やまとごころ.jp

第74回

スノーリゾートとして外国人誘致のポテンシャルを持つ、2つのエリアに迫る

2018.02.06

Part1:雪は日本の最強コンテンツ! 世界のスキー・スノボー需要をつかまえろ

 

スキー場に隣接する飲食店街の存在が重要だ 

また妙高と同じく、誘致で成功しているエリアに長野県の野沢温泉や白馬がある。ここに共通していることは、宿の近くに飲食店が多いことだ。 

妙高の清水氏によると、外国人スキーヤーのほとんどが、素泊まりだという。日本的な1泊2食付きというプランを好まないのだ。食べたり飲んだりするために、宿の外へ繰り出すのを楽しむ。また連泊をするので、飲食店が点在しているほうが好ましい。毎日、違うところに行けるからだ。

だから妙高エリアで一番の人気は赤倉温泉街だ。ゲレンデまで歩いていける近さが好評で、また宿の近くに飲食店が多いのがポイントだ。200メートルの温泉街に多くの飲食店が集まっているのが特徴で、観光協会では英語のレストランガイドマップを作成し、国の補助でWi-Fiも整備した。冬のみ営業するお店があるほど、オーストラリア人によって活気を帯びている。

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群馬県のみなかみ町がインバウンドに動き始めた

これまでは、すでにインバウンドに力を入れて成功しているエリアをみてきた。だが、まだまだ知られていないが、実は、雪質等、ポテンシャルからも期待されるエリアが全国に多数ある。そのなかで、最近、インバウンドに注力し始めたエリアを2つ紹介しよう。

その一つが、群馬県のみなかみ町だ。水上には9つのスキー場があり、既にインバウンドに力を入れているところ、そうではないところと足並みがそろっていなかった。2017年から群馬県の海外プロモーション事業もあり、すべてのスキー場が一緒になってインバウンドに取り組むことになった。まさにみなかみ町ではインバウンド元年と言える。

みなかみのスキー場は、東京からのアクセスの良さが特徴で、新幹線で1時間少々で着くことが可能だ。都内の観光も合わせて楽しめる。
また、アクティビティも充実していて、伝統工芸品を作る匠の里、犬ぞり体験、日本酒体験、情緒ある温泉もある。
連泊が多い外国人には、スキー以外の楽しみの提供も重要なファクターと言え、それに見合うコンテンツが揃う。雪質の良さについては、外国人に人気の白馬や野沢温泉に引けを取らないと地元のマイク・ハリス氏は言う。

 

在住外国人の力を合わせ、みなかみの魅力を伝える

ところでマイク・ハリス氏とは、みなかみ町在住のニュージーランド人で、キャニオニングを日本に広めた第一人者でもある。今後は、冬にスキー・スノーボードを中心に、海外からの受け入れも力をいれていきたいと言う。スノーキャニオニングというスライダーのように滑り落ちる遊びをスタートさせている。日本全国、みなかみ町でしか体験できないアクティビティだ。

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みなかみ町の宿泊施設は、民宿、旅館、5つ星のホテルまで幅広い選択肢があるため、幅広いニーズに対応できるとハリス氏は言う。

また連泊をする人が多く、欧米人の他、最近では、シンガポールや台湾からも増えてきたそうだ。

みなかみ町には、9つものスキー場があることも強みで、どこでも使える共通券をスキー場が連携してつくっている。その日のコンディションによってスキー場を選べるメリットがあるのだ。またスキー場ごとに英語のページをスタートしていて、それを見て、どこに行くかを検討できる。

ハリスさんは、昨年、オーストラリアでのスノーエキスポに群馬県と一緒に出展してアピールした。そして今年の1月には、オーストラリア現地の旅行会社のスタッフが視察にみなかみ町を訪れたので案内をした。

今後の課題としては、まだみなかみ町のことが知られていないので、知ってもらう活動が重要だと言う。また2次交通の問題もある。スキー場が離れているので、そこまでのアクセスに困っていて、それをハリスさんの会社がサポートしている。

このように雪質や設備環境が優れていて、知ってもらうことで、今後ブレイクするスキー場は全国にいくつもありそうだ。

 

地元新聞社が立ち上がり、樹氷を訴求ポイントにしたインバウンド! 

次に紹介するのが、東北の「樹氷」をテーマにした誘客だ。

その企画を立ち上げたのが、東北七新聞社協議会だ。同会では、毎回いろいろなテーマで地域の問題解決に向けた事業に取り組んでいて、東北のインバウンドを促進することが議題として挙がった。なぜ東北に足を運んでもらえないのか、どうすれば来てもらえるようになるのか、議論が繰り返された。

特に注目されたのが、冬の閑散期だ。北海道や長野県はインバウンド向けに、冬のスキーが成功している。夏よりも外国人客を集客するエリアもあるという。ただし、「スキー」を訴求するだけでは、ニセコや白馬等、先進エリアに追い付くのは難しい。そこで、東北に共通する強みとして挙がったのが「樹氷」であった。

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実際に、既に山形の樹氷が台湾で人気が出つつあった。 

樹氷は気象条件が重要で、強風、湿度、降雪量が揃わないとできない。しかも海外では、かなりの山奥に行かないと見ることができない。一方、東北の場合は、例えばリゾートホテルのすぐ近くで見ることもでき、気軽に楽しめるコンテンツだ。 

 

復興庁の採択モデルに決まり、ツアーコンテンツづくりがスタート

2016年1月、復興庁が東北への外国人旅行者の誘客に繋がる取り組みを支援する、「新しい東北」交流拡大モデル事業を知り、この事業に東北七新聞社協議会として応募することになった。東北の大手旅行会社と連携して、実際のプログラム(ツアー)づくりが始まったのだ。

そして、2016年4月にこの企画が復興庁に採択された。

樹氷をテーマにしたツアー商品と冊子が整ってからは、海外の旅行博にも出展した。ターゲットとしていたオーストラリアで5月にスノートラベルエキスポが開催され、樹氷について関心を持ってもらうことができた。

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今後、日本でスキーをするリピート客に、どれだけ訴求できるかが、カギになりそうだ。またスキー未経験のアジアからの誘客の可能性もあり、単純に樹氷だけを観光するというのも人気になりそうだ。ユニークな取り組みとして今後の展開に注目したい。

 

(次号へ続く)