インタビュー

Booking.com Japan株式会社 日本地区統括 リージョナルマネージャー 勝瀬博則氏

2015.12.10

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データに基づき、「顧客」と向き合う!

世界最大のオンライン宿泊予約サイト、ブッキング・ドットコム。海外で圧倒的な存在感を放っている同社が、2015年日本市場でも大きく動き出した。増え続ける訪日客はもちろん、日本人利用客も積極的に増やしている。国内送客数年々3割増の舞台裏、課題認識や日本のインバウンドの未来について伺った。
<2015年12月10日>

目次:
ブッキング・ドットコムの概要について
強みについて
ホテル予約における現状の課題
日本のインバウンドの未来

1:ブッキング・ドットコムの概要について教えてください

1996年にアムステルダムで設立された、オンライン宿泊予約における世界トップ企業です。現在220の国と地域に約83万軒の登録施設があり、42の言語をサポートしています。世界中に10,000名以上が働いており、60カ国以上に173箇所の現地オフィスを所有し、毎日95万泊の予約が当サイトでなされています。

東京には2009年にオフィスを開設しました。現在国内で約7,500の登録施設があり、送客実績も年々飛躍的に伸びています。今年はさらなる事業拡大を図り、様々な施策に取り組んでいます。プロモーションも強化し、全国規模でのテレビCMやソーシャルメディアキャンペーンを行なって、ブッキング・ドットコムのブランド認知の向上につとめています。

2:貴社の強みについて教えてください

ブッキング・ドットコムの強みは、全てをデータに基づいた経営理念です。旅行業界の会社でありながら、主観をできるだけ排除し、データに基づいて判断します。データが全てです。「~かもしれない」ではダメです。

そのために弊社のサイトでは毎日ABテストをしています。例えば、施設名をクリックしたときに新しいタブが開いたほうがいいのか、同じページの中で新しい情報を出したほうがいいのか。相当数のデータを検証して判断します。ちなみにこの場合、お客様は新しいタブが開いたほうが、より予約をされることがわかりました。

毎日このようなABテストを何回も行い、細かくシステムの変更を行なっています。これは何のためかというと、お客様のためです。お客様が少しでも良い体験ができる。少しでも簡単に予約ができる。お客様に少しでも長くサイトにいてもらうことではなく、シンプルかつ簡単に予約が完了するのがお客様にとって最高のエキスペリエンスになるのです。

3:現状の課題は何でしょうか?

日本が観光立国になるためにはいくつかの課題が考えられますが、例えば日本では1年後の予約ができるホテルの数が海外に比べて圧倒的に少ないことが挙げられます。ヨーロッパの人々は1年前から休暇をどうしようか考えます。そしてその選択肢は、東京、ニューヨーク、シンガポールなど全世界の中からどこにしようかになります。ライバルは隣のホテルではなく、パリやロンドンのホテルです。

世界の中で、1年後の予約ができるホテルの数が登録施設総数の50%以下のところは東京だけです。なぜか?一つ目は、日本人はこれまで1年先の予約をすることがなかった。つまりニーズがなかったからです。二つ目は、年度が変わらないと予算が確定しないから部屋の値段が決められないという理由からです。お客様目線でなく自分たちの都合第一で考えてこなかったでしょうか?飛行機も同じことが言えます。選択肢が少ないと人は来ません。

顧客は日本人だけから外国人客も意識する必要があります。施設の、サービスの競合はもはや国内ではないかもしれない。自社の都合ではなく、顧客のニーズに合わせた対応をしていきましょう!「おもてなし」は顧客と向き合うことからではないでしょうか。

4:日本のインバウンドの未来について、どのようにお考えですか?

オリンピックは確かに大きなイベントですが、インバウンドのポテンシャルはそればかりにとどまらないと思います。将来は1億人以上の訪日外国人を予想する人もいます。かたや日本は超高齢化社会で働き手が減少していきます。しかし観光業であれば、多くの高齢労働者も働けるでしょう。私は観光業界から日本を活性化することができると考えています。

是非、日本の観光立国を盛り上げていく「志」のある方々に、ブッキング・ドットコムに入っていただきたいと考えています。

 

取材後記:
やまとごころキャリアで求人情報を掲載中の同社、取材時に休憩スペースを見せていただくと、毎週金曜日に恒例のフリーランチをスタッフの皆さんが和気あいあいと食事中。掲示板にはパーティーやファミリーイベントなどの写真が貼ってあり、コミュニケーションが活発なようだ。

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