インタビュー

2008.02.10

観光カリスマ 山田桂一郎氏

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観光の魅力とは⌈地域性·個性·創造性⌋

「世界のトップレベルの観光ノウハウを各地に広めるカリスマ」 として全国各地を駆け回る観光カリスマ、山田桂一郎氏にインタビューをしてまいりました。観光に対する熱い情熱と、日本が取り組むべき今後の課題等についてお話いただきました。

■山田氏略歴
1965年 三重県津市生まれ
1987年 ツェルマット観光局
日本人対応インフォメーション、セールス、プロモーション担当
1992年 JTIC.SWISS(日本語インフォメーションセンター)設立
1996年 環境省環境カウンセラー(事業者部門)として登録
ヴァレー州観光局日本・アジア向けプロモーション担当
1999年 Mt.6(ベスト オブ ザ クラシック マウンテンリゾート)
環境政策とCS(顧客満足度推進)顧問就任
2003年 環境省環境カウンセラー(市民部門)として登録
2004年 特定非営利活動法人 日本エコツーリズム協会 理事
2004年 まちづくり観光研究所 主席研究員
2005年 内閣府、国土交通省、農林水産省認定 観光カリスマ

以下、インタビューの内容です。

Q1.山田氏の経歴について教えてください。

【豊かさを考える】

観光カリスマ山田桂一郎氏私は小学生の頃から競技でヨットをやっていました。20歳過ぎの頃、同期にオリンピックへ出場した者と日本選手権で優勝した者がいて、私だけがノンタイトルだったこともあり、ヨット競技でプロデビューをしようと思い切って渡豪したのです。それが1986年頃ですから、私がまだ学生だった時の話です。その頃というと日本はまだ「豊かさ=物の豊かさ」という時代でした。私自身がオーストラリアでの生活を通して感じたのは、国民がお金やモノだけに依存しない「本質的な豊かさ」を享受している姿でした。この時に「人としての豊かさ」について改めて考え、そして、その本質を知るためには自分の足でいろいろな地域の国へ行き、そこで暮らす人たちと直接コミュニケーションをとってみなければわからないと思ったのです。無謀なようですが、そこから私のロンドンから日本へのヒッチハイクの旅が始まったのです。

 

【ツェルマットとの出会い】

ヒッチハイクの旅では途中で全財産を盗まれたり、地域紛争に巻き込まれそうになるなどハプニングとトラブルの連続で大変な思いをしました。そんな旅の途中でスイスのツェルマットにたどり着いたのです。初めて訪れたときの印象は、マッターホルンが独立峰として、すごくきれいだということもありましたが、アルプスの山奥にあるとんでもない田舎で、馬車や電気自動車しか走らない町が自治体として経済的に成り立っているということに驚きました。また、地元の人に話を聞くと、行政制度から何から何まで日本とは違い、自分たちの力で町の自然環境や景観保全、自動車乗り入れ禁止まで、自主ルールを作り、守ってきた、その後、そのルールが法制化されたということも知りました。発電所までが自前で、社会福祉、医療、教育のあり方まで、官民としての連携と協働の仕組みなど、その当時の日本では全く考えられないような世界だったのです。

当初、私はツェルマットにはマッターホルンという有名な山があるから多くの人が訪れているのだと考えていましたが、後になって、この山は宣伝・PRには効果はあるが、これだけでは多くのリピーター客を獲得できないこともよくわかりました。例えば、外国人が日本できれいな富士山を一度見たら、もう一度必ず日本に来たいと思うでしょうか?恐らく富士山を一度見ただけではもう一度来ようとはあまり思わないはずです。他にも日本にもう一度来たくなる理由や動機付けがもっと必要です。

ツェルマットではホテルの大規模な改装改築工事や大型化施設の建設ができないので、今以上にベッド数を増やすことはできません。この町は何十年も前からホテル全体のベッド数はほとんど変わっていないのです。稼働率アップに頼ることで売上を伸ばすことができないにも関わらず、年間の売上高は毎年上がっています。これは客の消費単価が年々上がっているということです。そして、お客様のリピート率も年々増加しています。では、なぜこれほどまでにリピート率が高いのでしょうか?

まずは、滞在して頂いたお客様の満足度が極めて高いということ、そして、事前期待を上回る事後評価を頂くだけのサービスの質の高さと進化があります。特に物見遊山の仕組みだけでは、先程の山を見るだけと同じでリピーターを獲得し続けることは困難です。お客様に四季を通じて、このフィールドで素晴らしい体験や経験をして頂き、満足して頂くことを地域全体で考えています。

ここでは馬車や電気自動車しか走ることができないことや、水力と太陽光の発電設備、町の景観など、エコリゾートとしての取り組みが観光に大きく影響していますが、実はもともとこれらの取り組みは観光のためだけに始められたものではありませんでした。地域の人たちが自分たちのライフスタイルや自然環境等を守るために取り組んできたことだったのです。きれいな自然とおいしい水と空気があることが最も大切なことだという、これまでのライフスタイルの普遍的な豊かさを維持することにより、人にとっての本質的な豊かさの本質貴なものが町や人々にもしっかりと根差しています。

ここで重要なのは、あくまでもその土地に住む人々が自ら責任を持って決断、実行しているということです。地域のビジョンやコンセプト等から町の運営までを外からの人間だけで決めてやろうとすると地域振興やまちづくりは必ず失敗します。また、一部の産業の事業者だけの取り組みも失敗します。例えば、観光事業者だけがやろうとするまちづくりは、観光ビジネスしか考えないようなまちづくりになってしまうのからで、地域全体のデザインや産業バランスが悪くなりがちです。ツェルマットのように住民の生活満足度を最優先にする地域をつくり、育てていくと、住んでいる人たちはものすごく元気で生き生きとし、豊かさが生活に溢れます。観光客や外から来た人間からすれば、明らかに素晴らしいところだと実感するわけです。観光だけの仕組みというのは必ず飽きられてしまいますが、ライフスタイルとして提供されるものはいつまでも感動と共感を得ることができますから、何度でも来たくなり飽きられません。

世界中の人達から住んでみたいと思わせる「クオリティ オブライフ」の高さがスイスにはあります。その背景があるからこそ、あらゆるスイス製品はナショナルブランドとして質の良さを認められて世界中で売れるのです。全ての商品がスイスの築いてきた「品質管理」への信用信頼と「生活文化」の豊かさを表しています。スイス国内のあらゆる産業が観光産業と一緒に世界中へPRを行い、ブランディングに成功してきました。観光による他産業への経済波及と相乗効果でスイスは経済的にも成長してきました。貿易収支の約20倍もの経常収支を誇るスイスは、ものづくりだけではなく金融や観光で国の経済を支えているのです。このような国の力を総合化させることでスイスを始めとしたヨーロッパの国々は生き残っているのです。住民がそれぞれの地域を自ら作り上げ、育て、本質的に豊かな生活をおくることが出来、毎回の調査で国民の生活満足度が世界一を誇る「スイス」という国に私は魅了されたのです。

観光カリスマ山田桂一郎氏

 

【ツェルマット観光局長との出会い】

その後、観光関係の仕事をしようといろいろと模索している時に、当時のツェルマットの観光局長とスイスで知り合うことになりました。その時もツェルマットのベッド数に限りがある中で、いかに売上を上げていくかという話になりました。キャパシティに限りがある中で、年々、売上を伸ばすためには客単価を引き上げることが絶対的条件になります。また、お客様の総消費単価を引き上げるためには、観光の場合、お金を使わせる仕組みというよりは、いかに1分でも1秒でも時間を使わせることができるかが重要なポイントとなってきます。滞在日数を延ばすことで、食事や宿泊、買物等で自然とお客様の消費を地域内で増やすことになります。その時間消費の仕組みの中に、お客様の満足度を獲得すること、農業、商業等の他の産業にもどういう経済波及効果があるかを考えること、その仕組みを構築する上で官と民がお互いのやるべきことをしっかりとやりながら、地域全体にとってのベストの経営判断をしなければなりません。その様な、地域が連携と連動、協働をしながら観光リゾート地を築いてきた場所に、私は20年ほど携わってきたのです。

 

【観光統計について】

現在、日本の観光目標数値というのはほとんどが人数だけです。訪日外国人旅行者数も目標が1000万人と人数を軸に考えられていますが、本来、観光で重要な数字は、「宿泊者数」と「リピート率」だと思います。さらに、どれだけの消費をしたのかと、その波及効果、そして、あらゆる観光の満足度の調査をせめて 5段階評価で調べることができれば、今後の観光施策には非常に参考になると思います。

(Part 2へ続く)

 

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