インタビュー

株式会社ヒト・コミュニケーションズ ビジネスプロモーション営業部 花堂哲氏

2017.07.15

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ミステリーショッパーで訪日客対応の課題を浮き彫りにする

ヒト・コミュニケーションズは人材派遣会社として知られるが、急伸するインバウンドビジネスにもいち早く着目し、商業施設における免税カウンターの運営、多言語スタッフの派遣や店舗研修、ツーリスト・インフォメーション・センターの企画などのサービスを提供してきた。そんな同社のインバウンド事業の中でも、独自の切り口で2015年から実施している訪日客の目線に立った覆面調査(ミステリーショッパー)についてお伺いした。

 

ミステリーショッパーを提供するようになったきっかけは?

外国人観光客の売上は2016年4月以降、6カ月連続で前年同月を下回っており、訪日客による消費動向に変化が出ていることは、前から感じていました。訪日客数は依然として好調で購買客数はプラスで推移していますが、売上高が落ちているのは、単価の下落に他なりません。人気がある商品についても、以前は「ハイエンドブランド」がトップの常連でしたが、最近は「食品」、「化粧品」、「婦人服飾雑貨」のほうが上回ることが増えました。そのため、これからは高額商品だけに頼るのではなく、訪日客一人ひとりの目的に合わせたきめ細かな対応がさらに求められるようになり、その対策が必要と考えていました。ちょうど、2015年ごろから訪日客の対応に特化した店頭調査依頼を受けるようになったこともあり、ミステリーショッパーを始めました。

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ミステリーショッパーは、誰がどのように調査しているのか

“ミステリーショッパー”は、一般客に紛れて指定の店舗を訪れ、店員の対応や商品のクオリティー、導線などを顧客目線で評価することです。接客サービス向上のためのマーケティングリサーチの手法として導入する商業施設のディベロッパーや自治体、小売店、飲食店が多いのですが、これまでは日本人を対象とした調査がほとんどで、外国人客を対象としたものは、これまで例がありませんでした。我々は、約600人に上る外国人登録スタッフのネットワークを活かして、ミステリーショッパーを実施しています。

例えば、在日経験が長く日本語が堪能な外国人が、あえて母国語しか使わないことで通常の接客との違いをあぶり出すこともあります。それ以外でも、来日して間もない留学生などを活用しツーリストの目線でとことんチェックするケースもあり、多角的な調査をしています。

また、チェック項目は接客サービスのレベルはもちろん、多言語POPが来店の客層にマッチしているか、決済サービスの種類、商圏の競合店舗との比較、訪日客への直接ヒアリングによる購買単価の調査まで対応することもあります。
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ミステリーショッパーを行うようになって1年半ですが、我々の調査結果からは、目まぐるしく変わるインバウンド市場のいまも浮き彫りになっています。当初は免税対応しているか、企業として指差し会話表などの基本対応が整っているかといった基本的なチェックが多かったのですが、最近は日本人客に対するようにきめ細かな接遇ができているか、単価を上げるためにどのようなクロージングができるか、通訳と販売員の連携はどうかといった接客のスキルをリサーチする企業が増えてきています。

 

ミステリーショッパーを通して見えてきた課題や改善点は

在日経験の長い外国人調査員からは、「普段は在庫がなければ相談にも乗ってくれるのに、外国人ツーリストだと“ありません”で終わり。姿を見ただけで逃げられるケースもあった」など、依然として訪日客に対する心と言葉の壁が大きい状況の報告も赤裸々に寄せられています。たとえ片言でもお客様を満足させたいというマインドさえあれば改善できる余地が大きいとフィードバックをすることが多いです。

例えば、複数の商業施設にテナントを出店するチェーン店を一斉調査したケースでは、テナントごとに評価がバラバラだったことから、店長によってインバウンドに対する意識が異なると判断し、店長研修を実施しました。

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また、テナント全体の評価が低い場合は、会社全体のマネジメントに課題が大きいとみて、インバウンドに対する取り組みを一から見直すよう提案しています。その他にも、競合店に比べ購買単価が低い小売店は、品ぞろえや接客対応に課題があると考え、例えば財布ひとつを販売するにあたっても、チャームをつけることでより華やかになると提案して単価を上げたり、コスメは、土産パックを用意するだけでなく、どんな肌質なのか、普段はどんな化粧品を使っているかなどをヒアリングして複数買いを勧めするよう、提案したりします。また、お客様一人ひとりへのヒアリング、接客スキルを高めるために、販売員と通訳の連携を見直す、といったように、具体的にアドバイスすることで、売り場の接客改善につなげています。

 

取材後記

団体客の減少、個人リピーターの増加などに伴って訪日客の購買行動が変化しているなか、接客応対、売り込み方、店舗運営など、訪日外国人客の対応は、これまでにない工夫が求められているといえそうだ。

 

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