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コロナに揺れるインバウンド業界。先の見えない観光の未来を、旅人視点で見据えてみる

2020.03.25

新型コロナウイルスの勢いは加速し、日々刻々と変化する世界の有様に驚くばかりです。先週、ブルームバーグが「日本は十分に検査がされていないという批判がある」と記した上で、主要国の感染者数を示したグラフから日本を除いたことが一部ネット上で話題となりました。厳密な感染者数や致死率については、統計の取り方や対策が国によって異なるため、全貌が明らかになるのはこの戦いが終わってからになりそうです。

いづれにしても、フランス、スペイン、アメリカ、イタリアなど、国連世界観光機関の2019年のInternational Tourism Highlight 2019 Editionでも外国人観光客受入者数が多いとされる国で感染拡大が広がっており、世界規模で観光がどう復活していくのか読めない状況になっています。同機構は20日新たな声明を発表しました。観光業は最も打撃を受けた分野だとした上で、「今は家に留まろう。そして明日旅に出よう」とのメッセージを発信しました。

 

私自身、訪日旅行の受け入れをしているので、例年であればツアー中の桜の心配をしている時期ですが、今年はお客様を迎えることはできません。そこで、以前から欧米人にお勧めできそうだと気になっていた草津へ、スキーと温泉を体験しに行ってみました。そこで驚いたのは、素泊まりが可能な宿と若者の多さです。

卒業旅行の時期だったので、夕飯時の中心街は学園祭かのような賑わいで、飲食店には長い行列ができていました。 
草津温泉を始め群馬県の温泉地は「泊食分離」に力を入れていますが、その効果を目の当たりにし、日本人の旅行も多様化していることを実感しました。一泊二食付きで夕朝食の時間が決まっている従来型の旅館泊は、お宿の中だけで休暇が完結し、それはそれで心地良いですが、素泊まりの場合、時間とお金をどう使うか、旅の自由度が格段に上がります。

 

外国人に人気のスキーリゾート北海道ニセコで、週末36時間を過ごす提案をしたニューヨークタイムズの記事があります。その短いスノーホリデーは、金曜の午後1時半、築150年の古民家ギャラリーレストランの窓辺の席で、木立や山を眺めながら食事をとることから始まります。人気のスノーボードショップに、カフェやギャラリーを訪れ、夜にはバーで日本のウイスキーを楽しみます。温泉にラーメン、バーのカクテル、神社にお寺、最終日の午後には北海道自慢の乳製品で作られたスイーツを堪能することも忘れません。短い時間でも、一つの目的に固執せず、興味の赴くままに過ごす休暇のあり方が見えてきます。

草津で見た風景を思うと、雪山に行ったなら大半の時間をゲレンデで過ごしてしまう私のような旅人は今後減少し、日本人の旅行も、もっと気まぐれでわがままになっていきそうです。地域全体で魅力的な引出しの多い観光地が、日本人外国人を問わず選ばれて行くことになりそうです。

 

春スキー&スノーボードが可能な北海道で、19日に非常事態宣言が解除されました。全身をウエアで包み、ゴーグルと手袋を装着して、屋外で過ごす時間の長いスノーリゾートでは、比較的感染リスクは低いだろうと思っています。次は、これまで外国人に人気すぎて敬遠していた北海道のスノーリゾートへ、今後の観光のヒントを探しに行ってみたいと思っています。まずは自分が旅に出ることが、観光復活に向けての第一歩であると信じて。 

 

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