インタビュー

2009.02.10

株式会社チャイナ・コンシェルジュ 代表取締役社長CEO 大西正也氏

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この国の魅力を海外に広めることそれが日本人として意義ある仕事

プロフィール

1963年9月7日兵庫県生まれ。大阪市立大学・経済学部卒業。株式会社リクルートを経て、渡中。出版物規制の厳しい中国政府から異例の許可を取得し、1995年大連で創業、在中日本人向けフリーマガジンを創刊。2004年株式会社チャイナ・コンシェルジュ設立、同代表取締役社長就任。
2005年中国人向け、2007年香港人向けに日本観光情報誌(フリーマガジン)を創刊。
現在、中国4都市(大連・北京・上海・香港)に拠点を置き、東京本社を起点に日本広報事業を展開。

株式会社チャイナ・コンシェルジュは、社名の通り、中国ビジネスに特化した会社。現在の売り上げの50%が大連、北京、上海での日本人向けフリーマガジンの制作。次いで、4年前にスタートした中国人向けフリーマガジンの売り上げが30%と続き、さらに日本からの中国本土向けECサイトのサポート事業が15%となっています。最近では観光庁関連の仕事も増えているとのこと。

北京、上海での日本人向けフリーマガジンの制作を始め、中国本土向けECサイトのサポート事業や観光庁関連の仕事など、中国ビジネスに特化した会社、株式会社チャイナ・コンシェルジュのCEO・大西正也氏にお話しをうかがいました。

目次
出版規制の厳しい中国でチャンスを生かし活路を見出す
ツアーを作り、媒体に掲載しそしてレポートでフィードバックする
現地の声に耳を傾け効果的な販売促進手段を講じる

出版規制の厳しい中国でチャンスを生かし活路を見出す

村山
本日はよろしくお願いします。
株式会社チャイナ・コンシェルジュのCEOでいらっしゃいます大西正也さんが、まずは、起業されたきっかけを教えていただけませんでしょうか

大西
大学を卒業して、最初に就職した先がリクートでした。しっかりと勉強させてくれそうな会社ということで選択しました。やはり求人広告の営業を行っていると、あらゆるタイプの経営者と触れ合うことができますし、そこから多くの刺激を得たのは確かです。
ただ当時のリクルートは、業務の性質上、どうしてもドメスティックな雰囲気だったため、私としてはもっと世界へと目を向けて行きたい、という意識があり起業を考えました。

村山
なるほど。世界へ目を向けるという意識を持たれていたのは、学生時代からだったのですか?

大西
私の父の影響です。父は長年、商社に勤めていまして、よく家に外国の方々を招いていました。そんな環境に育ったせいか、「日本人はなぜもっと外国人とビジネスを推進しないのだろうか」という疑問をずっと抱いてきたのです。
そんな父が52歳で独立。貿易会社を設立したので、私も手伝うことにしたのです。はじめは台湾で化粧品の販売などを手がけていました。

村山
なるほど。念願の海外ビジネスを手がけられたわけですね。中国本土へ目を向けられたのはいつのことだったのですか。

大西
台湾で仕事をしていて、現地の経営者と交流を持つようになり話を聞いていると、彼らの目はすでに中国本土に向いていました。「人口わずか2,000万人の台湾になぜ留まるのか。台湾人はみんな中国を目指してビジネスをしている」と。
日本からは、当時まだ中国本土へアプローチする動きがなく、日本人の競合がない時期だからこそ、ビジネスチャンスだと考えました。

村山
市場としては未成熟だったということですか?

大西
現地で貿易会社を設立する手続きが煩雑で、なおかつ要求される資本金の額が多きい。さらに、信頼の置ける中国人のビジネスパートナーを見つけることも難しい状況でした。
そこで目をつけたのがフリーマガジンだったのです。実際、私もそうでしたが、日本人が中国へ行くと食事をする店すら探すのも難しい状況。ハワイやニューヨークには日本人向けのガイドが山ほど存在するのに、中国はなぜないのか……。そう思い立った瞬間から、もう動きはじめていましたよ(笑)。

村山
大変、行動的ですよね。しかし、当時の中国といえば出版規制もかなり厳しかったのではないでしょうか?

大西
その通りです。そう簡単にはいかないことははじめからわかってはいたのですが、チャンスが訪れたのです。

ツアーを作り、媒体に掲載し、そしてレポートでフィードバックする

村山
中国におけるフリーマガジンのパイオニアとなられた大西さんですが、それからは順調に事業を展開されたのですか?

大西
ビジネスへの取り掛かりとして私が最初に手がけた「Concierge」は、中国や香港で暮らす日本人向けのフリーマガジンです。日本大使館職員の方をはじめ多くの方々に活用していただき、お陰さまで創刊から15年になりました。
ただ元々は中国人向けのビジネスをやりたいと思っていたものですから、日本の大手商社、情報誌を発行する企業と三社提携し、中国人向けのライフスタイル提案誌「MeHer」を発刊しました。これはかなり話題にはなったものの思うように広告がとれず、残念ながら1年半で休刊しています。

村山
いろいろとご苦労があるのですね。それでも諦めるわけにはいかないと?

大西
もちろん(笑)。「MeHer」の創刊以前、2005年に東京で日本観光情報誌を発刊していました。
私が東京に本社を設立した目的は、東京を起点に事業を展開していきたい、「日本人だからこそ伝えられる日本の魅力を中国人に発信できないか」という想いからでした。
当時、「これから日本に中国人観光客を誘致するためには中国人記者が日本を紹介するのではなく、地方各地に精通した我々日本人が旅行ガイドを制作するほうが意義があり、誌面づくりでもアドバンテージが高い」と考えていたのです。
ちょうど愛知万博のタイミングでJETROさんから依頼をいただき、この「needs(旧A/2010年6月より誌名変更)」というフリーマガジンを発刊しました。 発刊当初は、私がリクルート出身というご縁で「じゃらん」からコンテンツ提供などのご協力もいただいていたのですが、なかなか拡充できずに試行錯誤、一喜一憂の連続でした。
一昨年からは私自身が地方行脚をし、今ではコンテンツも自社で制作するようになっています。

村山
この「needs」は中国では、どのような読まれ方をしているのでしょうか?

大西
「needs」には日本旅行ツアーやツアーに組込まれた土地の情報が掲載されています。それを利用し、中国の旅行会社に中国人のお客様へ日本旅行を説明してもらうのです。したがって、私たちの編集および運営方針もそれにのっとった形です。
当社では「中国の方が求める日本旅行」を分析し、日本の地方自治体から依頼を受けて、両者のニーズに合ったツアーを現地旅行会社と作ります。
さらにその反応を各地方自治体にフィードバックするため、よりバージョンアップしたツアーの造成が可能になり、実際の集客に結び付けていく。このようなスタイルで、業務を進めています。

村山
単なるフリーマガジンの出版事業というより、かなりコンサルティング色の強いお仕事をなさっているのですね。

大西
「当社は『ツアーを作り、媒体に掲載し、そしてレポートでフィードバックする』一連の業務を提供します」とクライアントの各都道府県担当者様にお話しているのです。
中国現地の旅行会社から「どのツアーが何本売れて、その理由は何だったのか?」が明記されたレポートを提出してもらい、私たちはこれを分析・蓄積しています。
これらのリアルなデータを基に実践的な提案をし、クライアントにとって有益で、旅行者にとっても大変魅力的であるツアーを実現しているのです。

現地の声に耳を傾け、効果的な販売促進手段を講じる

村山

現在のインバウンドの課題について、どのようにお考えですか。

大西

まずは、日本の観光情報を中国本土で入手できる環境を整えることが必要だと思います。
インターネットであれば、中国の方が旅行先を探す際に使用する検索キーワードで、きちんと引っかかってくること。そして、その場所の魅力がしっかりと伝わるようなコンテンツを提供することです。
例えば、長崎県。「日本で魚が美味しいところは築地だけではない」として、そのウリとなる部分を効果的に伝えていくことが必要だということです。
つくづく感じるのは、やはりインターネット上で展開していく重要性です。当社が発行する媒体は、旅行会社のカウンターに置かれることでメリットが生じますが、インターネットのターゲットは何千万人とか何億人といったレベルです。発行部数20万部の「needs」とは桁が違います。それぞれの特質を理解して、戦略をかえてアプローチをする必要があると思うのです。

村山
まずは情報インフラを整える必要があるということですね。

大西
そうですね。あとは、各ホテルや旅館、レストランなどが個別に誘致戦略を立てていくのではなく、例えば都道府県の観光協会などと連携をとって進めていくことをオススメしたいです。
ある観光地の広告を打つときに、一軒のホテル情報だけではなく、その観光地がどういう場所で、どのような名所があるのか。あるいはモデルとなる観光ルートを提示するのも良いでしょう。
見栄えのする広告というよりはむしろ、具体的な情報がしっかりと網羅された上で、その観光地に行くメリットを明確に打ち出しているものの方が、中国の観光客誘致に確実に繋がっていきます。もちろん、一社で広告を打つよりも、数社で分担し合えばコストメリットも発生しますし。

村山
なるほど。中国の方が求めているのはより具体的な観光情報ということですね。

大西
その通り。中国の観光客を誘致するためには、我々のような日本の観光業に従事する人間がもっとしっかり勉強をする必要があると思っています。
例えば物流業界の方々はしっかりとモノの流れなどを研究されていますよね。同じように、人の動きや旅行会社の動きを理解し、交通・宿泊機関を有機的に繋いでいく、そんな研究にしっかり取り組むことも必要なのではないでしょうか。

そのためには、まずは現地の声に耳を傾けることです。そこから問題を抽出し、効果的な販売促進の手段を講じることが有効なのだと思います。

当社は中国にも現地法人を設け、常に観光動向を注視していますので、是非ご活用いただければと思います。観光客誘致の手段を皆さんとご一緒に考えていきたいと思います。

村山

本日は、ありがとうございました。

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