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新型コロナウイルスによる訪日中国人消費2020年1-3月で1422億円減少見込み、関連産業への影響は2846億円に

2020.03.02

中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)への脅威が世界的な広がりをみせており、日本国内でも、全国で感染者が出ている。こうした状況を受けて、日本政府は、対策基本方針を策定するなどの対応に追われているが、COVID-19の拡大が世界経済に与える影響も計り知れない。IMF(国際通貨基金)は、2020 年の中国の経済成長率予測を 1 月時点から 0.4 ポイント引き下げ、世界経済見通しも下方修正が進む。そんななか、帝国データバンクは、COVID-19の拡大が日本経済に与える影響を試算したレポートを発表した。その内容を見ていく。

 

中国に進出する日本企業の景況感は2013年3月頃の水準まで急速に低下

まず初めに、中国に進出している日本企業の状況を見ていく。

中国に進出している日本企業は2019年5月時点で1万3685社、そのうち武漢市進出の日本企業は199社となっている。中国進出企業の景気DI(景気の各経済部門への波及度)は2018年まで全体を上回って推移していたが、2020年1月の景気DIは直近のピークである2018年1月の54.1から13.7ポイント減少の40.4となり、中国に進出している日本企業の景況感は、今年に入り急速に悪化しているようだ。

企業へのヒアリングからは「中国の新型肺炎の影響で、輸出量がかなり減っている」(運輸・倉庫)や「新型肺炎により商品供給の不安定化が懸念される」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)など、企業活動に与える影響の広がりを心配する声が多く聞かれ、中国経済の一段の減速を想定している様子もうかがえる。

 

直接消費は1422億円減少の見込み、関連産業を合わせると2846億円の売上減少も

次に、訪日中国人の減少が日本経済に与える影響を見ていく。

中国からの訪日客数は2019年に約959万人に達し、訪日客全体の30.1%とインバウンド需要の最も大きなシェアを占めている。そのうち、中国政府が中国国内旅行会社に対して販売中止を命じた団体旅行及び飛行機と宿がセットになった個人パック旅行の割合が35.4%を占める。この措置にともなう2020年1~3月期の中国人訪日客による日本国内での消費額の減少は、前年同期間比で直接的に約1422億円となる見込みだ。

また、そこから波及する関連産業への影響は、約2846億円に相当する売り上げ減に及ぶと推計されている。とくに宿泊など「対個人サービス」が最大の売上減少となり、「商業」「飲食料品製造」「運輸」「対事業所サービス」なども大きく影響するとみている。また売上高から原材料費や仕入原価などの変動費を差し引いた粗付加価値額は約1491億円の減少が見込まれ、名目GDP(国内総生産)成長率を0.1%程度下押しする要因となるようだ。

さらに、中国政府は海外団体旅行及び個人型パック旅行の販売中止期間を定めておらず、この措置が4月以降も継続した場合に与える影響はさらに増大する可能性があることにも触れている。

 

事業継続に影響する感染症リスクの認識は4社に1社

今回の試算で日本経済における中国の存在は非常に高く、さまざまな産業に影響を及ぼすことが浮き彫りとなった。さらに悪いことに、中国武漢発のCOVID-19感染者が日本国内にも広がったことで、不特定多数の人が集まるイベントの中止や延期、アミューズメント施設の閉園、また日本各地で時間短縮営業などの動きが広がり、その影響は訪日中国人の減少によるものにとどまらない。同社の調査結果からも、日本企業の4社に1社程度しか感染症リスクが事業継続に影響するリスクであると認識していなかったことが明るみになった。

改めて企業における事業リスクへの備えや迅速な判断と対応への重要性が高まっていることが明らかになったと言える。