インタビュー

インバウンド特化型のクラウドファンディング事業部運営責任者に聞く、世界中から資金を集めるためのノウハウ

2019.07.18

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主にインターネットを通じて不特定多数の人々から資金を調達する、クラウドファンディング。国内では様々なジャンルのクラウドファンディング・プラットフォームが存在する中、インバウンドに特化したクラウドファンディングが昨年2月に登場した。今回はその「JAPANKURU FUNDING(ジャパンクル ファンディング)」を運営する株式会社グローバル・デイリーの中村岳人氏にインタビューし、詳しい内容をお伺いした。


インバウンドに特化したクラウドファンディング「JAPANKURU FUNDING」とは?

—はじめに、貴社の事業内容についてお聞かせください。

弊社は広告代理店で、「訪日外国人をハッピーにする」を合言葉に、訪日外国人を誘致するためのプロモーション事業などを行っています。もともとは株式会社デイリー・インフォメーションのインバウンド事業部から始まり、2013年にグループ内で独立したため、インバウンドへの取り組みを専門的に行うようになって13年になります。社員57名のうち半数以上が外国人国籍です。

—貴社の事業のひとつであるJAPANKURU FUNDINGについて詳しく伺いたいのですが、立ち上げるきっかけは何でしたか?

国内には多くのクラウドファンディングが存在するのですが、最近では農業や音楽など、さまざまな分野に特化したプラットフォームが出てきています。しかし、インバウンドに特化したものはありませんでした。来年にはオリンピックを控え、政府が観光立国を目指す中で、弊社が訪日外国人をハッピーにするようなクラウドファンディングを始めれば、社会に貢献できるのではないかと思ったことがきっかけです。また、広告代理店ならではのPR力や発信力、外国人スタッフの語学力を活かせば海外の市場でも競っていけると考えています。

2018年2月に立ち上げた当初は各種メディアに取り上げていただけました。その後も国内外から問い合わせをいただくことが本当に多くて、1年4カ月ほど運営してきて、成功事例も増えてきたのですごく手応えを感じています。

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JAPANKURU FUNDINGの3つの特徴

—今は観光事業が盛り上がっていますので、さまざまなチャレンジをしたいと思っている起業家や地域の団体も多いですし、時代にフィットしているように感じます。JAPANKURU FUNDINGの特徴について、もう少し具体的に教えていただけますか?

特徴は大きく分けて3つあります。まず1つ目は、訪日外国人をハッピーにし、訪日につながるプロジェクトに特化している点。2つ目は日本語、中国語(繁体字)、英語の3言語で作られているので、世界中から資金調達が可能な点です。決済方法はクレジットカードなので、海外で発行されたものでも、日本国内のクレジットカードでも使うことができます。3つ目は、弊社は『JAPANKURU』という外国人向けのメディアを運営しており、海外のメディアとも提携しています。さらに、Facebookページでは50万人以上の外国人ファンを抱え、海外のインフルエンサーとのつながりもあります。JAPANKURUのユーザーは9割が日本好きな外国人なので、このメディアを通じて海外から支援者を募ることができるという点です。

—なるほど。広告代理店ならではのネットワークを活かしているからこそ、付加価値が出せるのですね。3言語で運営しているということですが、社内で翻訳をしているのですか?

プロジェクトを立ち上げるのは日本の法人様のみというルールを設けておりますので、まずは「キュレーター」と呼ばれる弊社の担当者と相談しながら、日本語ページのテキストを作ります。その後、弊社スタッフのイギリス人と台湾人の翻訳担当者がそれぞれの国・地域のニュアンスや事情を加味した上で書き上げていき、クライアントにチェックしていただいた上で公開します。仕組みについてもう少し補足しますと、プロジェクトの公開や審査の段階では一切費用がかかりません。起案者には、募集期間内に目標金額を達成できなかった場合、支援金が全額支援者に返金される「All or Nothing」方式と、目標金額の達成・未達成にかかわらず、集まった金額が支払われる「All-in」方式のどちらかを選んでいただき、成功した場合には、手数料の19%(決済手数料3.5%別途)を引いた金額をお支払いします。

—どちらか一方に選ぶ時のポイントは何ですか?

プロジェクトをやることはすでに決定していて、少しでも協力をお願いする場合は「All-in」ですね。一方、「All or Nothing」は目標金額に1円でも足りなかったら白紙に戻るというやり方なので、資金を調達できるか否かで、プロジェクトをやるかやらないかが決まります。

 

成功事例から学ぶ、目標金額を達成するためのプロセス

—これまでに手がけてきた中で、印象的だったプロジェクトの事例を教えていただけますか?

「ラグビーの本質的価値を追求し世界に発信していくために、心に残る World University Rugby Invitation Tournament 2019 を開催したい!」というプロジェクトですね。今年は日本でラグビーワールドカップが開催されますが、それに合わせて今年9月に大学ラグビーのワールドカップを早稲田大学の競技場で行いたいというプロジェクトです。起案者は早稲田大学ラグビー部のOBの方々なのですが、運営費用を募るために「All or Nothing」で500万円を目標金額としました。応募期間は40日間でしたが、2日間ぐらいで200万円集まるほどの勢いで、最終的には626万円を調達することができました。

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▲ラグビーW杯イングランド大会の際に開催された大学ラグビーのワールドカップ「World University Rugby Invitation Tournament」

—目標金額を大幅に達成した勝因はどこにあったのでしょうか?

大学ラグビーのワールドカップが開催されるのは、今回で2回目になります。1回目は、2015年にイギリスで開催されたラグビーワールドカップに合わせて、オックスフォード大学で開催されました。そのため、オックスフォード大学やコロンビア大学、早稲田大学や日本のラグビーファンの方々か支援が集まって達成に導かれたのだと思います。

—目標金額を達成するために必要な要素とは何ですか?

まずはプロジェクトに共感してくれる人を募っていくことが重要です。ラグビーのプロジェクトを例にとりますと、クラウドファンディングを公開する数ヶ月前からFacebookとホームページを立ち上げておいて、共感してくれる人をどんどん募っていきました。そこに会員登録をしてもらい、根回しをしておくんです。そうすると、全国に点在している共感者がコミュニティの中に集まってきます。そして一番盛り上がったところで、クラウドファンディングを公開する。こうしたステップを踏まないと、起案者の想いは届きません。クラウドファンディングは公開すればお金が集まってくると思われがちなのですが、それは絶対に無理で、プロジェクトに共感してくれる人たちをいかに活性化して最大限まで集め、公開する時まで引っ張ってこられるかに尽きますので、その工程を含めて僕たちはサポートさせていただいています。

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▲クラウドファンディングのために立ち上げたホームページ


成功するプロジェクトに共通する3つのポイント

—公開前から、起案者の本気度や熱意をいかに共感者に伝えていくかが重要なのですね。

そうですね。方式でいえば、「All-in」よりも「All or Nothing」の方が起案者の熱意が伝わることが多いです。「All or Nothing」の場合、お金が集まらなかったらプロジェクト自体が成立しないため、何がなんでも成功させたいという気持ちを応援してくれる人が集まってくるのでしょう。成功するプロジェクトの共通点は3つあり、まず1つ目は公開3日以内で目標額の25%を達成しているということです。第三者は達成率を見て、プロジェクトが成功するかしないかを心理的に判断する傾向にあるそうです。2つ目は、公開3日以降の中間期間に毎日1円でもいいのでお金が継続的に入ってきているかどうか。1人でも多くの支援者が増えているということは、プロジェクトが横に広がっている証拠になります。3つ目は終了3日前に目標額の60%を超えていることです。「All or Nothing」の場合は60%を超えると、「何とか達成させたい」という動きが出てきますので、プロジェクトが拡散され成功することが多いですね。

—JAPANKURU FUNDINGは3言語展開で、コミュニティの支援もされているということで、他のクラウドファンディングに比べてずいぶん手間暇がかかっていると思います。最後に、この事業をどのような想いで続けているのかを聞かせていただけますか?

弊社は広告代理店業をメインの事業とする中で、クラウドファンディング事業に関しては社会貢献に携わっていきたいという想いからスタートしました。

そのため民間企業として利益ももちろん大事ですが、それと同時に良いプロジェクトを全力でサポートさせていただくという気持ちで今後も続けていきたいと思っています。また、外国人から支援を多く受ける事ができるプロジェクトとそうでないプロジェクトがありますので、どんなプロジェクトでも海外から支援を受ける事ができるアイディアをフィードバックできるようになることを目指しています。これからは個人が活躍する時代になってくると思いますので、個人の方のチャレンジを応援できるような体制を整え、起案者と二人三脚でプロジェクトを成功させるように努めていきたいですね。

 

取材協力:株式会社グローバルディリー

 

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