インタビュー

2008.06.10

JNTOシンガポール観光宣伝事務所長 冨岡秀樹氏

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シンガポールは日本ブーム

NTOシンガポール観光宣伝事務所の所長を務める冨岡秀樹氏にインタビューをいたしました。アメリカの大学を卒業後JNTOに入り、様々な経験を積まれた後、シンガポール事務所の設立に携られました。事務所立ち上げの苦労や、現地から見た日本の様子など詳しくお話いただいておりますので、ぜひともご覧ください。

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Q1.シンガポール事務初代所長である冨岡さまの過去の経歴について簡単に教えて頂けますでしょうか?

1989年、アメリカの大学卒業後、当時のJNTO(国際観光振興会)に就職しました。就職のきっかけですが、特に旅行業界に就職したいといった思いがあったわけではなく、なんとなく外国人が日本に来て、文化の違いや食べ物に驚いたり、感動したりしているのを見るのがすごく好きで、海外の人に日本をもっと紹介したい、知ってもらいたいといった気持ちがあったと思います。その気持ちは今も変わりません。

現在のJNTOロゴは日本列島をかたどったカラフルなものに変わっていますが、当時のJNTOのロゴは紺色の富士山のマークで、富士の裾野にJNTOと入っていて、感動したのを覚えています。

入社3年少々で、最初の赴任地となるロサンゼルス事務所に派遣されました。1992年当時はロス暴動の直後で街のあちこちに黒焦げのあとがあり、唖然としたことを覚えています。また、着任1年後にはノースリッジの大地震も経験しました。

1997年、ロサンゼルスから帰国後、4年半にわたりJNTO組織の中にあるJapan Convention Bureauという部署で国際会議の誘致に携わりました。ここでは、著名な大学の教授、医師、研究者といった方々に直接お会いして話が聞けるといった光栄に恵まれ、充実した4年半でした。また、日本で国際会議を開催することがどれほど大変なことか理解できたように思います。

2003年JNTOが特殊法人から独立行政法人に変わる変革の時代を挟んで経理部、管理部といった部署をまわり、大きな組織改変に係って大変苦労しました。これからもっと苦しい時代があるかもしれませんが、過去20年で一番苦しい時代でした。

その後、2005年4月からバンコク事務所で約1年、訪日プロモーションの仕事をしながら、シンガポール事務所の設立準備を行い、2006年5月、当時の北側国土交通大臣の列席のもと、めでたくシンガポール事務所の開設にこぎつけることが出来ました。それから2年、今はシンガポールにどっぷりと浸かっています。

<経歴>
氏 名:冨岡秀樹(とみおかひでき)
出身地:京都市
生年月日:昭和39年(1964年) 4月3日生 年齢44歳
出身大学:平成元年2月 米国ミネソタ州立大学 文学部 英語学科卒業

<職歴>%e5%9b%b38

平成元年4月 (特)国際観光振興会入会
平成4年8月 JNTOロサンゼルス観光宣伝事務所次長
平成9年3月 国際コンベンション誘致センター
海外誘致部 マーケティング課
平成13年11月  経理部 財務課
平成15年10月 (独立行政法人)国際観光振興機構となる
管理部 管理グループ
平成17年4月 JNTOバンコク観光宣伝事務所次長
平成18年3月 JNTOシンガポール観光宣伝事務所長
平成20年6月 現在に至る

 

Q2.シンガポール事務所の立ち上げ時の様子を教えて頂けますでしょうか?

%e5%9b%b392005年の初頭、管理部からバンコクへの赴任命令が下りました。自らずっと欧米派だと思っていたので、いきなりのアジア事務所赴任命令には、少々戸惑いがありました。家内には2日ほど言えずに黙っていましたが、理事長決裁まで済んでいると聞いていたので、覚悟を決めました。また、その背景には 2006年にはシンガポール事務所を立ち上げるという未知なる挑戦もしてみたかったという理由もありました。しかしながら、実際にはバンコク事務所で通常の訪日PRの仕事をしながら、国を隔てたシンガポール事務所立ち上げの準備は結構苦労しました。

何度かバンコクからシンガポールに出張してきて、事務所候補の物件を当たったり、設立のための諸手続きをしたりと、また、2006年の2月半ば JETROビジネスサポートセンター内に借りた仮事務所では、2週間ほどたった一人で心細かったです。雨季はとっくに過ぎているはずなのに、度々夕方になると急に空が暗くなって、雨が降り始めた窓の外を眺めていたのを思い出します。翌月には待望だった助っ人の次長が派遣され、シンガポール人のスタッフも出来、やっと事務所らしくなってきました。

本事務所の内装もぎりぎりまでかかりましたが、4月下旬の引越しまでに何とか終えることが出来ました。いよいよ5月、北側国土交通大臣をシンガポールにお迎えして、プラザシンガプーラというショッピングモール前の広場で開所記念イベントを開催しました。当地の旅行業協会からも祝福され、何とか開所にこぎつけることが出来ました。

 

Q3.シンガポール事務所の具体的な役割をご紹介頂けますでしょうか?

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表向きバンコク事務所担当地域以外のアセアン全般のマーケットを担当するということになっていますが、JNTO現状予算、人員ではなかなか大変です。VJCでは新興市場として調査を始めているマレーシアやインドがありますし、インドネシアもインドとほぼ同数の人たちが訪日しています。これらの有望市場をシンガポールからマーケティングするためにはそれ相応の予算と人員体制が必要です。

いまのところ、当地でのマーケティングに集中して事業推進に当たっています。幸い日本の受け入れ側でも、昨今のシンガポールからのお客さんの伸びに関心を持ってくださるところが増えてきましたので、当地でのセミナーやtomioka6.jpgプロモーションイベントのお手伝いをしたり、VJC事業としてNATAS旅行フェアに出展したり、訪日教育旅行やインセンティブ旅行の誘致を目的とした各種セミナーを実施したりしています。

また、今年はウェブ上でのフォトコンテストやクイズを行う訪日キャンペーンや、市内を走るバスを媒体とした広告も打って当地での訪日旅行需要を喚起しようとしています。最後に忘れてならないのは、訪日ツアーを日々販売してくれている当地のエージェント各社です。常によい関係を作り、少しでも訪日ツアーを販売していただけるよう、できる限りの支援をしています。

 

Q4.シンガポールから日本へのアウトバウンドの現状(旅行者数・トレンド)について教えてください。客層や旅行形態、旅行プラン等もお教えいただけますと幸いです。

とにかく国土が小さいためか、シンガポール人は旅行が大好きです。きちんと有給休暇をとって、旅行に出かける人々がたくさんいます。人口450万人程度(そのうち外国籍が100万人以上と言われる)の都市国家で、陸路での旅行を含めると年間960万人もの人がマレーシアに渡り、550万人以上の人が海外旅行をしています。

シンガポールからの上位訪問国としては、マレーシア、インドネシアに次いで、タイ、中国、香港、オーストラリア、台湾、米国、日本となっています。訪日旅行に限ると、事務所開所前の2005年の来訪者数は9万5千人弱。2006年に初の10万人を突破して115,870人となり、2007年には一気に151,860人を記録。開所前の2005年に比べると61%の伸びとなりました。

シンガポールからの訪日は、統計上7割以上が観光目的で、大きく分けて学校休暇時期の子供連れと、それ以外に別れると思います。毎年ピークを示すのが6月と年末で、特に学年の変わり目となる11月、12月の学校休暇の時期には旅行客が集中して航空座席が足りなくなるほど、多くの人が日本に来てくださっています。これらの時期は丁度日本が閑散期となるよいタイミングで、空き室を埋めてくれる重要なマーケットであることを日本のインバウンド関係者には覚えておいてほしいと思います。

人気の旅行地としては北海道、東京近郊、関西周辺が主な訪問地です。すなわち、観光地として見所のある自然があり、食事も美味しく、ショッピングが楽しめるところというのが絶対条件になります。また、子供連れの場合はディズニーランドやユニバーサルスタジオ等のテーマパークも欠かせない場所となっています。

また、最近では学校休暇にとらわれない富裕層やシニア層の訪日旅行も増えてきていると思います。政府の高官も結構プライベートでも訪日しているようです。

 

Q5.シンガポールの方は日本に対しどんなイメージを持っていて、日本に何を求めにやってくるのでしょうか?(日本の魅力は何でしょうか?)

自然の魅力、食、先進文化、ファッション、ブランドといったものが魅力のようです。ポップカルチャーにも大変興味があり、当地でも日本のアニメや漫画が溢れています。四季の殆どない東南アジアに住む人にとっては、雪や桜、紅葉といった自然の変化は大変貴重なものであり、ツアー広告でも四季の特徴を織り込んだPRがなされています。また、世界各国の人が集まるシンガポールも「食」にはうるさく、その中でも日本食のクオリティの高さ、新鮮な魚介類等、日本の食文化には目がないようです。

シンガポールにはオーチャード通りという世界に名だたるショッピング街がありますが、有名ブランド品でも当地では手に入らないものがあり、日本に行けば買えるといったことが言われています。また、同じ目的の商品一つをとっても、日本では色、形、性能に非常に多くのバリエーションがあって、決めるのに迷ってしまうくらいで、最近では日本はショッピングパラダイスとしても認知されつつあります。

現在は日本がまだ物価高だと信じている人もいるようですが、当地の好調な経済を背景に、当地の外食産業や物価も大変高くなってきており、その反面日本での購買力は上がって、割安感が出ていると思います。当地の物価上昇率は昨年半ばよりうなぎ登りで、直近の4月は対前年比7.5%という数字も出ています。

 

Q6.シンガポールで流行している「日本」は何でしょうか?(日本料理、マンガ、ファッション、侍等)また、Cool Japan」と呼ばれる日本のサブカルチャーはシンガポールではどのように伝わっているのでしょうか?

日本料理はまさにブームと言ってもよいくらい人気があり、日々日本食レストランの件数が増えています。また、お昼の時間や休日には、日本食レストランに並ぶシンガポール人が目立ちます。海外の日本食レストランというと、駐在員や日系人相手の商売というイメージがありますが、当地では8割から9割方、シンガポール人やその他の外国人が利用しています。日本人であるわれわれが遠慮するほどです。

また、クールな日本文化としてアニメやコスプレも入ってきていますし、漫画喫茶(漫画は中国語になっていましたが。)のようなところもあります。実は、観光地の一つとなっているチャイムズというところにメイドカフェもあります。日本に関していえば、日本の伝統文化や古いものに対する興味より、新しいものや日本の若者がクールだと思うものに興味を示しています。

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Q7.現地の方たちは日本の旅行の際にどのように情報収集を行い、どういった情報を求めていますか?

PCやインターネットは日本と同じくらい普及しており、政府主導で街中のWi-Fiの整備も行き届いているので、カフェでもマクドナルドでもみんな PCを広げてカチャカチャやっています。日本の観光情報もインターネットで収集する人が多いのですが、日本語しかないウェブサイトも多々あり、言葉がネックとなっているとよく聞きます。また、当地には「KIASU」文化と呼ばれる「損をしたくない」症候群があり、旅行に行くとなったらとことんまで調べてから訪日するようです。

当地の新聞や雑誌といった紙媒体でも頻繁に日本の旅行関係の記事が掲載されていますし、15年続いているジャパンアワーという番組では、テレビ東京の旅行番組が英語の字幕つきでそのまま放映されていて、日本に興味のあるシンガポール人は必ずと言ってよいほど見ています。それでも、聞くところによると香港や台湾で広まっているほどの日本に関する情報は十分ではなく、当所に電話や直接来訪し情報収集しています。

旅行の販売形態としては、インターネットが発達しているにも係らず、エージェントで情報収集もかねて対面購入を希望する人が多く、実際のツアーの中身を聞いてから購入するため、当地のエージェントに対するファムトリップや情報提供は非常に効果的であり、重要だと思います。

 

Q8.現地の方からの日本に対する質問で一番多いものは何ですか?

レールパス等のお得情報でしょうか?桜の季節には、桜の開花情報が一番の関心事です。(行くからには絶対見逃してはならないという意気込みを感じて、引いてしまいます。)

たまにバーゲンセールの情報や美味しいレストランを紹介してほしいといったことも聞かれますが、1回の旅行で結構多くのところを見たいといった希望があり、交通手段をよく聞かれます。日本人でもかなり強硬なスケジュールだと思われるものもありますが、どうやらシンガポール自体が端から端まで車で走っても1時間以内なので、日本の国土の大きさを把握していないのではないかと思われるときが多々あります。

 

Q9.特に日本のどの地域への旅行者が多い状況でしょうか?また、その理由は何だとお考えですか?

現在日本で人気があるのは、北海道です。雄大な自然景観、雪に対する憧れ、また、一面のお花畑というものに憧れがあるようです。また、北海道の食事、特に海産物やラーメンといったものが非常に美味しいと評判です。シンガポールの街中ではしょっちゅう北海道フェアと銘打って物産展や販売会が開催されていますし、商品のパッケージや暖簾にも「北海道」の文字が多く見られるようになりました。

残念ながら、当地にあった北海道・東北3県事務所が3月を持って閉じてしまいましたが、北海道の根気のよいプロモーションが奏功したものと思います。6月はじめにも北海道が24名のミッションを組んでエージェント向けのセミナーを当地で開催し、情報提供及び直接の商談をしています。洞爺湖サミットももう直ぐですし、当地からも6月に4名の記者を取材に送り出していますので、メディアに取り上げられる機会も当分続くため、今後も北海道人気は暫く続くものと思います。

首都圏、北海道を除くと、京阪神も意外と人気です。やはりショッピング、食べ物が美味しいという評判がよいようです。

日本人が好む歴史のある寺社仏閣等はあまり沢山見せても喜ばれないようです。むしろ、テーマパークや子供たちも一緒に遊べるところがよいと思います。旅館や温泉などにも興味はあるようですが、まだ最後の一歩を踏み出せていない人も多いと思います。これからどんどん背中を押してあげたいと思っています。

 

Q10.2月29日~3月2日に開催された「NATAS Travel 2008」の様子を教えて頂けますでしょうか?日本ブースの状況はいかがでしたでしょうか?

年2回、春と秋にシンガポール国内最大規模の旅行フェアが開催されています。何度か業界誌などでもお伝えしているのでご存知の方もいるかもしれませんが、旅行フェアでは珍しく、会場全体が旅行の即売会と化してしまい、消費者はその場で旅行の予約をし、商品の購入までしてしまいます。

出展しているエージェントの周りには、列を作って自分の順番が来るのを気長に待つシンガポール人の姿が見られます。日本では旅行エージェントに列を作って旅行商品を購入するなど聞いたことがないという人もいると思いますが、当地ではこのフェアに入場料(大人一人3ドル)を支払ってまで旅行商品を買いにきます。

自分なりにNATASで買い物をするメリットを考えてみたのですが、まず、殆どの旅行エージェントが一堂に会するため、比較検討がし易い、また、 NATAS価格として通常より割引をしたり、購入商品にオーブントースターやDVDプレーヤーのおまけをつけたりと、お得感がある。さらには、NATAS のスポンサーとなっているクレジットカード会社がカードで決済した人にスーツケースや旅行カバンをプレゼントしたりと、同じ買うならNATASで買った方がお得という意識が植え付けられているからだと思います。

最近は、NATAS開催前に大手エージェントがショッピングセンターやコンベンションセンターで自社独自の旅行フェアを開催してNATAS前に旅行を販売してしまう動きが出てきたため、NATASは時期を早めて対応しています。その結果、消費者の購入サイクルが少し狂ってきたように感じています。

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Q11.JNTOシンガポール事務所では、日本をどのような観点で現地の方へアピールしているのですか?

このインタビューにも書きましたが、小生は日本を楽しむ外国人の様子を見るのが大好きですので、驚きは行ってからのお楽しみにしたいと考えています。しかしながら、日本に行って見ないことには驚きも発見もないでしょうから、とりあえず、日本に旅行してみてくださいと言っています。 当所の実施したアンケートでは、まだまだ日本に行ったことのない人が多くいて、その中でも日本に行きたいと思っている人はそれ以上に多く、殆どの人が行ってみたいと思っている中で、その阻害要因となっているのが、未だに残る日本の物価高信仰と言語障壁の存在です。 実際に日本に行ったことのある人は、日本の物価が他国やシンガポールと比べても飛びぬけて高くはないことも分かっていますし、日本で言葉が出来ず困ったという経験も少ないと知っていますが、やはり未体験者にそれを理解してもらうのは至難の技です。ですから、当地ではこれらの阻害要因をなくすため、日本の物価や言語障壁について正しい知識を持ってもらいたいという思いをこめて、独自にチラシなどを作ってPRをしています。

 

Q12.シンガポールは人口以上に外国人旅行者が多いというデータがありますが、シンガポールのインバウンド政策から日本が学ぶべき点はございますでしょうか?

シンガポールのインバウンド政策はすばらしいと常々思っています。確実に成果をあげていますし、それなりの予算を使っています。また、その予算となる収入もしっかり把握して、観光資源開発に投資することも忘れません。

2008年9月には世界初となるF1自動車の夜間レースが市内の一般道を利用して開催されますし、2009年にはインテグレーテッドリゾートといってカジノ、ホテル、コンベンションセンターを融合した施設の建設が進められていますし、古くからあるセントーサ島の再開発にもユニバーサルスタジオを誘致してくるなどアイデアで勝負しています。

また、街中にあるショッピングモールでは頻繁に催し物やフェアが開催されていて、来訪者を飽きさせない工夫を怠りません。他民族が集まる国家ですのでたとえばインド系の人にはベジタリアン料理を出す店がたくさんありますし、ムスリム系の人にはハラール料理が出せるレストランも多々あり、これらを必要とする人に対して、シンガポールでは、シンガポール政府観光局(以下STB)を通じて情報が提供されています。

また、昨今STBが力を入れているMICE政策ですが、国際会議を誘致してくれば開催まできちんと政府が面倒を見て、国の玄関であるイミグレーションや会議の開催会場周辺を中心に、国中お化粧して参加者をお迎えしています。たとえば、IMF国際通貨基金の会議で参加者が2万人を超える大型国際会議が当地で開催されました。このときにはリー・シェンロン首相は自ら国民に呼びかけ、「400万人の笑顔でお迎えしましょう」というキャンペーンを行いました。国民が笑顔の写真をウェブに投稿して、それをモチーフに壁紙やPR広告、会議資料といったもの使われました。国の玄関である空港のイミグレーションでは、吹き抜けの壁一面に国民の笑顔が敷き詰められているのを目にして感動したのを思い出します。また、会議場周辺は警備が非常に厳しく物々しいのですが、空港から会場に続く1本道の高速道路の中央分離帯、会場周辺には「ガーデンシティ」の名にふさわしく、通常見ないような様々な花が植えられ、きれいな街だなという印象を参加者に植え付けたことでしょう。

また、上記のようなアイデアや手配のうまさ、アピールのうまさを感じるとともに、観光資源が少ないシンガポールならではの来訪客の集客には、アイデア勝負だという気迫が感じられます。日本のVIPがSTBを訪問したいとお願いすると、直ぐに30分程度の時間がほしいと言われ、彼らのプレゼンテーションを聞かされる羽目になります。1度だけ聞いているとたいしたことのないように感じるのですが、ある時、数ヶ月しか空けずに2度プレゼンを聞くことになったことがありました。2回目の時は、「あ、また同じことを言っているな」と聞き流していたのですが、プレゼンが進むなかで、前回聞いていなかったプロジェクトやアイデアがポンポンと飛び出してきたのには、正直驚きました。数ヶ月の間でこれほどのアイデアやプロジェクトを排出できるスピードの速さに驚かされます。これは、まさに都市国家であるメリットで、観光プロジェクトを担うSTBが政府と密接に連携し、人も予算も業界も一元的に管理が出来ているからではないかと思います。

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Q13.シンガポール事務所で現状抱えている課題・対策について教えてください。

この広い担当地域に比べ当所の人員体制、とあまり十分ではない予算でしょうか。特にマーケットが広がることはよいことではあるのですが、そのマーケットからのJNTOに対する期待値が高ければ高いほど、当所としてはその要望に応えるためのハードルが高くなるというジレンマがあります。また、多様化する日本国内の貴重な情報をいかに早く、正確にマーケットに伝えるかと言うことが今後重要になってきますが、その基盤がまだ完成していないように思います。日本国内の観光情報は溢れていますが、それをきちんと多言語化して、情報発信するという簡単そうでなかなか出来ていません。最近はJNTOのウェブサイトもポルトガル語やロシア語も加わって充実してきていますが、すべての情報をタイムリーに多言語化できるようなシステムにはもう少し時間がかかると思います。

 

Q14.シンガポールの方をもっと集客したいと考えている日本の自治体や企業に対してメッセージを頂けないでしょうか?

シンガポールの訪日市場は、今が旬です。人数だけをとってみても昨年は15万人を超え対前年比32%増、一昨年は11万人強でしたが対前年比23%増、当所の開所前から比べると61%の増加を記録しています。

また、最近は日本へのファムトリップなどもVJC事業で実施していますが、当地のエージェントは視察地が気に入って、売れると思うとすぐにツアーに組み込んでくれます。また、人気が出なければすぐに変えてしまえばよいといった気持ちもあるのか、大変早い時期に結果が現れてきます。すなわち成果が問いやすい市場といえると思います。

また、特徴として国が狭いからか、情報伝達が思いのほか早いのも特徴です。広告媒体の値段は安くはありませんが、確実に消費者に届くというメリットがあると思います。過去、何度か当地で広告を出していますが、一番よく読まれている日刊英字紙のThe StraitsTimesの広告などは、目にしたかどうかを問うアンケートを取るとダントツです。今後、JNTOではさまざまな事業で共同広告の掲載や、メディアの受け入れを募集いたしますので、ご協力いただきたいと思います。

そもそも人口がそれほど多い国ではありませんが、近い将来20万人を超えることは可能だと思います。また、このアセアンの中心(シンガポールは何でもハブだということを言いますが)を中心にマレーシアやインドネシア、インドへの波及効果も大きく見込めることでしょう。ぜひともこの新たな市場に目を向けて、JNTOとともにインバウンド事業を盛り上げていただきたいと思います。

 

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Q15.また、シンガポール人を受け入れるホテル・旅館や通訳案内士の方へもメッセージをお願い致します。

「シンガポール人」といってイメージできる日本人はどれほどいらっしゃるでしょうか?シンガポール人ってどんな人たち?というのは小生にとっても永遠のテーマかもしれません。正直言って赴任前には全く予備知識はありませんでした。ですので、かれこれたった2年程度のお付き合いの中での話しと断った上でお話します。

シンガポール人の多くは中華系ということは、なんとなく知っていると思います。最初はエレベーターに乗っても奥に詰めないで、つっけんどんな印象がありましたが、日々お付き合いしていると、結構遠慮深げなところもあったり、日本人に似たところもあるように感じます。 但し、福建語で「KIASU」という言葉があって、「損をすることを恐れる」気質があるのか、だめもとでの要求は日本人以上です。それ以外は、それなりに恥ずかしがりやですし、結構見栄っ張りなところもあります。日本をまだよく知らないシンガポール人は、小生が大好きな「驚き」や「感動」を帰国後に得意になって話してくれます。

日本を知らないが故にご迷惑を掛ける人もいるかもしれませんが、根は正直者で悪気はないので許してあげてほしいと思います。

通訳案内士の方には、ご苦労をおかけするかもしれませんが、マンダリンもしくは英語でお願いします。英語に関しては日本で勉強する米語、ブリティッシュイングリッシュとは違い、かの有名なシングリッシュは健在です。「ネバマインラー(never mind, lah)や、「キャンキャン (can, can)」など賑やかな英語を話します。最近シングリッシュの本を買って多少勉強していますが、少々慣れが必要です。間違っても議論を吹っかけないほうがよろしいかと思います。彼らはれっきとしたイングリッシュスピーカーです。英語で渡り合う力は日本人よりはるかに上手です。

 

Q16.最後に今後の抱負についてお聞かせください。

ますます、当地や周辺国で日本が旅行先として知られてくることになると大変です。最近2010年を待たずして2020年に2,000万人?といったことも言われているようですが、今、必要と思うのは2010年1,000万人達成のためのプロジェクトを考えることでしょうか。これらは、日本国内で何ができるのかよく考えてSTBのようにバンバン新プロジェクトを立ち上げて、海外に情報発信してもらいたいと思います。それを伝えていくのが当所の役割でもあると思います。

「やまとごころ」はまさに旅行や観光を通じて世界に伝えたい私たちの「こころ」だと思います。貴重な機会を与えてくださりありがとうございました。多少なりとも今のシンガポールの状況がご理解いただければ幸いです。この市場がある程度成熟してきたら、マレーシアやインドネシアといった他の東南アジア諸国のレポートも出来ればと考えています。どうもありがとうございました。

取材へのご協力、誠にありがとうございました。

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