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新型肺炎による訪日客の減少、2020年の日本のGDP7760億円押し下げの試算。小売への影響も懸念

新型肺炎の世界的な感染拡大が懸念されているなか、野村総合研究所(NRI)はインバウンド需要の減少による日本経済への影響について、2002年11月に発生が確認されたSARSとの比較をもとに、その試算を公表した。

SARS発生時と現在との大きな違いは、中国及びその他地域からの訪日観光客の急激な増加である。日本政府観光局の統計によると、2002年と2019年の間に、訪日観光客数全体では6.1倍、中国からの訪日観光客に限ると21.2倍と大幅に増加したという。SARS発生時にも中国、アジア諸国、あるいはその他国からの訪日観光客数は一時的に大幅に減少しており、2003年5月単月の数字を見ると、中国からの訪日観光客数は前年同月比69.9%の減少、訪日観光客数全体では34.2%減と、かなり深刻な影響が生じた。

新型肺炎の影響により、2020年の訪日観光客数がSARSの際と同じ割合で減少するとした場合、中国からの訪日観光客数の減少は2020年の日本のGDPを2650億円押し下げ、訪日観光客数全体では7760億円押し下げるとNRIは試算している。さらにこの影響が1年続いたと仮定すると、日本のGDP全体の0.45%に該当する2兆4750億円減少するという。

1月27日より中国政府は中国人の海外団体旅行を禁じた。団体旅行が全体の3分の1程度を占めるといわれる訪日中国人を含め、新型肺炎は日本のインバウンド需要にかなりの悪影響をもたらすことは必定で、訪日中国人観光客数は近いうちに少なくとも30%以上減少するだろうとNRIはみている。

国際通貨基金(IMF)の統計によると、中国の名目GDPが世界のGDPに占める比率は、2002年の4.3%から2019年には16.3%へと4倍近くにまで高まっている。仮にSARS発生時と同程度、中国の成長率が低下した場合における世界の成長率の押し下げ効果は4倍近くとなる。さらに内閣府によると、中国のGDPが2%低下し、世界のGDPが0.33%押し下げられた場合、日本のGDPは1年目で0.10%押し下げられる計算になるという。

中国人による爆買いの終焉という言説もみられるようになったが、2019年の訪日外国人旅行消費額のうち、中国人観光客一人当たりの日本での消費額は2019年で21万2981円と、全体の平均15万8458円よりもかなり高い。その上、中国人観光客の一人当たりの平均買物代は10万9000円と、訪日外国人旅行客の一人当たりの平均買物代5万3000円の2倍以上と突出している。新型肺炎による中国人観光客の減少は、特に百貨店、ドラッグストア、家電量販店などの小売業の販売に特に大きな打撃となりやすい。

さらに、JTBが行った調査では、訪日中に「ナイトエンターテイメント」を経験したと回答した外国人を国、地域別で見たところ、トップは40%の中国であることから、新型肺炎の影響が長引いた場合は観光庁が主導しているナイトタイムエコノミーの推進についても計画の見直しを迫られる可能性があると述べた。

(やまとごころ編集部)

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