TOTTEOKI PROJECT

“技術×観光”でグローバルなコミュニティの形成を図る。諏訪地域が取り組む今までにない「産業ツーリズム」のカタチ

2021.03.12

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まだまだ知られていないけれど、海外のライフスタイルやニーズを捉え、磨き上げを行うことで、インバウンド(訪日外国人)を魅了できるものが地域にはたくさんある。そんな地域に眠る魅力を需要拡大につなげていくプロジェクトがある。「TOTTEOKI PROJECT(とっておきプロジェクト)」だ。

外国人専門家などの有識者と地域が手を取り合うことで、商品やサービスに化学反応をもたらすこのプロジェクトは、12の事業が全国で進められている。今回は、そのなかでも「やまとごころ.jp」が注目した3つのプロジェクトについて紹介していく。3つ目の事例となる本稿では、長野県諏訪地域の6市町村(岡谷市、諏訪市、茅野市、下諏訪町、富士見町、原村)で始められた「産業ツーリズム」を通じたインバウンド誘客プロジェクトを取りあげたい。

 

「ヤバい未来をワクワクするプロジェクトで変えていきませんか」

「この地域に限った話ではないと思いますが、現在進行形で人口が減ってきていて、このままでは将来的には明らかに衰退していきます。そうしたなか、諏訪地域は製造と観光というメインとなる産業が残っています。どうにかこの2つを軸に、将来的に地域を継ぐことになる子どもたちの未来を明るいものにできればと考え、本事業への応募を決めました」

そう語るのは本プロジェクトのまとめ役だ。

もともとは、諏訪圏青年会議所(JC)の活動がきっかけで集まった有志による広域観光プロジェクトの一環で、地域商社の機能と観光誘客の機能を行ってきた。そのなかで、諏訪地域の最大の強みである製造業を中心に、オープンイノベーションが生まれるグローバルなコミュニティを当地に形成させたいと考え、技術と観光の両側面からブランドの確立を目指しているという。

「関わり度合いの濃淡はあるものの、40社ほどが集まって活動しています。そのなかで今回は、諏訪地域の最大の強みである製造業を巻き込むことで、インバウンドへの訴求力を高めたいと考えました。また、同時にこれまで大手企業の下請けを担ってきた製造業者が抱えている課題である、自社商品の開発や新規販路開拓、ならびに海外進出へのきっかけにもつなげていきたいと考えました」

諏訪地域の製造業者は、発注元である大手企業との関係性が強く、地域内における事業者同士の横のつながりは薄かったという。また、諏訪湖や八ヶ岳、諏訪大社といったスポットを持つ観光業と東京・大田区や東大阪、群馬県太田市といった工場集積地と並び称されるほどの規模を持つ製造業は、独立性が強く、混ざり合うことはほとんどなかったという。

そこで、「ヤバい未来をワクワクするプロジェクトで変えていきませんか」という掛け声のもと、新規で6社の製造業者を巻き込むことに成功した。

 

世界のトレンドを教えてもらうことで、一歩を踏み出すことができた

「今回ご一緒させていただいた専門家のみなさんが異口同音に言ってくださったのは、この地域がもつ製造技術の高さ。それがこの狭い範囲に集積していて、しかも諏訪湖や八ヶ岳といった観光地とも隣接しているというのは、日本では他に類をみないと評してくれました。それならば、製造業の自社商品開発のための資金やアイデアを取り込むために、観光業を絡めた形でインバウンドを誘致すればいいのではないかと考えたわけです」

狙いを定めたのは北米のエンジェル投資家やベンチャー企業の経営者。その背景にあるのは、米中貿易摩擦だ。彼らには豊富なアイデアや資金力こそあるものの、中国の工場が使えなくなったことで、製造面でのニーズがあること。さらに新型コロナウイルス感染症の影響もあって、北米のベンチャー企業がシリコンバレーなどのハイテク企業の集積地から、自然豊かなエリアであるソルトレイクシティに拠点を移す動きがあることも後押しとなった。

「そうした動きがあることを専門家のみなさんに教えていただいたときには、まさに目から鱗が落ちるような気持ちでした。もうひとつは、 “ニューロサイエンス”という世界のトレンドを教えてもらったことも大きかったです」

ニューロサイエンスとは、直訳すると脳科学。製品としての一例をあげると、怒ったときには赤くなり、気持ちが落ち着いているときは青くなるランプのようなもの。世界では、この感情系の技術を商品にしていく動きが活発になっているということを教えてもらったのだとか。

「これは製造業のみなさんも話していたことですが、『自分たちには技術はある。言われたことを具現化することはできる。でも、ゼロからイチを生み出すことはなかなか難しい。だから、世界のトレンドを教えてもらったうえで、専門家の方々がこういったものが作れるというラフデザインのようなものを作って、方向性を示してくれたことが、一歩を踏み出そうという気にさせてくれた』と」

本プロジェクトの外国人専門家は、アメリカ市場のマーケティング専門家のダン・ロー氏、日本企業のアメリカ進出およびアメリカ企業の日本への展開をサポートしているニキ・ウチノ氏、さらに日本文化に造詣が深いYouTuberのスティーブ・フェルドマン氏、さらにその他専門家として、語学に堪能で製造技術にも詳しい、外国人専門家と諏訪地域側の間を取り持った片上裕紀氏が関わっている。

 

北米と台湾のエンジェル投資家やベンチャー企業経営者をターゲットに

では、具体的にオープンイノベーションが生まれるグローバルなコミュニティを形成させるために、どんなことを始めているのか。

1つは北米や台湾のベンチャー企業経営者やエンジェル投資家を誘致することだ。ただし、単純にビジネスミーティングや工場見学をするだけではなく、家族帯同のロングステイを提案することで、製造業とともに1つの産業となっている観光コンテンツも楽しんでもらう。これによって、複合的に地域で消費してもらえるようになる。

先ほど北米とともに台湾も市場に据えたと書いた。その背景には、世界に広がる中華圏の独特な文化発信形態がある。台湾や上海といった先端地で流行ったものが中国全土を通じて世界のチャイナタウンに伝播していく流れがあるのだという。さらに、北米にいるアジア系住民の感覚は、台湾の感覚にも近い。もちろん長野県が台湾人観光客の人気のデスティネーションになっていることや、コロナ禍後を見据えたときに、最も早く戻る市場であると予測されていることもあり、北米に加えて台湾市場もターゲットに入れたのである。

「もちろん台湾といってもターゲットは絞っています。実は、台湾の製造業は日本より先端を行きつつある。そんななか、最新の技術を求める台湾の製造に関わるベンチャー企業の若手経営者を家族ごと呼び込むといいのではないかと考えています。我々はグローバル・ワーケーションなんていう言い方もしたりしています」

すなわち、日台米のグローバルなコミュニティが生まれることを期待しているともいえる。

 

「眠れる椅子」をラスベガスの見本市・CESに出展

すでに製造業においても観光業においても、具体的なアクションも起きている。最大の成果は、外国人視点のアドバイスを取り入れたことで実現した、「眠れる椅子(SUWA EGG)」の開発への取り組みだ。日本らしい“禅”の要素を取り入れたこの新商品のアイデアは、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)と呼ばれるラスベガスで年に1度行われる電子機器の見本市にも出展した(コロナ禍の影響で完全オンラインでの開催)。

「もともと、CESに出展という発想すらありませんでしたが、専門家のみなさんから“CESは情報発信や関係構築にもつながるので近道になる”と教えていただき、取り組むことに決めました」

さらには、諏訪産のEバイク(電気バイク)や感情に反応して色が変わるランプなどの開発も検討されている。特に後者は、観光分野でも活用できると考えているという。

「たとえば1週間とか10日間のロングステイのときに、諏訪で開発した感情に反応するランプを諏訪の宿泊施設に導入してはどうかという話もあります。諏訪に滞在するなかで、最初は赤かったランプが、心が落ち着いてきて青になっていくというようなことは、製造業と観光業をかけ合わせた素晴らしいアイデアだと考えています」

 

もとより地域にあるコンテンツをどう見せていくかに注力する

観光業においては、もともとあるコンテンツをどう全体として見せるかというマーチャンダイジングを主に行った。

「最初はこの地域にある観光コンテンツを広くピックアップした調査を行いました。400人ほどの外国人に2つの軸でレーティング(評価・数値化)してもらいました。1つは『知っているかどうか』で、もう1つは『面白そうだと感じるか』という点です」

そのなかで注視したのは後者だという。ニーズがあるのならば、プロモーションを通じて認知度を高めたり、グローバル・ワーケーションを提案するなかに組み込んでいったりしようと考えている。

「また、エンジェル投資家や事業者に向けたプロモーション動画も製作しました。先のレーティングをもとにして、評価の高いコンテンツを中心に構成させたり、家族できたときの具体的なイメージがしやすいようタイムスケジュールや楽しみ方を提案したりもしています」

先の調査ではレーティングだけでなく、それぞれのコンテンツに対するコメントも募った。それらは個別に事業者に対してフィードバックもしており、外国人目線を取り入れた商品やサービスを磨き上げること、ならびにラインナップの強化を促している。

 

外国人観光客にとっての「とっておき」な存在になるために

他の地域と同じことをしていても、外国人観光客にとって「とっておき」の存在にはなれない。そのことはわかっていても、具体的に何をしたらいいかわからない。日本には、そんな地域が数多く存在する。

固定化された事業者や関係者だけでこねくり回そうとするのではなく、本プロジェクトのように、地域にある別の産業同士が連携することは、「とっておき」を生み出す近道になるのではないか。もちろん彼らのプロジェクトも本番はこれからだが、長野県諏訪地域の「製造業×観光業」の取り組みは、そんな可能性を感じさせてくれるのに十分な事例だといえるだろう。

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