インタビュー

2010.06.10

株式会社アール・プロジェクト・インコーポレイテッド代表 福永浩貴氏②

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海外富裕層の旅行者は旅館が持つストーリーに興味を抱く

村山

「ザ・リョカン・コレクション」について教えてください。現在では、どのくらいの規模で運営をされているのでしょう。

福永

立ち上げ時には、加盟旅館軒数19軒からスタートし、今では30軒となっています。それに対して、利用者の側である外国人会員は、先ほど申したように1万2千人ですが、2010年の実績ですと年間約1万人の方がアクティブに予約をしているという状況です。

「ザ・リョカン・コレクション」に旅館を加盟するためは、私どもが設置する審査委員会にて、250ポイントに渡る審査基準をクリアした日本旅館、小規模ホテルのみが加盟できます。

評価をするメンバーは海外の富裕層の方、日本のホテル関係者など8人で構成。電話の応対からはじまり、ホスピタリティ、食事、清潔感など、こと細かにチェックさせていただいています。

村山

審査が通った時点で、加盟料を支払い加盟できる、というシステムなのですね。

福永

そうです。ヨーロッパではこのような組織が多くありますが、この日本では馴染みの無いビジネスモデルでしたので、なかなか理解されずに苦労しました。

日本では旅行会社の力が強く、任せておけば成功報酬で大丈夫というか、これだけITの普及によりユーザーが自分たちで直接アプローチできるようになったにも関わらず、そういった旅行会社任せのマーケティング方法しか存在しないと思い込んでいたんですよ。

しかし、どんな人気旅館であっても、世界に日本旅館の素晴らしさを伝えたい、これからはグローバルに自分の守ってきた旅館のブランドをゼロから構築したい、そんな旅館オーナー様の熱意に支えられ、世界での「RYOKAN」ブランドを着実に構築してまいりました。

村山
そこにニーズがあったわけですね。

福永
日本では老舗として有名であっても、世界ではブランドが確立されているわけではないですからね。しかし、マーケットに入っていくことができれば、間違いなく評価されるということを私は確信していました。
特に私たちがターゲットとしている富裕層のニーズというのは特殊で、彼らは目に見えないものへの投資を通じ、自分の心を豊かにし、健康であり続け、富を永続したい、という目的を持っています。
だから、買い物とかグルメとか即物的なものでなく、1300年という歴史の中で培われてきた、日本的なおもてなしの心、その背景にあるストーリーに興味を抱き、そこに日本経済発展の秘密などを探ろうとしていたわけです。

村山

なるほど。確かに普通の旅行者の感覚ではないのですね。

福永

そういった観点からすると、日本の旅館というのは、海外の富裕層のニーズにしっかり応えていけると実感しているのです。
まずトップニッチにアプローチして認識を深めてもらい、各旅館ではなく「ザ・リョカン・コレクション」のブランディングを強化し、やがて中間層などにも浸透させ、日本旅館全体が世界的な認知度を獲得し、日本旅館が恒久的に世界に認められ、この素晴らしい我が国の「文化」を維持、継承を行っていけることを大きな事業目的としています。この国の「文化力」を上げ、世界中の人を惹きつけ、憧れの国「日本」として世界に認められるまで、真剣に事業に取り組んでいます。

アートや食など業界の枠を超えた旅行のプロモーションが今後の課題

村山
今後の展望について教えて下さい。

福永
まずは世界に向けて”日本の旅館”を認知してもらうこと。ただ知ってもらうだけではなく、10年、15年という期間をかけて、”文化”として世界に浸透することが最終目標です。

そして、加盟旅館の方々が、それぞれに考える成功、例えば客数を伸ばしたいのか、世界に向けてブランドを構築したいのか、それらを手にできるまで、共に二人三脚で、地道に歩んでいきたいと思っています。
加盟したからといってすぐ集客できるものではありませんが、利用者数の推移からしても確実に認知度が高まっていることは事実です。

村山

福永さんだけではなく、旅館の方々も共に歩んでいくという姿勢が大切だということですね。

福永

そうなんです。我々の役目は、日本旅館に初めて泊まる方、「ファーストタイマー」を創出することですので、その後リピーターやよい口コミを得るには旅館そのものの努力とやる気が必要だと思います。

しかし、日本の旅館文化は、世界においてプレミアムな存在であることは、間違いなく断言できると思っています。世界中の人々を魅了するに充分なものを持っていると。まずは、それを旅館側の方々も認識し自信を持つことが大切だと思っています。そして、客観的に日本の魅力を発信できるように。そのためには海外から日本を見直すことも重要です。

村山
そうでないと、日本がひとりよがりの情報提供になってしまうと?

福永
おっしゃるとおり。少なくともツーリズムに関わっている人間ならば、そういった意識を持ってもらいたいと思います。
外国の方が日本に来るきっかけをつくるということは、そこからあらゆる日本産業の底上げに繋がる可能性が高いということ。要するにホテルやレストラン、交通インフラといった直接的なもの以外に、例えば日本の伝統工芸品や伝統芸能の魅力に触れた富裕層の方から、その尊い文化を継承、発展していける大きなビジネスチャンスが生まれるかもしれない。そういう重要な役目を担っていると自覚するべきなのです。「観光」に携わる人間は世界に「日本」を売り込むトップセールスマンの自覚が絶対に必要です。

村山
確かに。日本にはたくさんの素晴らしいプロダクトがありますから、インバウンドがその魅力を紹介する窓口となる可能性は大いに高いですね。

福永
私が最近手がけているアート業界との協力事業もそう。フランスで高野山を撮影した写真の展示会を実施したのですが、写真が売れるのはもちろん、高野山へ旅行したいという声がそこから生まれました。
アートというアイコンをシェアして、アート販売、旅行、レストランなどいくつかの関連事業がコラボできるわけです。これからは業界の枠を超えた旅行のプロモーションが益々求められることになるでしょう。産業を超えて今までの観光業の常識を超え、「日本ブランド」を世界に売るのです。当社が構築してきたネットワークを使って、新たな需要を生み出すことも必要ではないかと思うのです。

村山

日本の文化を外国人視点にて紹介を続ける福永さんの取り組みに大きな可能性を感じました。これからもその意義ある業務を進め、日本の旅館、ひいては観光業をリードする存在であっていただければと思います。

今日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

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