インタビュー

トリップアドバイザー株式会社 代表取締役 原田(劉)静織氏

2012.10.08

印刷用ページを表示する


日本人による「お国自慢」の口コミを世界44ケ国のユーザーに届けたい

口コミ情報数が1.7億件を超える、世界最大の旅行クチコミサイト「トリップアドバイザー」。毎月約2.8億人ものユーザーがこのサイトを訪れて口コミ情報を読んでいる。このサイトの登場により人々の旅のプランニングはもちろん、宿泊施設にも新たなビジネスチャンスが生まれたのは確か。そんな世界的企業が日本に注目し、インバウンド貢献に乗り出している。代表の原田(劉)静織氏に、その取組みについて聞いた。
トリップアドバイザー:http://www.tripadvisor.jp

プロフィール:中国上海生まれ。上海外国語大学日本語学科卒後1996年に来日。
青山学院大学経営学部卒業後、IT企業を中心にビジネスデベロップメント&マーケティングを経験。大手ソフトウェアのマーケティングをリードしてマーケットシェア1位を獲得し、長期キープしてきた。2013年9月より現職。

 

トリップアドバイザーが注目する日本市場を一手に任される

 

村山

まずは、原田さんが昨年9月、代表に就任されるまでの経緯からお聞かせくださいますか?

原田

私は中国上海に生まれ育ち、向こうの大学を卒表して今から18年前に来日。青山学院大学に留学して経営学を専攻しました。
そのまま日本のIT関連企業に就職。いくつかの会社で10年間に渡って、マーケティングやセールスプランニングなどの業務を経験してきました。

トリップアドバイザーに勤めるひとつ前の会社ではグローバルマーケティングを担当。3年間、世界中を飛び回っていて、それこそトリップアドバイザーのヘビーユーザーでした。

縁あって、昨年CEOからオファーをいただいたときにはびっくりすると同時に大変うれしかったものです。

話を聞くと、トリップアドバイザーのメインとなる業務はIT技術を駆使したプラットホームビジネス。これまでIT業界で培ってきた知識と経験が生かせると思いましたし、CEOのパーソナリティ、企業として守っていきたいミッションやビジョンに魅かれ、入社を決意したのです。

日本市場の潜在的需要に期待を寄せており、エグゼクティブ直属のカントリーマネージャーのポジションとして就任しました。

 

村山

原田さんが魅かれたビジョンとはどういったものだったのでしょう?

原田

CEOのステファン・カウファーが2000年頃旅行のためにインターネットで情報を収集しようとした際、インターネット上での主な情報にはパンフレットのようなお決まりのものしか存在しないと感じたといいます。

そこで、リアリティある生の旅行者の声を集めようと考え、このサービスを立ち上げました。

旅に出る前に不安を解消し、よりよい時間を過ごせるようにとの発想から生まれたサービスですから、常にこのサービスは本当にユーザーのためになっているのか、ユーザーに対するサービス改善に繋がっているのかを意識しながら業務を拡大していくという姿勢に共感しました。

 

 

村山

 
なるほど。ところで、トリップアドバイザーはどのようなビジネスモデルで成立しているのでしょうか?
 
 
 

原田

よく聞かれるご質問ですし、ユーザーからは“最大の謎”と書き込まれたこともあります(笑)。

例えば、トリップアドバイザーのサイトのランキングを参考にして、宿泊したいホテルが決まったら、ユーザーはサイト上で空室検索を行うことができます。サイト上では複数のオンライン・トラベル・エージェンシー(OTA)の価格横断検索ができ、各OTAの最安値の情報が表示されるのですが、その価格をクリックすれば、そこで広告料が発生する、いわゆる“クリック課金”により収入を得ているのです。さらに、宿泊施設の情報が掲載できるリスティング広告スペースも用意しています。
今後はOTAだけではなく、ホテルも横断検索に参加できるよう、働きかけをしていくつもりです。

 

日本人は口コミを書かない,もっと自慢をしてアピールすべき

 

村山

私も御社のサイトをよく利用させていただいているのですが、特にインフォグラフィックスや「外国人に人気の観光スポット」のようなランキングはインバウンドの現状について参考になります。

 

原田

ありがとうございます。
2011年から開始した弊社の「トリップグラフィックス」は、旅にまつわるさまざまな情報をインフォグラフィックスで表現したものです。中には日本人にとっては当たり前のことだけれども外国人がよく理解できていない情報、例えば浴衣の着方であるとか、回転寿司の食べ方とか、そういった内容を英語も表記して外国人にもわかりやすくグラフィックで表現したものもあります。

このトリップグラフィックス「旅館滞在のイロハ」(http://tg.tripadvisor.jp/ryokan-etiquette/)はA4サイズで出力しできるものも準備して、旅館の方々が自由にご活用できるようになっており、大変好評をいただいております。

 

村山

なるほど。これは非常にわかりやすく、とてもいいですね。

 

原田

ランキングに関しては、ユーザーの口コミから集計したグローバル共通の「トラベラーズチョイス」と日本独自のローカルランキングの2種があります。

特に後者は、弊社としてもインバウンドへの貢献をしたいという使命感もあるので、「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」や「外国人に人気の日本のレストラン」など、グローバルに展開するトリップアドバイザーならではの情報を精査して提供したりしています。

「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」から見えてくるのは、いかに私たちのイメージと実際の外国人の動きが違うということ。視点の違いは明らかです。

例えばスノーモンキーや渋谷センター街が支持されたり、日本人が見向きもしないようなレトロなゲームセンターに外国人が殺到したり、最近では個人宅で開催されている日本食クッキングスクールなども人気があります。このような施設がトリップアドバイザーに掲載されることで、世界中の注目を集めているのです。

 

村山

口コミのパワーのすごさを、改めて実感しますね。

 

原田

ところが、欧米諸国に比べてアジア地域、特に日本の人はなぜか口コミを書く人が比較的に少ない。ですから私は、みなさんにことあるごとにお伝えしているのが「もっと国自慢をしましょうよ」ということ。

日本にはたくさん魅力的な場所があるにも関わらず、人の目に触れることができず埋もれてしまっているのです。
例えば、沖縄のビーチなど世界レベルにあるのにランキングがあがらないのは、口コミ数がまだ少ないから。もっと日本人には自分が好きな場所についての口コミを書き込んで欲しいと強く思っています。

そしてインバウンドで注目して欲しい施設さんは、まずトリップアドバイザー上に施設が掲載されているかどうか確認してください。施設情報をいただければサイト上に掲載しますので、その後はきちんと口コミを書くよう、訪れてくださった方々に促していってください。施設のオーナー登録をすればさまざまなツールもご用意していますので、上手に自社施設をプロモートしていただきたい。

ランキングに入れば、その施設は世界44ヵ国、月間2.8億人ものユニークユーザーの目に触れやすくなり、注目を集められます。こういった取り組みはお金がかからないのですから、施設オーナーの皆さまにはトリップアドバイザーを上手に活用していただき、ユーザーさんには自分が好きな施設を応援するつもりで大いにお国自慢を展開していただきたいのです。

最新のインタビュー