インタビュー

2008.02.10

観光カリスマ 山田桂一郎氏②

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Q2.山田氏が現在取り組んでいることについて教えてください。

【日本の観光】

私は現在スイスに在住ではありますが、頻繁にスイスと日本を行き来しています。年間の国際線と国内線を合わせたフライト数は平均170回になります。 私が日本に通い、何を目指しているのかといいますと、最終的ゴールは、日本の「国民生活満足度指数(Life Satisfaction)」を世界1位にすることです。採点は10点満点なのですが、世界で唯一8点以上を取れるのはスイスであり、それ以下は北欧やヨーロッパ諸国が続きます。では日本は何位なのかといいますと、6.3点の23位でいつも6点台前半です。これは経済力や武力だけで世界の覇権争いをしていてもスコアが良くなるものではありません。この指数は本当にそこに住む人々の豊かさを表しているものです。日本はG8だからと言っても、実際に国民が豊かな生活や満足な暮らしをしているわけではないのです。

先日、観光の国際競争力というものが発表されましたが、実は国民生活満足度指数と比例し、スイスが1位で、日本は23位だったのです。まさしく、これは「国民の生活満足度=真の豊かさ」と、国民の生活文化とライフスタイルと共に心の豊かさが問われる観光産業の成熟度が見事に一致している証拠だと思います。

最近になって日本は先進国として生きていくために、観光に力を入れていかなければならないという状況にようやく気づき始めた段階だと感じています。目を外へ向けてみると、日本が抱えている少子化や高齢化などの先進国としての多くの問題に対して、ヨーロッパの国々は50年ぐらい前からすでにぶつかっていました。そして、それを解決してきた形や仕組み、地域のあり方が、今のEU諸国やスイスを形成しています。では、その問題にぶつかった時、スイスや欧州国は何を優先して、どのようなことをやってきたのかを考察すれば、今後、成熟した国に日本がなれるかどうかの重要な指標を見出すことが可能です。この指標となるポイントはいろいろとありますが、最も重要なことは先程から言っている通り、国民の真の豊かさとは何であるかを考えた国づくりを前提に、産業構造としては観光と他の産業を上手く連携させて総合産業化を図ることです。
また、後程詳しく説明をしますが、そうしなければ、先進国として雇用を確保した上で、賃金を払うことができないことや、産業全体に経済効果を波及できなくなるからです。そして、外から人がやってきてお金を国内で使ってもらうためにも、インバウンド政策も更に進めなければ国内消費の減少に歯止めを掛けることもできなくなります。

私は、日本が欧州並の成熟した先進国家であるためには観光立国として成り立つことが大事だと考えています。だからこそ、「住んでいる人が本当に豊かでないとだれもその地には来ない」=「観光立国には成らない」と考えているのです。

【スイスという土地】

ではスイスという地を見てみると・・・
・大きさは約4万1千キロ平方メーター。日本の九州くらいしかない
・多民族・多文化・多言語(公用語は独語、仏語、伊語、ロマンシュ語の4つ)の国家で、人口の5分の1(約20%)は外国人
・海も無く、周りはヨーロッパ列強諸国に囲まれている
・国土の7割がアルプスの山々。平野部は少ない
・他の国々と比べて、圧倒的に天然資源が少ない

このように挙げてみると、スイスという国は人々が集まるような魅力的な国のようには見えませんが、実際、多くの人々がこの国に魅了されています。 その理由は、前述のようにこの地に住む人々の豊かさと生活の質の高さに結びつきます。

【日本の現状】

現在の日本人は将来的な不安と社会的な不安が多いため、国民がお金をあまり使えません。それに比べるとスイスや北欧諸国は年金制度や社会保障制度がしっかりしていて、退職後の生活や、もしもの時の社会的な不安や心配がほとんどなく、社会で働いている現役世代が老後の生活や社会に対してあまり心配をする必要がありません。日本ではこの不安要素が大きいためにどうしても消費行動よりも貯蓄にお金が向かいます。現役世代が働いて稼いだお金をある程度自由に使えるということも、本当の豊かさを考える上で重要な問題です。たくさんお金を儲けるということではなく、普通に使えることすら日本では難しくなっています。だからこそ、国としての年金や社会福祉、医療等の制度の確立は非常に重要であると考えます。

また、今後、日本は経済力だけで世界で勝負をすることも生き残ることもできません。元々、日本は武力で世界覇権を目指しているわけでもありませんが、経済力においても、特に製造業については、今後、人件費の安い中国や東アジア諸国と争っても意味はないのです。そこで、日本国内で雇用を確保しようとなると「観光・サービス」を伸ばすしか方法がないのです。というのは、観光というのは手間ひまがかかり、旅館でも土産物屋でも流行れば流行るほど、人の手が必要になってきます。産業の構造として雇用と直結しています。また、国内や地域内だけのお金の循環ではなく、外からもお金が入ってくることで経済的な効果が生まれます。ヨーロッパの小さな村にも必ず観光局があるのは、外からお金を稼ぐことと、雇用を生み出すという2つの使命があるからです。逆に、その地域に観光の仕組みがなければ地域の経済活動は縮小するだけで町も自立できません。雇用も無く、人口が流出していく一方になってしまうからです。

【地方、僻地の格差と経済活動】

日本では今、都市部と地方では地域間格差があると言われていますが、正直、それは本当でしょうか。実際に沖縄の離島の方では、この「観光」を軸とした経済による効果で地域が成り立っており、八重山諸島だけの経済成長率はこの4年間10%以上で伸びています。それは決して他の地域ではまねできないものではないと思っています。どこの地域においても観光産業を中心に総合産業化で自立を目指すことが出来、スイスのような生活満足度の高い地域をつくることが可能だと思います。

【経済の仕組み】

ここで少し経済の話をしますが、ここにも実は大きな落とし穴があるのです。大きな問題の一つとしてほとんどの企業の給与ベースが近年、全く上っていないことがあげられます。普通、企業収益が上がると、給与ベースも上がるのですが、日本企業の場合、ボーナス等でごまかし給与ベースがなかなか上がりません。先進国の中でユニット・レイバー・コストが唯一マイナスなのは日本だけです(普通は企業収益が上がれば、比例して給与ベースも上がる)。ただでさえ、社会不安、将来不安があるなかで、給与が上がらないことにより多くの人はお金を使わなくなってしまいます。 例えば、なぜバブルがはじけた後も、日本の経済成長率がほぼ横ばいで済んだかというと、それは単純に、消費を引っ張る20~59歳の現役世代がバブル後も 200万人ほど増えたからです。GDPの約6割は国内消費ですから、この世代が増えたことによって消費の下支えをしたとも考えられます(GDPに占める輸出産業の割合は約14%しかない)。そして今、大手企業の国内販売や売上が伸び悩んでいるのは、逆に20~59歳の人口がピーク時(1995年)よりも現在は推定で300万人も減っているからです。つまり、一番購買力のある層がごっそりと減ってしまったために、現在の消費が伸び悩むような状況になってしまっているのです。このような経済の仕組みにも気づかなければいけません。

では、欧州の先進諸国はどうでしょうか。彼らは観光を含め世界にいろいろなものを売っています。例えば、輸出品もスイス、イタリア、フランスは日本に対し、農産品からブランド品、スーパーカーまで全産業の製品と商品のありとあらゆるものを売り、対日貿易で黒字を出しています。ちなみに、スイスは貿易収支の約20倍も経常収支があります。だったら、資源豊富な日本もこれらの国々のようにいろいろなものを世界へ売っていくことで経済的にも豊かな国へと変化していくのではないでしょうか?

(Part 3へ続く)

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