TOTTEOKI PROJECT

日本ファッション・ウィーク推進機構による「デジタルとフィジカルが融合したショーの実現」と地域との協業によって広がる可能性

2021.03.12

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ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスが沈静化すれば、いずれ近い将来に国をまたぐ人の往来が自由になるだろう。そのとき、インバウンド需要の再拡大を狙うには、いまから海外のライフスタイルやニーズを捉えたうえで、コンテンツの磨き上げを行っておく必要がある。

そんな需要拡大を目指し、2020年から始まっているプロジェクトが「TOTTEOKI PROJECT(とっておきプロジェクト)」だ。

外国人専門家を中心とした外部の有識者との連携によって、商品やサービスに化学反応をもたらすこのプロジェクトは、全国各地で12の事業が進められている。今回は、そのなかで「やまとごころ.jp」が注目した3つのプロジェクトを紹介していく。2つ目の事例となる本稿では、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構が行っているプロジェクトについて紹介していく。


©Japan Fashion Week Organization

 

2020年3月のショーが全面キャンセルになった

一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構は、年に2回(3月と10月)行うファッション・ウィーク東京(2019年からは楽天がスポンサーとなり、名称はRakuten Fashion Week TOKYO=RFWTに)の事業とテキスタイルの展示事業の2つを行っている団体。ファッション・ウィーク東京は、ミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンで開催される世界4大ファッション・ウィーク(コレクション)の次席にいる存在として、国内外の関係者から注目を浴びる約50のブランドが参加するファッション・ウィークである。

「残念ながら、2020年3月のRFWTは新型コロナウイルス感染症の影響で、全面キャンセル(中止)という苦渋の決断をせざるを得ませんでした。同じ年の3月のパリやミラノなどのショーは、一部でキャンセルがあったものの開催はしていましたので、団体としての全面キャンセルは我々が初めてでした」

そう語るのは、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構でRFWTのディレクターを務める今城薫氏。同氏によれば、その後、6月から9月にかけて行われたミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンのファッション・ウィークはすべてデジタル(オンライン)での開催となったという。そうしたなか、日本でも10月のRFWT開催を実現させるべく、ショーのデジタル化が議題にあがった。

「ファッション・ウィークのデジタル化を成功させるために、本プロジェクトに応募することにしました。一方で、今回、外国人専門家として入っていただいているみなさんからは、『世界の動きに合わせるのではなく、東京らしいものを追求すべきだ』と言ってくださった。それならば、従来型のショーであるフィジカルとデジタルを融合させて、東京らしいニューノーマル時代のファッション体験を実現させたいと考えたのです」


©Japan Fashion Week Organization

 

デジタルとフィジカルを融合させたプラットフォームの制作に注力した

今回、日本ファッション・ウィーク推進機構が協力を要請した外国人専門家は、イタリアのファッション雑誌『VOGUE』の副編集長で、若手デザイナーの発掘に力を注いでいるサラ・マイノ氏、メンズファッションの見本市の運営会社でマーケティングなどを担うアントニオ・クリスタウド氏、世界的なファッションブランドグループのコミュニケーションディレクターを務めるジャンルカ・カンターロ氏、パリの名セレクトショップを率いていたサラ・アンデルマン氏、そしてイタリアバイヤー協会のクラウディオ・ベッティ氏である。

彼らが「東京らしさを追求すべきだ」と助言した背景には、厳しい懐事情があることも否めない。欧米の有名ブランドは豊富な資金力をもとに、映像撮影に数億円単位をかけて見ごたえのあるショーをつくっていた。一方でファッション・ウィーク東京に参加する日本のブランドには、その100分の1ほどの予算しかない。つまり、欧米のやりかたを真似しようとしても、“劣化版”になってしまう可能性が高かった。

「6月にはパリでメンズのファッション・ウィークがありました。そこで参加した日本のデザイナーさんたちからヒアリングをしたところ、やはり“資金力の面で絶対に勝てない部分が出てくるから工夫が必要だ”ということを、みなさん口を揃えて言っていました」

そこで、本プロジェクトで提供された資金の活用方法として、まずはデジタルとフィジカルを融合させたプラットフォームの制作というところに力を入れたのだと今城氏は言う。

 

ファッションフォトグラファーのシトウレイ氏に取材動画を依頼

「プラットフォームとして行ったことは、ファッション・ウィークのサイトで、誰もがアクセスしやすいよう動画をメインの場所に配置させました。ライブ配信とアーカイブ配信の両方に対応し、SNS上でも同時配信や次のショーの告知などのスケジュールのわかりやすさや見やすさも追求しました。さらに、知名度のあるインフルエンサーを活用して注目度が高まるような仕掛けも行いました」

インフルエンサーを活用したアプローチでは、YouTubeを用いたショー当日の取材やショー後の解説動画を実施した。

具体的には、2020年6月にチャンネルを開設したファッションフォトグラファーのシトウレイ氏に、2つのファッションショーの取材動画の制作を依頼し、RFWTの公式YouTubeチャンネルでは、ファッションインフルエンサーの奈良裕也氏と秋元剛氏に、ショーの解説動画に出演してもらった。

そのほか、日本最大級のファッション専門媒体の「WWDJAPAN」でも常時、開催中のショーの配信とスケジュールを掲載させた。

 

フィジカルのショーを断念していた4ブランドの参加を実現

加えて外国人専門化からのアドバイスとして、「どこからでも見られるショーという利点を生かして、展開するブランド数を増やすというのはどうか」というものもあったという。この点について、今城氏は次のように話す。

「もともとフィジカルのショーをデジタルで配信する予定だったのは6つのブランドでした。ただ、それ以外にもショーの演出などにかかわる費用の関係で、断念していたブランドもありました。そこで今回、そうした足りないところを部分的にバックアップすることによって、4つのブランドの追加で参画してもらいました。結果的に10のブランドでデジタルとフィジカルを融合させたショーを展開することができました」

特にそのなかでもYUKI HASHIMOTOやSHOOPなどは、専門家であるサラ・アンデルマン氏が「世界で活躍する力があるのだから、支援すべきではないか」との助言もあったのだとか。


©Japan Fashion Week Organization

デジタル化に対応したこともあり、海外メディアとのリレーションは強化され、ウェブのページビュー数は国内外ともに大きく伸びた。広告換算値では1.3倍、メディア掲載数は1.5倍にも拡大したという。

「特にサラ・マイノ氏は世界各国のメディアやジャーナリストたちとつながっている方なので、アプローチ先に関するアドバイスも受けたことも大きかったです」

 

ファッションブランドと日本各地の生産者がコラボした商品をECサイトで販売

また、日本ファッション・ウィーク推進機構では、日英中に対応したグローバルECサイトを通じて、日本各地の優れた繊維製品と日本発のブランドとのコラボによるファッションアイテムの販売も画策した。

結果的に、コロナ禍の影響もあり、海外への販売は実現できなかったが、国内向けの3つの商品を企画し、販売に至ったという。

「ストリート系のブランドであるディスカバードは、名古屋のテキスタイルメーカーであるマルジューさんのコットン素材(ファブリックプラス)を使ったルームウェアをつくりました。1995年生まれの林史佳氏による新進気鋭のレディースファッションブランドのFumikuは香川県さぬき市にある縫製工場のエプロンストーリーさんとコラボしてエプロンをつくりました。グラフィックデザインが得意なアールビーティ(RBTXCO)というブランドは、一枚の布地から心地よい製品を自社工場でつくりあげるタキコウ縫製さんとコラボしてビーズクッションをつくりました」

これらのコラボ商品は特設サイトで国内向けに販売した。ただ、狙いは商品の販売だけにあるわけではない。日本各地にある独自性の強い生産者にとっても、世界へのアピールの場になると考えている。


©Japan Fashion Week Organization

「たとえばカニエ・ウェストというアメリカのラッパーでもあるファッションデザイナーがいますが、彼は徳島の山奥へ藍染に行ったことが知られています。彼のように文化的な感度の高いファッション関係者は、日本の地方に眠る独自の文化に興味津々なんですね。ですから、ファッション・ウィーク東京といっても、東京に留まる必要はまったくなくて、むしろ日本全国にいる生産者やテキスタイルメーカーなどとどんどん連携して、ブランドとともに世界に羽ばたいていくというようなことができたらいいと思っています」

 

世界のファッション関係者と日本の地域をつなげることで、可能性は大きく広がる

その1つとして、今後はRFWTで招待した世界のファッション関係者やメディア関係者を、日本各地にアテンドすることもできるのではないかと今城氏は語る。

「すでにみなさん、自分たちで個々に京都へ行ったり、直島(香川県)へ行ったりとしていました。ですので、もっと“知る人ぞ知る場所”へお連れすることができれば、きっとみなさん喜んでくれるはず。そのときには、ファッションにも造詣が深いシトウレイさんのような方にナビゲーター役を務めてもらうのもいいかもしれません」

ファッション業界や関係者は、お高くとまっているように見えることもあるかもしれない。もちろんそれは、戦略的に行ってきたブランド構築の手法の1つということもある。

しかし、今後、より世界に対して訴求力を高めていくためには、「東京らしさ」や「日本らしさ」を追求していく必要があり、そういう意味では、先に触れた地域文化との融合や連携が重層的に行われていくことが求められる。

したがって、地域側としても身構えることなく、彼らをフラットな気持ちで連携していくと、良い関係性が生まれるのではないか。

その先には、日本全体のインバウンド需要の拡大という点においても貢献していく可能性が秘めていることも、最後に記しておきたい。

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