制度が日本ほど充実していないこともあります。またいつ政情不安になり、銀行預金が凍結されるかもしれないと考えています。

ですから台湾の投資家は、日本だけではなく、アメリカ、オーストラリア、さらにタイ等に分散投資している場合が多いのです。

 

日本の不動産マーケットについて台湾からどう見られていますか?

日本はバブル崩壊以降、地価は大幅に下落しましたが、オリンピックの決定以降、都内の地価は上がっています。一方、台湾はこれ以上の地価の伸びが期待できない状況で、高止まっています。つまり投資しても利幅が見込めないのです。

東京は、香港、上海と比較すると割安感があります。ですからアジアの投資家には、日本の不動産に興味を持っています。もっともここ最近の円高によって、以前ほどの勢いがありませんが。

ニーズが高いにも関わらず、残念ながら、魅力的な物件は、中古だとなかなか出てきません。たまにあるのですが、他にも購入したい方がいるので、スピード勝負となってしまいます。そうなると残念ながら、タッチの差で他の日本人投資家が先に購入されるケースも珍しくありません。

東京での投資物件は、圧倒的に戸建よりもマンションが人気で、1:9ぐらいの大きな差があります。日本のマンションやビルは、アジアの中でも大きなアドバンテージがあります。それは中古であっても程度が良いという特徴です。

なぜ程度の良い中古マンションが多いかには理由があります。管理組合がしっかりしていること、修繕積立金をしっかり徴収すること等、修繕計画がスムーズに進む仕組みになっているからです。一方、台湾ですと修繕積立金という制度がないため、実際に破損や壁の劣化があってもオーナー同士の話し合いが難航して修繕が先送りになるケースが多いのです。その結果、建物が全体に汚い印象になります。また日本の建物は耐震性基準があるため、頑丈で安心と評判です。

 

今後の市場の展望と貴社の取り組みについて教えてください

日本への不動産投資ニーズは続くと思います。それも2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時期で終わりではないでしょう。それは、彼らにとっての分散投資という考え方があるからです。現在は、円高という逆風があるものの、値ごろ感のある物件があれば、すぐに飛行機に乗ってやってきますよ。

投資は親からお金を借りてでもするという考え方があり、それで若いときからコツコツ資産形成に励みます。台湾のコンビニを覗くと、雑誌コーナーには、何と投資関連本が、ファッション誌よりも多くの棚を取っています。まさに投資は生活の一部なのでしょう。身近なものとして興味を持たれています。

今後の展望としては、中国市場にも水平展開を考えています。中国からの不動産視察ツアーの受け入れを目指しています。そのため、来年を想定し、現地での日本の不動産投資セミナーを始める予定です。

一方、プライベートジェットの手配業務も加速させたいと考えています。不動産投資家となると、やはり富裕層が多く、なかにはプライベートジェットで来日するケースも珍しくありません。今年からプライベートジェットのマッチングサイトを始めました。

最近は、不動産以外にM&A(企業買収)についての声も聞きます。やはり、彼らは、キャッシュを銀行に置いたままにするという発想はなく、そのお金で投資するということを優先するのでしょう。いつも次の投資先を探しています。富裕層向けの新しいサービスも今後に向けて考えたいと思います。

 

取材後記:

不動産視察を目的に来日されても、観光やショッピングも組み込むケースが多いそうだ。せっかくの日本での滞在を楽しまれるのだろう。このようにいろいろな動機で日本にやってくる人が増え、インバウンドの裾野が広がっていると実感した。

 

 

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