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日本を身近に感じられる台北の商業施設「ブリーズ南山」から分かる、台湾人が日本に求めるものとは!?

2019.05.20

台北を歩いていると、日本語で書かれた看板や交通広告、日本ブランドの飲食店などをよく見かける。日本以外の他国との競争が激化しているとはいえ、これだけ“日本”があふれているからこそ、海外旅行の訪問先として第一位の地位を確保しているのか。現地・台北の人気スポットからその要因を探る。

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まるで日本の駅ビルみたい!「アトレ」が入ったBreeze南山(微風南山)

台湾・台北の中でも、世界中から人々が集まる信義地区で、台北のランドマーク「台北101」、旅行博が開催される世界貿易センターにも隣接する場所に、Breeze南山という商業施設が2019年1月10日にオープンした。

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▲breeze南山

Breeze南山は、「微風廣場(Breeze Center)」などの台北を中心に高級デパートを手掛ける微風集團(Breeze 微風グループ)が運営するショッピングセンターで、地下2階~地上7階、売り場面積約16,200坪の規模を誇る。ここに日本で駅ビルショッピングセンターを手掛けるJR東日本グループの「アトレ(atré)」が入り、2階~4階は微風グループ、アトレ、三井物産の3社が合同で運営する台湾初の店舗形態となっている。日常でありながらちょっとした上質さを体験できる「高感度×デイリー(日常)」がコンセプトで、台湾初出店となるブランドも多い。

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その「上質なデイリー」のコンセプトをもっとも体現していると思われるのが、4階にある生活雑貨ショップ「小器生活」。日本の器がずらりとならび、工芸、料理やアートの書籍などを販売。ここでは、派手ではないがハイクオリティーな生活文化を体験することができる。その奥にある日本の器で定食を出す「小器食堂」では、日本語を話すスタッフが対応してくれた。

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米国の人気コーヒー店、ブルーボトルコーヒーも期間限定で出店しており、チョコレート専門店「ダンデライオン・チョコレート」やチーズ菓子専門店「東京ミルクチーズ工場」などスイーツや各階のカフェ、レストランにも日本の店舗やブランドが並び、行列ができるほど人気だ。

3階はファッションから雑貨までそろい、4階にはおしゃれでカジュアルな大型セレクトショップが集まる。近隣にある台北101目的で訪れて立ち寄った観光客もいるが、このエリアのビジネスパーソンや感度の高い市民、ファミリー層が集まっている。

7階には神社もあり、日本を感じさせる写真撮影スポットになっている。同じフロアにはJR東日本が手掛ける訪日情報発信カフェ「JAPAN RAIL CAFÉ」や東北の観光情報を発信するコーナーもあり、日本への旅を喚起する場所になっている。

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最も日本を身近に感じるのは、地下の食料品・スーパーのフロア。米や酒もブランドの品揃えが豊富で、フルーツや生鮮食料品にも日本産がズラリと並ぶ。私が住む福岡の百貨店よりも、日本全国の名産ブランドが取り揃えられている。

「これだけ日本を身近に感じられるからこそ、本当の日本、現地でのショップやレストランに行ってみたいと思うんですよ」カフェで隣り合わせた20代の男性がそう語ってくれた。ここは日本のショーケースのような感覚なのかもしれない。

 

地下鉄や交通広告にみる「日本の近さ」

多くの人が乗降する地下鉄の駅や通路では、日本行きのクルーズや交通パスの巨大な交通広告が掲示され、注目せずとも目に飛び込んでくる。もはや台湾において、日本の交通広告はディスティネーションのイメージをうたうものではなく、具体的な商品を訴求し、実際の予約・申込みにつながるものになっている。特に、クルーズは人気の「台湾〜沖縄、離島」をはじめ、短期の日程と手頃な価格帯により、旅心を誘う内容になっている。

早期割引などもあいまって、日本は物理的にも心理的にも「近い」海外旅行先なのではないか。

[caption id="attachment_32109" align="alignnone" width="630"]1819_advertisement 左:日本各地に就航し勢いを増すエア・アジアは台北〜大阪・名古屋が1499元 右:近鉄電車の関西や名古屋。三重の周遊券が格安に [/caption]

 

世界からの観光客を集める人気スポットで日本が見習いたいポイント

歴史的建造物や古い家屋をリノベーションした街並みは、台湾各地で人気スポットになっているが、特に以下で紹介する台北の2エリアは「日本」を連想させる。

乾物街や布問屋街として知られる迪化街は、19~20世紀の間に、台北で一番繁栄していたといわれ、今もその当時の建物が貴重な文化財として残っている。

[caption id="attachment_32102" align="alignnone" width="640"]20_迪化街 平日でも通りに人があふれる迪化街[/caption]

日本統治時代に作られた「三進式街屋」と呼ばれる日本の町屋に似た間口が狭く奥に長い伝統な民家も多く、日本人にとってはどこか懐かしい感じがする。今やリノベーションされた雑貨ショップや土産物、カフェも建ち並び一大観光地になった迪化街は、日本でいう「レトロ」な雰囲気を台湾の若い人にも伝えている。

オリジナルデザインやかわいい土産品、台湾料理をマスターできる体験教室など見習いたい点もたくさんある。

[caption id="attachment_32106" align="alignnone" width="640"]22_苺大福 苺大福のお店も人気がある[/caption]

松山文創園区は元のタバコ工場をリノベーションした複合文化施設。市の史跡に指定された6.6ヘクタール敷地に、デザインミュージアムやデザイングッズを販売するショップやカフェがあり、展覧会なども開催されている。

折しも日本発の人気キャラクター「すみっこぐらし」や「ちびまるこちゃん」、寺田尚樹氏のミニチュア、インスタ映えする写真が撮影できる「玩美攝影棚Studio X Pocky Deco Art」など日本にちなんだ展示ばかりが開催されていた。

いずれも行列ができるほどの人気ぶり。「日本のカルチャー」だと特に意識することなく、台湾の人々に親しまれ、浸透していることを実感する。

[caption id="attachment_32101" align="alignnone" width="640"]23_すみっこぐらし 一番人気は「すみっこぐらし」展 ファミリー層が多く集まっていた[/caption]

これだけ日本があふれていると、親近感は自ずと湧いてくるものだが、優位な状況にうかうかしてあぐらをかいてもいられない。航空便が増えた東南アジアのリゾートやヨーロッパなど他エリアがプロモーションを仕掛けてきている。日本が持ついろんな側面の情報を発信しつつ、日本に来たときには地域の魅力を存分に堪能できるような体制で台湾人観光客をお迎えしたい。

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