インタビュー

2008.10.10

実践!インバウンド 代表 小野秀一郎氏

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うまくやろうとするよりも、全力かつ早急に取り組めば成功に近づく

業界内でも幅広く知られ、ホテル・旅館向けのインバウンドコンサルタントとして大変ご活躍されている実践!インバウンドの小野秀一郎氏にインタビューをさせていただきました。

【日時】2009年7月7日(火)14:00~15:30
【場所】ポータル・ジャパン株式会社

 

<小野秀一郎氏 略歴>
1974年 大阪府生まれ。兵庫県育ち。

1996年 慶應義塾大学経済学部卒業
富士銀行(現・みずほ銀行)へ入社し、融資・渉外業務を担当。

1998年 退職後、オーストラリアにてITサービス会社でのインターンを経て、
米国フェニックステクノロジーズ(株)の日本支社に入社。
情報システム管理に携わる。

2000年 米国オハイオ州のケースウェスタンリザーブ大学院へ留学。

2001年 英国マンチェスタービジネススクールへ交換留学。
一旦帰国し、グロービス(株)にてインターンとして組織運営・人事管理の教材開発を担当。
国内旅行業務取扱主任者の資格を取得(現・管理者)

2002年 米国にて経営学修士課程(MBA)を修了。
帰国後、ネット予約サイト、「クラブトクー!」運営のクーコム(株)に入社。
社長補佐に就任。組織開発、人事採用、会員サポート責任者を担当。 

2003年 インバウンド事業部執行役員に就任し、英語版サイトを立ち上げる。
マーケティング、手配、会員サポート、海外サイトとの提携業務に従事。

2004年 クーコムを退職後、独立・起業し実践!インバウンドを立ち上げる。

執筆・プロジェクトなど
・Yahoo!知恵袋 ビジネス分野の専門家回答者 2009年3月~
・長野県公認 英語版観光ブロガー 2009年2月~
・観光経済新聞 Q&Aコーナー「ネット時代のインバウンド」 2008年9月~09年1月
・JTBインバウンドサイト、JAPANiCAN.com ウェブアドバイザー 2006年~2007年
・国際観光旅館連盟 会報「RYOKAN」 2005年7月~06年5月
・週刊ホテルレストラン 編集委員 2005年5月

 

以下、インタビューの内容です。

Q1. 御社の事業について教えてください。

 

地方にある中小規模のホテル・旅館といったところに対し、インターネットを活用した外国人集客のサービスを提供させていただいています。2004年の12月よりスタートしたので、すでに4年半以上経ちます。それまでも日本の予約サイト会社のインバウンド事業部で宿泊やレンタカーの販売をやっていたので経験を生かし、それを自分なりに旅館にとっての集客サービスを提案したいと思い、独立・起業しました。

現在、大きく以下の4つのことを行っています。

 

海外予約サイトとの提携
海外の宿泊予約サイトへの登録代行をしたり、販売のヘルプサポートを行っています。現在は4つの海外向け有力予約サイトと提携をさせていただいています。

英文ホームページの制作
「わかりやすい、簡単、スピーディー」という原則をもとに英文ホームページの制作を行っています。予約に至るには「いかにアクセスが多いか」、「ターゲットにマッチしているか」この2つがポイントであり、必要な情報さえ揃っていれば、あまり深く作りこんだFlashや動画などは必要ないと考えています。また、シンプルな作りであれば初期投資も低く抑えることができます。

アクセスアップ支援
SEO対策やディレクトリ登録、SEM等で自社サイトへのアクセスを増やすための方法を実行します。ホームページ作成に時間をかけるよりは、上述①の海外予約サイトへの登録と、このアクセスアップの部分に多くの意識と費用をかけてもらうようにお客様にはお伝えしています

セミナー、研修、講演などの情報発信
講演会などを通して、インバウンドの重要性を多くの方に伝える啓蒙活動も行っています。また地方温泉地の旅館組合、観光協会向けにはインバウンドの現状・面として取り組む場合の注意点、他地区でのインバウンド成功事例などもご紹介しています。

 

Q2. ホテル・旅館の経営者の方の、インバウンドに対する意識や理解はいかがでしょうか?

基本的に私のところにご依頼をいただく方は、皆インバウンドに対する意識が高い方が多いです。逆に売り上げ至上主義の一辺倒で、本格的にインバウンドに取り組みたいと思っていない宿泊施設はお手伝いをお断りさせていただくこともあります。 また、インバウンドに取り組みたいと思っている旅館経営者は多いのですが、日本人特有の「完ぺき主義」が邪魔をし、一歩前に進めない方が多いように感じています。例えば、英語で話しかけられたら、きちんとした英語で対応する必要があると考えている人が多いようです。しかし実際には外国人の受け入れを行っている旅館様の半数以上を見ると、例えばジェスチャーをまじえて簡単な英単語を並べて話すだけというような対応を行っていますが、全く問題ありません。 「日本人と同様に全てきちんと対応できなければ良い評価が得られないに決まっている」という概念が強すぎて、及び腰になってしまっていますが決してそうではありません。深く考え過ぎずに、まずはトライアルで始めてみればよいと思います。

 

Q3. 昨年からの訪日外国人旅行者数の減少による影響はございますか?

ネットで宿泊予約をする外国人市場も価格帯・施設タイプ別にいくつかに分かれます。この厳しい不況でも低価格帯にあり且つ外客のニーズに応えている施設は予約の落ち込みは軽微です。また館内でネットが利用できる素泊まり旅館や、海外の友人と情報交換のできる雰囲気を上手に作り出しているドミトリー系(相部屋を持つ)ゲストハウスを多く持つ海外予約サイトは、前年同月比135%と予約件数が伸び続けています。厳しいのは ブランド力だけに頼ってきたシティホテルや差別化の出来ていないビジネスホテルではないでしょうか?弊社クライアント宿泊施設への需要は、トータルとしてはやはりある程度落ち込みましたが、またここ最近回復してきたように思います。特に7,8月は夏休みの時期で年間の中でも訪日外国人旅行者がとても多い時期にあたりますので、ここでまた数を取り戻してくると思います。

昨年冬に急激な円高・景気悪化が起きた後に訪日旅行者数が落ち込んでからは対策として各旅館様に料金の調整をするようにお伝えしました。旅行者の財布の紐も固くなりますので、少し値段を下げることで利用しやすくするとともに、「客数を減らさない」ことに注力をするようアドバイスをしております。この時期に来てくれたお客様に対して、より丁寧な対応をすることは非常に重要であると思います。というのは、料金が高い時期にも関わらず日本に来てくれるということは、日本がよっぽど好きな人や、どうしても日本に来たいと思っていた人であり、日本に非常に好感を抱いています。こういった人たちによい印象を残すことで、口コミが広がり、後にたくさんのお客様を連れてきてくれることにつながります。また、料金が高い時期に来ているということは、支払った金額に対する評価もシビアです。そのため、こういうときこそより丁寧な接客を心がけ、お客様が満足して帰ってもらえるようなサービスを提供するべきだと思います。 外国人客数が減ったからといって悲観するのではなく、今来てくださっているお客様を大事にすることで、景気が回復したときにまた多くのお客様が来るようになると信じています。

 

Q4. まだ外国人集客に取り組んでいないホテル・旅館様の抱えている問題と弊社のそれらへの対策は何でしょうか?

まだ外国人集客に取り組めていないホテル・旅館様には、大きく以下の3つの壁があると思います。実は弊社ではそれらの壁を取り除くべく支援をしているといえるかもしれません。

外国語
これは意識の壁で、自ら作ってしまっているものですね。外国語で話しかけられた場合、どう対応すればよいかを不安に思っている方が多くいらっしゃいます。しかし実際、片言の英語で対応しているような旅館様も多くいらっしゃいます。スキルがなくてもその程度の対応なら誰でも可能なわけです。現に弊社クライアント60%は片言の英語、または日本語のみで外国人に対応して頂いています。また簡単に外国人対応を円滑にする道具・ノウハウも提供させて頂いております。地方の旅館に期待しているのは、ペラペラの語学力ではなく日本的なおもてなしなのですから、都市部のシティホテルと同じことをしようとするのがそもそもの間違いなのです。

ITスキル
これは使い慣れているかどうかの問題で、取引先の旅館経営者の全てがパソコンを使いこなせるわけではありませんので、現在でもFAXを使って予約を受け付けている旅館様もあります。パソコンを触ったことがある人であれば、インターネット予約の管理等は難しいものではありません、と旅館・民宿の経営者にお伝えしています。

海外のモノやコトに対する経験不足
ネットを活用し個人で自由に海外旅行をする外国人が急増する一方で、いまだに外国人旅行者に対する偏見や理解不足がある場合があります。「外国人は背が高いのでウチの和室にはムリ」「インバウンドは素泊まりだけで、価格が安いはずだ」「インバウンドは東アジアだけだろう」「風呂の使い方が分からないはずだ」「クレジットカードだけしか持っていないだろう」などと、自社で取組みを真剣にやってもいないのに、周囲に吹き込まれた通りの概念のみ持ってしまっているケースがほとんどです。弊社ではインバウンドに少しでも興味があれば、上記のような誤った概念や知識を取り除くべく、全国220軒以上の旅館・ホテルの取組み事例を参考にお話をさせていただいております。

インバウンドへの取り組みを始めるのであれば、最初から構えて完璧にやろうとするのではなく全力でやってもらえればと思います。お客様の対応も言葉ではなく表情や体を使った表現で十分伝わります。なぜかというと、お客さんである外国人の方も理解しようとするからです。また、ユニークな経験は、ユニークな結果を生みます。つまり、みんなと同じことをするのではなく、新しいことに挑戦することで、新しい気づきとともに今までになかった結果がついてくると思います。インバウンドに本気で取り組みたいと思うホテル・旅館様を今後も引き続き応援したいと思います。

 

Q5. 小野氏の考えるインバウンドのあるべき姿とは何でしょうか?

顧客満足度をもっと上げていくべきだと思います。欠けているところの穴埋めばかりを考えていて、お客様の本当の満足についてまだ深く突き詰められていないと思います。

観光地化させるのが私の目的ではなく、いかにその土地の魅力を引き出すか、それが外国人にとっても新鮮なものに見えるでしょう。例えば、ニセコが一つの例ですが、オーストラリア人に人気のスポットとして有名になりましたが、個人的な印象としてはハード面でのリゾート加工作業が行き過ぎて、日本なのにどこを見ても英語表記、店員も日本人ではなく外国人スタッフがメインの飲食施設もある、といったように、日本本来の姿がかき消されてしまいます。長野県・志賀高原の弊社取引先でいくつかのホテルからは、「せっかく日本に来たのにオージーが多すぎて、ニセコを避けた」というオーストラリア人客もいたという話を度々耳にしています。(笑)結局旅行者が離れていってしまっては意味がないのです。

外国語対応はもちろん必要だと思いますが、全てが完璧に整った環境になってしまうと、逆にそれは日本としての魅力を損ねてしまうものになりかねません。私はこれを観光地の「ハワイ化現象」と呼んでいます。どこに行っても日本人ばかりだと、普通に気持ちが引いてしまいますよね。(笑)それと同じことなんです。また地元経済・住民が活性化しなくてはならない。もっと日本らしさを活用し、その魅力を発信するべきだと思います。

また、今後インターネットを利用した海外市場への直接的な情報発信はやはり必要だと考えます。旅行者が旅行の予約に至るまでのアクションは、①「旅行情報の収集」②「計画を立てる」③「予約をする」という3段階に分けられると思います。③の「予約をする」アクションはまだ旅行代理店などに赴き予約する層も存在し続けますがネットで予約をも完結させる割合が今後も増加するでしょう。①②においては大半の方がインターネットを利用すると思います。そう考えるとやはりインターネットを使ってもっと多くの情報を発信していくべきだと思います。

 

Q6. これまでの実績の中で成功事例がございましたらお教えください。

事例①
クライアント: 志賀高原 ホテル白樺荘
内容:インバウンドの取り組みは3年ほど前まで全く行っていませんでしたが、ネット活用の導入をご提案し、英語サイト制作、SEO、SEM、予約サービスをまとめたパッケージサービスをお申し込みいただき、英語圏の旅行者市場への販売促進を進めました。信州・志賀高原のスキー場のふもとにあり、外国人にとってはアクセスが非常に不便な立地なのですが、現在では年間500人程度の外国人がこのホテルに宿泊しています。平日に集客できて、しかも値下げ無しなので単価の維持に役立っているとのコメントをいただいております。畳の部屋・温泉・浴衣など宿泊中はほとんど日本の様式を体験できることと、世界的にも珍しい野生の猿の温泉地(地獄谷野猿公苑)に近いことを英語サイトで情報発信をしています。約半分はアジア系ですが、英語で予約を入れてきます。オーストラリアだけでなく、ノルウェー・フィンランド・ロシアからも予約が入ります。またメールのやり取りだけで、手間とコストのかかるカードギャランティをしないでもほぼ全ての方が予定通り宿泊していただいているそうです。

事例②
クライアント:飛騨高山 桑谷屋  

内容:以前から外国語のホームページを持っており、プロモーションのお手伝いをさせていただいています。以前はあまりアクセスがなかったのですが、少しずつ予約が増えるようになりました。高山市内でも不況の影響に次いで、今年の5,6月は豚インフルエンザでお客様が減っているところが多いのですが、桑谷屋さんではむしろ予約問合せが増えているとのことです。理由としては訪日外国人が減った時でも、むやみに広告コストをカットせず、継続的に販売促進を行ったため、逆にネット市場で知名度が高まったからではないかと思います。

事例③
クライアント:箱根湯本 かっぱ天国旅館 
内容:箱根湯本の駅前でロケーションが非常に良かったので、弊社が正規代理店として受託しているヨーロッパの宿泊予約サイト「ホステルワールド」(ホステルワールドへの申請方法についてはこちら) に加盟申請の代行手続きを行い、 、ロケーションの良さのアピールと写真の掲載の仕方の工夫や予約のヘルプサポートを行いました。その結果、安定的に毎月20組前後の予約が入るようになりました。また、この旅館は50~60代のスタッフしかおらず、英語対応は全くできません。そのため、予約ページにも「館内での対応は日本語のみ」と記載しています。事前に記載しておいた方が宿側も構える必要がなく、またそれを見て来るお客様も理解した上で来られるので、言葉のトラブルもあまりほとんどありません。

 

Q7. まだインバウンドに取り組んでいないホテル・旅館様へ一言お願いいたします。

インバウンドは非常にニーズがあり、これからも海外からネットで予約をする外国人の旅行者数は増えていくと思います。まずは難しいことを考えずに、できる範囲で全力でやっていきましょう。また、訪日外国人は日本の伝統的な旅館が好きだから、ホテルにはあまり泊まりたがらないのではと思っているホテル様もいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。もちろん旅館に泊まりたいと思う外国人は多いですが、リピータの方や日本への個人旅行が初めての方は、ホテルの需要の方がむしろ大きいかもしれません。そのため、ホテル様にも十分ニーズはあります。 もし少しでもやってみたいと思ったら、まずはご相談ください。インバウンドにはチャンスがたくさんあると思います。あと、多言語ホームページを制作しましょう、という業者さんが多くなったとクライアント旅館さんから聞いております。例えば自社サイトを4つの言語に増やしたらそのまま お客さんが4倍に増えることはまず無いので、業者さんの営業トークに注意していただきたいですね。(笑)

 

Q8. 今後の抱負をお聞かせください。

まずは取引をさせていただいている施設様に、より質の高いサービスを提供していきたいと思います。弊社のポリシーは「早くて、安くて、満足度の高いサービス」を提供することで、さらに磨きをかけていきたいと思います。また、観光地を活性化するお手伝いもしたいと考えています。もっと満足度を上げられるところがたくさんあると思っていますし、そういったサポートも今後力を入れてやっていきたいと思っています。住んでよし、訪れてよし、とはよく言ったもので、実践!インバウンドとしては、外国人を地方・温泉地へネット経由で連れていくことで、地元住民の誇りを喚起できるようになりたいです。

また、これは個人としていずれ時間があればやりたいと思うのですが、日本の原風景を体験できるような場所を作りたいと思っています。例えば、古民家を再生し、その中で滞在者が電気も携帯電話も使わずに(笑)、日本の生活を体験できるようにしたり、農村と里山に自然と人が集まれるような環境があると、非常に面白いと思います。日本の古きよき風景が残る場を作りたいと思います。

実践!インバウンド 

ネットで外国人旅行者を集客【インバウンドにっぽん】 

インタビューのご協力、誠にありがとうございました。

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