インタビュー

2014.11.02

東京地下鉄株式会社 鉄道本部営業部営業推進室 田浦靖典氏

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訪日外国人にとって東京は日本の玄関口だ。特に個人旅行者が増えている状況では、交通インフラは重要なファクターになる。東京メトロでは、すでに2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野にいれた取り組みが始まっている。日本の人口減少に対して危機意識を持ち、次世代の東京を見据えていた。

目次:
東京メトロがインバウンドに力を入れるきっかけ
企画乗車券について
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組み
「ウェルカムボード」と案内強化の取り組みについて

東京メトロがインバウンドに力を入れるきっかけは?

2013年の訪日外国人旅行者数は史上初の1,000万人を突破し、1,036万人(対前年比24.0%増)となったことはニュースでも大きく取り上げられました。訪日旅行市場は大きく拡大しております。
当社としては、中長期的に人口減少トレンドにある中で定期旅客収入の減少が見込まれるところですが、今後増加が見込まれる外国人旅行者のお客様のニーズを捉えた施策を実施。
外国人旅行者のお客様の「自由な東京散策」の手段として、ご利用いただく機会を創出することを目指しています。

外国人旅行者のお客様に向けた取り組みとしては、これまでも案内サインの多言語表記や駅のナンバリングなどの取り組みを進めておりますが、最近では、便利な企画乗車券の開発に加え、ウェルカムボード(外国人旅行者用情報発信コーナー)やご案内冊子の制作をはじめとしたご案内の強化を進めております。

また、インターネット環境がない場所でも利用可能な無料乗換案内アプリの配信や、東京散策のイメージ映像の展開(https://www.youtube.com/user/TokyoMetroChannel)、台湾や香港、バンコクなどのアジアの都市で開催される旅行博覧会への出展などにも取り組んでいます。 最近では、日頃当社線をご利用の日本人のお客様から「外国人旅行者におススメする東京メトロ沿線のスポット」を募集し、外国人旅行者向けに発信する取り組みなども実施しております。
このような取り組みを進めることで、外国人旅行者が東京を観光する際の地下鉄の利用促進を図ってまいります。

企画乗車券について具体的に教えてください

東京には2つの地下鉄(東京メトロと都営地下鉄)がありますが、この4月から東京メトロ・都営下鉄全線が乗り放題の「Tokyo Subway Ticket」を旅行者向けに新規発売しました。

旅行者の東京滞在期間を考慮し、1日券だけでなく2日券・3日券を用意し、また、大人用で1日券800円、2日券1,200円、3日券1,500円としており、お求めやすい価格としております。

現在、これらは成田空港、羽田空港、各地方の旅行会社で発売中ですが、売れ行きが好調であり、今後発売箇所を拡大してまいります。また、このTokyo Subway Ticketと京急電鉄、京成スカイライナー、リムジンバス、東京シャトル(東京駅と成田空港を結ぶ高速路線バス)といった空港アクセスを組み合わせた乗車券も発売しており、旅行者のお客様に多くご利用いただいております。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けての対策は?

基本スタンスとしては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックがゴールという取り組みではなく、その先も見据えたサービスや安全性の向上を進めていくことが重要であると考えております。
その前提で、「東京メトロ“魅力発信”プロジェクト」が策定されました。
これまで計画していた施策に加え、施策の前倒しや新規施策の追加も合わせて取りまとめたもので、関連する設備投資額(2014~2020年度)は総額約4,000億円を見込んだプロジェクトです。

駅周辺エリアの魅力を発信し、日本はもとより海外からのお客様にも、東京を存分に楽しんでいただくことを目指しています。

例えば、訪日旅行者向け無料Wi-Fiの整備、多言語情報の充実化があげられます。
東京の観光情報やメトロの利用方法を、WEBサイト等を通じて多言語で提供。災害情報や運行状況も、ディスプレイや音声により多言語で発信していきます。外国人のお客様に人気の観光地・宿泊地の最寄りとなる駅改札口付近に「ウェルカムボード」の設置を進めていきます。

また安全面にも配慮して、競技会場の最寄駅等、主要駅へのホームドア先行設置を推進していきます。

「ウェルカムボード」と案内強化の取り組みについて教えてください

外国人旅行者のお客様を東京メトロとしてお出迎えするために、新宿駅、上野駅、浅草駅、池袋駅、東京駅にウェルカムボードという案内パネルを設えた情報コーナーを設けております。

ここではきっぷの購入方法やICカードのご案内のほかに、当駅から主要観光スポットへの行き方のご案内や、一部の箇所ではタブレットを設置し乗換案内を提供するなどして、外国人旅行者の東京観光に先立つ交通情報の取得元となるように設計しています。

ご案内強化の取り組みについてご紹介します。

・Tokyo Metro Guide(外国人旅行者用案内冊子)

外国人旅行者をターゲットに、「まずはこの1冊があれば東京メトロを利用できる」ことをコンセプトにしたご案内冊子を制作し、先述のウェルカムボードと各駅のラックに加え、都内のホテルにて配布をしております。
制作にあたって、現状配布している路線図について調査を行ったところ、詳細な地下鉄路線図が「複雑さ」をイメージさせ、ご利用のハードルになっている部分があることがわかりました。

そこで、外国人旅行者の方によくご利用いただいている丸ノ内線、銀座線を強調して表示し、これに主要な観光スポットをイラストとともに示した外国人旅行者向けの簡易路線図を新たに作成しました。
従来の詳細な路線図とともに、この簡易路線図を併記し、きっぷ購入方法、ICカード利用方法、お得な乗り放題きっぷのご案内などを盛り込み、英語、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語にて配布しております。

・サービスマネージャー・観光案内所

きっぷの買い方や乗換え、駅周辺施設への出口案内など、東京の地下鉄に不慣れな旅行者の方がお困りの際は、ご案内を専門に行うサービスマネージャーがしています。

駅構内を移動しながらお客様をご案内するサービスマネージャーは、上野駅をはじめ、銀座駅、新宿駅、表参道駅、東京駅など計14駅において、iPadや多言語通訳案内サービスを活用して案内業務を行っています。

また、駅構内に案内所を設け、日本人の旅行者だけでなく、外国人旅行者の方の案内にも対応しています。こうした案内所は銀座駅をはじめ、新宿駅、表参道駅、渋谷駅(東京急行電鉄との共同運営)にて展開しています。これらの案内所は、外国人旅行者の対応が可能な案内所として、日本政府観光局(JNTO)の外国人観光案内所の認定を取得しており、日々案内業務の向上に努めています。

訪日外国人旅行者数2,000万人の時代に向け、東京オリンピック・パラリンピックという大きな成長の機会をとらえ、この東京が世界都市・日本各地への玄関口として、オープンでバリアを感じることなく何度でも訪れたくなる街となるために、「東京のご案内役」としての当社の役割を果たしてまいりたいと思います。

取材後記:
交通インフラとしての安全対策をしっかり進めながらも、サービス対応も怠らない。案内所に英語ができるスタッフも配置するだけではなく、駅周辺の観光地や飲食店などのアクセスについても案内。サービスマネージャーは普段からローテーションでいくつもの駅を担当するので、知識が増えて、情報の共有化を図っているそうだ。
またビックカメラやローソンといった他業種の企業とのコラボによる、外国人観光客向けキャンペーンを実施するなど、新しい取り組みにも貪欲だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け進化しようとしている。

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