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~人民日報海外版から~

【人民日報】第63回 日本人より現地に詳しい中国人観光客

2018.05.28

今回のコラムは、中国人旅行マーケットがいかにモノ消費からコト消費に変化しているかの話題だ。それは日本だけではなく、世界の観光地でおきている現象。

 

日本人より現地に詳しい中国人観光客

国家観光局が2月21日に発表した春節の観光市場に関する報告書「2018年春節休暇観光市場総括」によると、今年の春節連休には中国人観光客が国内の主要都市約200カ所を出発して、中国と世界68カ国・地域の730都市を旅行した。東南アジアは引き続き一番に名前が挙がる目的地で、米国や欧州などの長距離の目的地も非常に人気があった。

[caption id="attachment_23766" align="alignright" width="200"]中国・カナダ観光年の開会式で挨拶する盧沙野中国大使 中国・カナダ観光年の開会式で挨拶する盧沙野中国大使[/caption]

海外旅行者は団体ツアーと個人旅行がそれぞれ約半数を占め、85後(1985年から89年生まれ)と90後(1990年代生まれ)が海外旅行市場の主導権を握り始めたほか、質の高い海外旅行が確立されつつある。

観光客は短距離から長距離へ、観光からリゾートへ、「爆買い」から「ゆったり過ごす」へとシフトチェンジし、世界中の景色を見に行くのと同時に、中国文化を広く伝えることにもつながっている。海外メディアは中国人観光客が旅行の中身や体験をより重視するようになったこと、消費の理念がより理性的で多様なものになってきたことを相次いで報道している。

 

観光スポットの「駆け足」は下火に

 旅行予約サイト・同程国旅がまとめたデータによれば、今年の春節連休には海外に出かけた中国人観光客の一人あたり平均消費水準は6千元(約9万6千円)に達し、都市別の最高は1万元(約16万円)を超えた。同じく旅行予約サイトの途牛旅遊網のデータでは、春節連休の海外旅行人気上位10都市は、大阪、チェンマイ、京都、パリ、長崎、ローマ、ドバイ、ルツェルン、フィレンツェ、ベニスだった。

また春節期間中、日本も旅行先として爆発的な人気を誇った。観光客は観光スポットを「駆け足」で回るような旅をしなくなり、旅行がどれくらい快適かを重視するようになった。リラックスできて快適なアイランドリゾートが大勢の観光客を惹きつけ、特に若いカップルや家族旅行で訪れる人が多かった。

シェア自転車サービスの摩拝単車(モバイク)が2月22日に発表したデータをみると、春節連休に中国人ユーザーは世界中を走り回り、シンガポール、シドニー、ミラノなどの海外都市における中国人シェア自転車利用者は前年同期比350%増加した。シンガポールを訪れた中国人は特に熱心なユーザーで、シンガポールは海外でシェア自転車サービスが最も盛んな都市になった。

オーストラリアの旅行雑誌「インターナショナル・トラベラー」によると、国連世界観光機関(UNWTO)のデータでは、中国は今や世界の海外旅行消費の20%以上を占めており、消費大国の米国の2倍にあたる。だが中国人の海外旅行市場は始まったばかりで、中国人でパスポートを持つ人は5%にとどまり、政府は毎年約1000万冊の新しいパスポートを発行しているという。

 

日本人より現地に詳しい中国人観光客

「日本経済新聞」の2月22日付報道によれば、日本を訪れる中国人観光客が数年前から大幅に増加している。初めの頃は数十万円もするブランドジュエリーや大量の家電製品の「爆買い」が注目を集めたが、ここ数年は買い物熱は低下して、観光客はより魅力的な観光地を求めるという具合に変わってきているという。

「毎日新聞」の2月21日付報道では、中国人は日本情緒が感じられて、しかも団体ツアーでは行けないような場所を求めているとした。日本最大の旅行会社JTBによると、春節連休には北海道で流氷砕氷観光船に乗って流氷を眺める中国人観光客が昨年の2倍に増え、江戸時代の雰囲気が残る川越の散歩も人気がある。「爆買い」が沈静化するとともに、恋人や家族と一緒に日本で旅行の楽しみを味わう人がどんどん増えている。こうした人々は温泉へ行ったり、地方のグルメを味わったりはするが、ブランド店には足を向けない。「日本テレビ」の報道では、中国人の目下のトレンドは「体験の消費」で、日本人と同じように正月の餅つきをしたり、雪で遊んだりするのが人気だ。場合によっては日本人よりも現地のことをよく知っていたりする。

 

 消費が多様に実用的に

スイスの経済紙が2月21日に伝えたところによると、世界には中国人観光客ほど欧州経済に重要な影響を及ぼす観光客を擁する国はない。中国人観光客は欧州の多くの国にとって最も高い購買力をもった外国人観光客クラスターだ。ただ中国人消費者は要求がますます厳しくなり、他の分野にもこれまでより目を向けるようになったのでうかうかしてはいられないという。

ドイツ2位の日用品チェーン店ロスマンのベルリン支店のマネージャーの話によると、「今年の春節にうちの店に買い物に来た中国人観光客は昨年の2~3倍に増えた。(ドラッグストアの)DMや(スーパーの)アルディといった低価格商品を扱う店で買い物する中国人観光客もますます増えている。中国人消費者は支付宝(アリペイ)の利用などで割引きや優待といったサービスを利用することができ、割引率は5~30%、対象はショッピング、レストランだけでなく、名所旧跡の観光などにも広がる。

ドイツの経済紙によれば、中国の中産階級がますます多勢を占め、欧州旅行をする層にも変化が生じ、女性旅行者と家族旅行が主流になりつつある。このことが中国人消費者の欧州における消費に影響を与え、消費をより実用的なものにしているという。

ドイツのケルン大学のロドフ氏(経済学)は、「中国人消費者の消費行動がより理性的になった。これは一つには中国人観光客がより多様化したからだ。特に中高年の消費者は商品のコストパフォーマンスをより重視するし、ぜいたく品のほとんどが中国でも買えるようになったこともある。次に、中国人消費者が今、欧州に行くのは単にショッピングが目的ではなく、文化の体験といった方面にお金をより多く使いたいと考えるようになったからだ」との見方を示した。