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木造建造物伝承のための日本の伝統技術17件、持続可能な点など評価でユネスコ無形文化遺産に登録へ

2020.11.30

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12月14日から19日にパリで開催される第15回政府間委員会において、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が、ユネスコ無形文化遺産に正式な登録が最終決定される予定だ。

文化庁が17日、ユネスコ無形文化遺産代表一覧表への登録に向けて提案した「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」について、無形文化遺産保護条約政府間委員会の評価機関より「記載」の勧告があり、ユネスコ無形文化遺産公式サイトで公表された旨を発表した。

今回日本から提案された「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」とは、木・草・土などの自然素材を建築空間に生かす知恵、周期的な保存修理を見据えた材料の採取や再利用、健全な建築当初の部材とやむを得ず取り替える部材との調和や一体化を実現する高度な木工・屋根葺・左官・装飾・畳など、建築遺産とともに古代から途絶えることなく伝統を受け継ぎながら、工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術で、特に選定保存技術のうちの17件を対象としている。

例えば「建造物木工」は、近代まで木造建築が主流で、世界に類まれなほど精巧な建築を行う事ができるにも関わらず、近代建築の隆盛に伴い、古式の木工技術を体得する者が少なく、技術保存が困難な状況であり、また「檜皮葺・杮葺」は、建造物の屋根葺技術として日本特有のもので、現在も多くの重要文化財で使われているが、その技術が近代建築ではほぼ使われなくなり、伝承が困難になっている。17件はいずれも文化財の保存や技術の保護、伝承のために不可欠な技術ばかりだ。

日本からの提案には、これら伝統技術をユネスコ無形文化遺産代表一覧表へ記載することで、法隆寺をはじめとする世界文化遺産となった木造建造物や日本の建築文化を支える無形文化遺産の保護・伝承の事例として、世界の建築に関わる職人や専門家との技術の交流、対話が深められ、国際社会における無形文化遺産の保護の取組に大きく貢献するものとしている。

評価委員会からは、日本からの今回の提案が5つの基準を満たしている事、また代表一覧表への記載が無形文化遺産全般の重要性の可視化や認知向上に貢献できる好例となるものであるとの良い評価を受けた。また、日本が無形文化遺産と有形文化遺産である建造物との本質的な関係に光を当て、持続可能な開発に沿った提案を行ったこと、日本が関係するコミュニティの参画を得て提案を行ったことも併せて称賛するとの評価だった。

今後、「畳製作」「日本産漆生産・精製」「縁付金箔製造」など、これら伝統技術を使った製品に海外からの注目が集まることも期待される。

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