インタビュー

2008.02.10

観光カリスマ 山田桂一郎氏⑤

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Q13.では、現実的にどうしていけばいいのでしょうか?

現実的に、その地域本来の姿を保つために、地域のオリジナルの姿を全て保っていくことは難しいと思いますが、ヨーロッパの街などを見てみると、建物や街並、景観など昔のままに上手く保って活用しているところもあります。そして、そのような地域には多くの人が訪れています。逆に、その地域らしさを崩してしまった観光地は観光客数が落ちているのが事実です。このためには、先程からお話をしている地域のあるべき姿やこれから向かうべく方向性を決めることや、地域全体が連携しなくてなりせん。地域内の利害をはっきりさせ、仮説を実証することも必要ですが、もう一つは「エゴ」をどうするかということです。ほとんどの地域がエゴや利害関係のために、共通のテーブルにつけないでいます。その時に、共通のテーブルとして、共通の認識を持たせるものが地域にとっての「環境問題」だと思います。例え、どんな人でも「この地域の環境をよくしましょう」という提案に表立って「ノー」という人はいません。これにより大きなくくりではありますが、一つのテーマで地域をまとめることが可能です。そこから地域のあるべき姿や今後の方向性を示していけば良いと思います。観光産業的には、「エコツーリズム」という考え方もあります。地域のエゴを解決するためにも、エコツーリズムは事業者や住民の方々に地域の環境保全と自立のための産業構造を考えるきっかけになります。そして、それは地域の普遍性のある本質的な魅力と地域本来の姿を考えることにもつながってくるのです。

Q14.自立した地域を増やすためには何が必要だと思いますか?

道州制や地方分権の流れや国からも自立を促されている中で、本当にこのままで自分たちの住む地域が自立できるのかどうかを真剣に考えるべきです。基本的にはほとんどの自治体には自立できるほどの財政力はなく、経済的に苦しいのははっきりしています。 その中で、住民が行動をしようとすると、先程話した「エゴと利害」が絡み合います。地域によっても違いと差がある問題ですが、地域の方々が自分たちの力でその問題を解決していかなければなりません。私がやっていることは、地域自らがそれらの問題を解決し、自分たちで責任を持って、決断と実行ができる力を育成することです。そのためには、第三者が、どこに問題があるのか、どういうビジョンでやらなければいけないのかというアドバイスも必要です。自立するために必要なポイントを明確にしてあげることが重要だと思います。

Q15.スイスにおける着地型のツアーはいかがでしょうか?

日本では、インバウンドにおいて着地型のツアーが十分ではありませんが、スイスでは、観光・リゾート地は現地発着のツアーやプログラムが充実しています。お客様の大半は現地で何ができるのか、何が経験、体験ができるかという理由で場所を選んでいます。ただし、そのツアーやプログラムには地域の良さを伝えて、お客様を満足させ、もう一度来たくなるような仕組みが必要です。 私自身が実際にガイドをするときの自然や歴史等の解説や話でも、大事なのはお客様に満足してもらってリピートしてもらうことですから、例えば、冬に山や氷河、動物の話をするだけではなく、同じフィールドの夏の良さを想像してもらうために、高山植物の話をすることもあります。夏にもう一度来て、このガイドと一緒に歩きたいと思ってもらえるようなガイディングをします。これはその地域をよく知っているからこそできるもので、「地域学」というのは観光の中でも大きな役割を果たします。

また、ツアーやプログラムの商品構成としては、レベルが高く内容が深い、料金的にも高いものから、初心者レベルを対象とした安くて手軽なものまで、ピラミッド型に揃えてあることが理想だと思います。まずは、手軽にできる入門的なもので誘い込み、どんどんと内容が深くて濃いものへ引き込む流れをつくるのです。日本の場合、入門編の簡単なツアーやプログラムほど新人のガイドが担当しますが、ヨーロッパの場合は、そういったツアーほど熟練のベテランのガイドが行います。それは、その入門編でお客様を大満足させないと、もう一歩踏み込んだところへお客様が入って来てくれないからです。

※参考資料
ラーメンで例えるマーケット戦略

ラーメンで例えるマーケット戦略
(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)

Q16.日本の観光の仕組みで不十分だと思われる点は何でしょうか?

日本の場合、第三者からの評価制度がないと思います。自己評価とお客様からの評価の仕組みはありますが、第三者が公平に評価するところがありません。欧米では、これらの仕組みが確立されているので、旅行者が選択する場合の目安になります。例えば、スイスでも、ホテルを星の数でカテゴリーに分けることや、Qマークでクオリティ評価をしています。日本の宿泊施設だと外観写真と料金だけしか判断できない場合があります。
事業者の都合で出す情報ではなく、旅行者が欲しい情報を正確に提供できないとミスマッチが起こる原因となります。誰から見ても公平で公正な評価をする第三者的な機関や制度の確立が日本でも必要だと思います。

Q17.お客様を満足させるためにはどうしていけばいいのでしょうか?

お客様の個々の満足を獲得するためには、そのお客様の旅の目的、理由、テーマ、要望、欲求をしっかりと捉えることが重要です。そして、後は、それを満たすためには何をすべきかを判断して実行するだけです。リピーターになればなるほど、お客様から多くの情報を引き出してCRMを徹底すべきです。そうしないと、お客様が要望する先を読み取ることもできません。事前期待を超えるには「感動」という事後評価が必ず必要です。

また、地域全体としては、トータルの地域力を上げていくしかないと思います。それはインバウンドだけのことではありません。どうのようなお客様が来ても地域全体で満足させて帰すというユニバーサルツーリズムの根源的な考えです。そして、最も重要なのは、その地域に来てもらうためのお客様にとっての明確な理由と目的を提案することです。
ただの物見遊山ではなく、お客様が心から行ってみたいと思う理由や目的になる体験や好奇心を満たす商品が必要になります。まずは、地域全体で何をテーマ、コンセプトにしていくのかを決め、ターゲットにしたマーケットに則したこだわりの商品構成を用意しなくてはなりません。

Q18.ご多忙な毎日の中で、限られた時間をうまく利用する方法は何ですか。

(山田氏と親交の深いJNTO理事である安田氏より、類まれなる行動力で日本の地域活性化に邁進される山田氏の時間管理についてのご質問を頂きました。)

プライオリティ(優先度)をはっきりすることだと思います。そして、自分のやれることだけをやる、ということです。つまり自分だけで全てをやろうとするのではなく、自分の持つ人的ネットワークをうまく活用することです。やはり、ここでもネットワークとコミュニケーションによる人との関係が大切です。

Q19.人的ネットワークを作るうえで気をつけていることはありますか?

実際に会って話をすることです。人にはいろんなうわさやイメージがつきまとうものですが、私はその人に会うまでは事前情報による先入観を持たないことにしています。実際に会って、そこで初めて自分で判断をします。それと、「ギブ アンドギブ」です。何かをやってもらおうと期待してネットワークを作らないほうがいいと思います。そして、仕事以外の人間性の部分も含めてお付き合いができるかどうかだと思います。

Q20.日本の魅力とは何でしょうか?

日本は、地域それぞれに魅力があり、それを地域の人々が誇ることができることが一番重要で最大魅力だと思います。そうしなければリアリティのある魅力やメッセージ性も出ません。ただ、今のところは上手く誇ることができない地域が多いだけです。また、観光の魅力は最終的には「人」だと思います。「おもてなし」とは「お持て成し」と書きますが、それは地域の人々が地域力を持って、お客様に対して、心から成す(結果を出す)ことです。この言葉を持つ日本はとっても魅力的です。
あとは、他の言語に直接他の言語に訳すことが難しいのですが「粋」が日本の魅力だと思います。

Q21.山田氏にとって「観光立国」とは何でしょうか?

まさしく、成熟した先進国として生き残るための一つの目標であり、国民が心から豊かな生活を送るための手法、手段でもあります。ただし、日本はまだ、その戦略の部分がはっきりと決まっていないので、やるべきことがまだまだあるといえます。

 

Q22.今後のテーマなどありましたらお教え下さい。

今まで、世界中のいろいろな地域に携わってきましたが、本当に素晴らしいといえる地域には、人の3つ条件があります。一つは、その地域の子供たちが自分の地域のことをよく知っていて、その地域を大好きで、元気があることです。二つ目は、その地域の女性の豊かな感性を活かして使えているかどうかです。女性は男性に比べ豊かな感性を持っているので、それをうまく使うべきだと思います。そして、3つ目は、お年寄りの身の処し方がきれいだということです。日本のようなお年寄りによる老害やエゴは困ったものです。今後は、これらの条件が揃う地域を育てていきたいと思っています。そして、「エゴ」でも「エコノミー」でもない「エコツーリズム」の更なる普及です!

 

また、Part6では、マーケットのデータを公開しています。 正確なデータを読み取り現状を把握することが必要だと山田氏はおっしゃっていました。 そして、最後には今回の取材にご協力くださいました、通訳案内士高宮暖子さんからのコメントも寄せられておりますので、そちらもぜひご覧ください。

(Part 6へ続く)

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