インタビュー

ロンドン・ジャパンカルチャーイベント “ハイパージャパン”主催 クロスメディア代表在英国東京都観光レップ 丸茂和博

2013.04.27

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英語圏の強みを生かし、日本文化を世界に発信

今やアニメ・マンガ・コスプレを中心にした日本のポップカルチャーが世界中で人気を博し、20万人を集めるフランスのジャパン・エキスポは有名です。一方ここ数年で一気に注目を集めだしたのがロンドンで開催されている『ハイパージャパン』。開催ごとに1万人ずつ集客が増大する勢いで、さらなる規模拡大が期待されます。このイベントの魅力と今後の展開を、主催者であるロンドンの日系メディア会社クロスメディア代表の丸茂和博氏に伺いました。

目次
『ハイパージャパン』の概要
クロスメディアの方向性
今後の展望

 

『ハイパージャパン』の概要を教えてください。

『ハイパージャパン』は2010年10月からスタート。
今年は7月26日~28日開催予定です。

ヨーロッパの収集する情報は総じて「OTAKU」的。日本ではネガティブに捉えられがちなこの言葉も、欧州では自分の趣味趣向をとことん極めるというポジティブな意味で捉えられ、「I am OTAKU!」というように自信と自己主張のキーワードとなっています。

現地にはインターネットから入手可能な膨大な情報はあっても、彼らの求める商品が実際には手に入らず、粗悪な違法コピー品がはびこる。そこで日本のコンテンツは日本人の手で、間違いないものを日本から持ってきてビジネスをする必要性があった。それがスタートのきっかけです。

イギリスは他の欧州大陸諸国とは異なり、日本食が日本文化の中で最も人気があります。『ハイパージャパン』のイベント会場には、日本の食や酒を中心にポップカルチャーやJ-POP、盆栽や武道、甲冑などの伝統工芸品、さらにロボット開発で世界を牽引する企業ブースなど、さまざまな出展があます。

来場者の客層も、他の欧州大陸で開催されている日本文化イベントに比べて非常に幅広いです。イギリスのみならず、欧州全体から集客があり、遠くイスラエルからいらっしゃる方も。ロンドン外の地方および海外から集まる人が4割もおり、OTAKUと呼ばれる若者世代以外にも、子供、家族連れ、お年寄りなどが多く来場し、ファミリーイベント的な要素もあります。
第1回では13000名の有料入場者数だったのが、第4回では46000名にまで増加しました。開催のたびに、約1万人単位で伸びています。

 

『ハイパージャパン』参加へのメリットは何ですか?

イギリス人というのは非常に“ものづくり“へのこだわりを持った職人気質がある。バーバリーがいい例でしょう。そこには世界に誇る日本の技術力の精神に通じるものがある。
同時に、イギリス人は自分たちが英語圏の総本山であると意識している。政治・経済・文化、あらゆる領域をこの英語の浸透力に乗せて世界に発信していく。英連邦というのは、イギリスにとって正に「商圏」です。

『ハイパージャパン』もこれをフル活用しない手はない。英連邦の中心であるロンドンでイベントを開催し、そのイベントで商品やサービスをPRするのは、世界への近道です。企業、伝統文化、先端技術分野、あるいは個人の出展者も含め、ぜひ、この『ハイパージャパン』を踏み台にして、自分たちを宣伝して欲しいと願っています。
当イベントはB to Cです。しかしイベントには各ジャンルのバイヤーが訪れ、現場で消費者の反応を見ながら新しい商品に目をつけるという“B to C to B”の動きが活発化し、日本の企業とイギリスや欧州企業との連携が増えています。

また、イベントの運営には、イギリス人やロンドン在住の日本人のボランティアが100人ほど参加します。ただ与えられるものを受け取る時代から、参加型の時代へのシフトを感じます。その分、プロによる押し付けではない、運営者たちの自発的な情熱も魅力のひとつとなっています。

 

これまでのロンドンでのメディア会社としての活動を教えてください。

私の個人史に関わりますが、30年ほど前、バックパックを背負って世界を旅したことがありました。最終地点がロンドンだった。そのとき、なぜか初めての街なのに「ああ、帰ってきた」と安堵した覚えがあります。縁があるのかなと。
そして3年後、ロンドンで本を作らないかと声をかけられました。当時はまだ日本の旅行社の支店もなく、ランドオペレーターはもっぱら現地の旅行会社がやっていた。日本のツアー団体が増えはじめころです。ガイドブックが必要になり、私が日本人向けのロンドン、イギリス情報を満載した本を作り、ツアー客に配ったのが最初でした。

その後、日本語の出版物なども手がけ、時間が経つにつれ、「自分はいったいなぜロンドンにいるのだろう」、と自問するようになったのです。やがて外国人に日本のことをきちんと伝えるのが自分の義務なのではないか、と考えるようになり、これが私のライフワークになっていきました。
まず日本をテーマにした英語の本を作りはじめました。その第一弾が「食」についての『Eat-Japan』です。今では日本食が健康だという認識が広がって、寿司を初め、世界中でウケています。食は直接体験できるものだから浸透力もある。それから「日本酒」の本も出しました。こうやって少しずつですが、日本のことを知ってもらうきっかけを作っています。

我々のような少人数のスタッフで切り盛りしている云わば出版社が、『ハイパージャパン』のような巨大イベントを手がけるのは冒険でしかありません。しかし、イベントは自分たちの作っている本が立体化したものだ、という認識なんです。
我々は興行に関していえば素人です。だからこそ強みがある。知らないことを専門家ぶるのではなく、一心に消費者の声を聞き、それを反映させて、何を展開するかを考える。無知の知ということです。イベントのオペレーションについては、今では経験を積み、どこよりもプロと自負できるまで成長いたしましたが。

 

今後の展望をお聞かせ下さい。

現在まで『ハイパージャパン』は年2回開催してきましたが、これからは年1回開催にして、エッセンスを凝縮させていきます。またイベントだけでなく、日本商品を集合させた常設店を併設し、さらにネット上に店舗を開き、すべてを連動させていく計画も練っています。ニーズによってはチェーン展開もありうるし、営業代行のような形を取ることも可能でしょう。

今後の課題として、『ハイパージャパン』について日本側での告知がまだまだ手薄だと感じています。イギリスや欧州では、さまざまなメディアを通じて幅広く知られてきましたが、ここまで大きくなると、どうしても民間の力だけでは限界があります。
日本ではクールジャパン・コンテンツの人気をビジネスに結びつけようとする動きも活発化し、日本政府は3月4日、海外展開を後押しする「クールジャパン推進会議」の初会合を開催しています。そこで500億円を出資する基金を創設するため、関連法案を国会に提出する方針が出されました。
出展者の増加、日本側への呼びかけを強化するためには、こうした国の動きとの連携強化、さらにはひとつの業界をまとめて窓口を作り、各業界とのネットワークを広げていくことも大切だろうと考えています。

また、観光事業と結びつけた展開も必要です。地域との結びつきの強い魅力あるコンテンツはたくさんあります。日本にはすばらしい文化と歴史があるんですが、そこにいる本人たちにとっては「あたりまえ」なために、その価値を見いだすことができない。
誤解を恐れずにいえば、現在、時代は西洋的価値から日本的価値へシフトしているように思えます。例えば「かわいい」という概念。日本の価値を再発見して、臆することなく発信して欲しいと説に願っています。

『ハイパージャパン』
http://www.hyperjapan.co.uk/
昨年の映像はこちら▼
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=6XiyXlr_2yo
取材:Jun Kato

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