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博多旧市街で、福岡を魅力的に彩るインバウンド体験プログラムとまち歩きが続々!

2018.05.22

九州の陸の玄関口ともいえる「博多駅」周辺は、ホテルやゲストハウスが林立し、韓国人をメインに多くの外国人旅行者が闊歩します。実は、博多駅周辺は寺社仏閣が多数集まり、伝統文化が息づくみどころいっぱいのエリアですが、外国人個人旅行者が利用できる多言語でのまち歩きや体験は数件ほどしかありませんでした。しかし、2018年の春以降、寺を使った体験プログラムなどが続々と登場しています。その背景と実情をレポートします。

 

博多駅を一歩出ると歴史と伝統の佇まい

2011年のJR博多シティの開業以降、博多阪急やKITTEなど商業施設も揃い、外国人観光客も多数行き交う博多駅。しかし、5分も歩けば寺社がならび、歴史を感じさせる街並みがひろがります。これは、博多の港が、中国をはじめとする海外に開かれていたことが起因します。博多の港は 紀元1世紀ごろにはすでに 中国大陸と交流があり、7~8世紀に大陸へ派遣された 遣随使・遣唐使なども博多から出港。帰国した僧が大陸からの文化をもたらし、各地に戻る前に博多で寺を建立したといわれています。特に、平安時代末期に宋の商人が居住し、日本で初の“大唐街”とよばれるチャイナタウンが作られ、繁栄していました。

福岡市は2017年12月にこのエリア一帯を「博多旧市街」と銘打って、統一ロゴを作成。2018年4月には魅力を伝える回遊のモデルコースを設定するとともに多言語で観光説明板などを設置しました。

 

伝統を物語る寺に協力を依頼

「博多旧市街」プロジェクトのひとつに、「民間プレイヤーによる海外向け観光商品販売」があります。寺社などでの和文化体験や伝統工芸など旧市街の魅力を体験できる観光商品を海外に向けて販売するというものです。これは、2017年8月に福岡市からの委託事業としてスタートし、2018年4月以降は民間事業者で継続するという方針で、和文化体験施設SUITO FUKUOKAを運営する株式会社イーストを中心に、私が所属するインアウト株式会社とダイスプロジェクトの三社で、観光商品の造成をスタートしました。

2017年9月からのスタートで、事業者向けに説明会や声がけを行いました。外国人向けに商品を作りたい事業者さんは、基から外国人向けにやっているのに加え「まったく初めて」「日本人向けに実施している商品を工夫」をあわせて20数社が集まりました。しかし、中にはカルチャーセンターなどを借りて、体験コンテンツを提供していた方もおり、そういった方にとっては「この旧市街エリアで実施できる場所がない!」ということで、まずは寺に訪問を実施。

毎年11月に寺社仏閣をさまざまなライトアップとともに観覧できる「博多ライトアップウォーク」に協力をいただいている寺を事業担当である博多区役所スタッフに協力してもらいすすめました。その期間以外は檀家以外入ることができない寺がほとんどです。そこに「座禅など体験プログラムをされませんか」「事業者に場所を貸す形式で協力していただけませんか」とお願いをしました。

結果として、2018年4月末現在、住職自らが行う「妙楽寺での座禅体験」、寺を場所として展開する「本岳寺での日本舞踊体験」「海元寺のヨガ体験」など寺での体験プログラムを含めた23の商品が完成。「SUITO FUKUOKA」のホームページに掲載され、申込ができます。今後、海外の予約サイトにも掲載される予定です。

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各国をターゲットにした商品造成

今回は体験プログラム商品を組み合わせた商品、まち歩き商品もあり、主要ターゲットにあわせて造成しました。

 欧米豪系向けの「Hakata Tradition and Modern Art Tour」では、承天寺や東長寺などの伝統文化を体感しながら、町に息づくモダンアートも堪能する3時間半のみっちりと詰まったツアーです。これは、アーティストであり、かつ通訳案内士の徳永氏が、1つのスポットにあるストーリーを丁寧に説明することで、欧米系を中心に好評を得ています。

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 博多旧市街とつながりの深い中国人向けには、宋の貿易商人として博多に居住して承天寺の建立に寄与した「謝国明(しゃこくめい)」に、日本人で中国や台湾で活躍するタレント・ねんど大介さんがなりきって案内をします。中国人向けには、歴史的説明が長すぎることがないよう、ポイントを絞って説明することが肝要です。

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どちらのまち歩きも、日頃は檀家しか入ることができない承天寺の美しい石庭を中側から鑑賞、博多町家ふるさと館の和室でお茶を楽しみながらの休憩とガイド付きまち歩きならではの特典があります

 手軽さを好み、長時間の制作体験などをあまり好まない傾向がある韓国人には、絶大な関心を寄せる「グルメ食べ歩きツアー」やいくつもの名物を少しずつ食べることができる「グルメチケット」などを考えました。しかし、韓国の旅行代理店「旅行博士」や「九州路」などにヒアリングしたところ、「情報さえあれば自分で決める」「韓国人にかなり有名で、それでないと予約ができない店でないと難しい」とのことで断念。韓国人には「着物を着て、人力車でめぐる体験」や「韓国語で三味線体験」をおすすめしています。

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日常の商品をモニター実施で磨き上げ

「外国人客向けにどうやっていいかわからない」と尻込みをしていた事業者さんが一念発起してトライ、人気を集めているプログラムもあります。

歴史ある川端通商店街で100年以上の歴史を持つ「門田提灯店」さんは、その一例で「提灯絵付け体験」を実施しています。事務局側で英語で店舗や体験の流れを説明した案内書を作成するなどサポート、カタコトの英語ですすめます。また、参加した外国人の方に漢字の名前を提案し、それを提灯に入れてあげ、最後は法被で撮影できるのも喜ばれるポイントです。これらの商品は、少なくとも1回以上は、在住・短期滞在の外国人にモニターとしてアドバイスをしてもらい磨き上げを行いました。日本人では気づかなかった指摘も多く、モニターの重要性を痛感します。

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プロモーションが課題

SUITO FUKUOKAのHPは、予約〜申込までの流れをまとめて事前決済できるようにしているため、今まで参画したことのない事業者も安心して外国人向けに取り組めます。しかし、現在は予約の体制が整っただけで、今後の課題はプロモーションです。長い期間実施がないと、事業者のモチベーションは下がってしまいます。海外の予約サイトとの提携や、メディアや海外旅行代理店にプレスリリースなどをすすめていますが、まだこれから。多くの人に「福岡」の違った側面を体感してほしいものです。