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【コロナ:世界の動きまとめ】台湾、韓国など。アジアの国も続々と次のフェーズへと動き出す

2020.05.01

日本では緊急事態宣言が1カ月程度延長される方針との発表があり、海外からの入国拒否対象国も4月29日より新たに14カ国追加されるなど、まだまだ緊張状態が続いている。一方で新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きはじめたアジアの国々では、次のステージへと移行する動きが出るようになった。行楽シーズンのアジアの国々の動きをお伝えする。

 

台湾:新型コロナ感染拡大の優等生、「防疫新生活運動」スタートへ

4月30日、台湾の中央感染症指揮センターは、国内での感染が落ち着いてきているのに伴い、国民の生活が徐々に通常に戻れるよう「防疫新生活運動」をスタートさせる方向であると発表した。

台湾では、これまでに確認されている新型コロナ感染者数は429人、死亡者数は6人と、感染拡大の発生とみられる中国から近い距離にありながら、感染者・死者ともに少なく抑えられている。

台湾の初動は早かった。12月末に中国が世界保健機構(WHO)に新型肺炎の報告をすると、すぐさま対策をスタート。12月31日には、武漢-台湾の直行便の乗客に対して、機内検疫の実施を発表。中国政府が中国から海外への団体旅行禁止措置を開始した1月27日よりも早い、24日の段階で同様の措置を実施。2月6日には中国全土からの入国を禁止3月19日からはすべての外国人の入国を禁止するなどの水際対策をとっている。

台湾ではオフィスへの通勤に関しても通常通り行われており、学校も旧正月休みの延長という形で一律休校措置が取られていたが、政府より発表された感染者が学校内で確認された場合の「休校の基準」をもとに、2月25日から新学期が再開している。

「防疫新生活運動」が始まると、これまで通り、手洗いやマスクの着用など感染防止のための措置はとりながら、屋外型の音楽イベントや、芸術文化舞台、スポーツ大会への参加や、ピクニック、運動、旅行などの活動ができるようになるという。その他、適当な距離がとられ、仕切板があったり、セットメニューを提供するレストランや露店での食事も楽しむことも期待できるという。開始時期は近く公表される。

また、台湾中央感染症指揮センターは、当初2020年4月末までとしていた「中国と台湾を結ぶ航空路線の縮小」と「台湾での航空便の乗り継ぎの禁止」の措置を継続すると発表した。措置の終了日は現時点で未定となっており、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みて判断するという。

 

韓国:「K防疫」が世界水準になっていく?

新型コロナウイルス対策で世界から高い評価を得ている韓国は4月30日、前日の新型コロナウイルスの新規感染者がゼロ(海外からの流入を除く)になったと発表した。2月のピーク時には1日最大で900人を超えていたが、72日ぶりにゼロを記録し、少しずつ日常を取り戻しつつある。文在寅(ムンジェイン)大統領は、早期のPCR検査による隔離治療が奏功した自国の新型コロナウイルス対策を「Kポップ」になぞらえて「K防疫」と銘打ち、「防疫当局と医療陣の献身と国民の協力が力になった。『K防疫』が世界標準になる」と韓流の感染対策をアピールした。4月30日からの大型連休では、済州島などへ向かうリゾート客でソウルにある金浦空港の国内線ターミナルが賑わう様子が報じられている。

 

ベトナム:感染による死亡者0人、国内旅行の需要が徐々に回復

ベトナム政府は4月24日、社会的距離の制限を解除することを発表した。ベトナムでは、新型コロナウイルス感染症による死亡者数がゼロとなっている。ベトナムの観光業界は現在、国内旅行市場の回復を目指して準備を進めている。ベトナムのレストランは再び活気を取り戻し、LCCのベトジェットはハノイ=ホーチミン間を毎日6往復するなど、国内旅行の需要が徐々に回復してきていることが報じられている。

一方で、ベトナム総統計局の発表によると、4月のインバウンド観光客数は約2万6000人で、前月比94.2%減、前年同期比98.2%減となった。また、国連世界観光機関(UNWTO)によると、2020年のベトナムへのインバウンド観光客数は新型コロナウイルスの影響により20〜30%減少すると予測されており、インバウンド業界は当面厳しい状況が続きそうだ。

こうした中、ベトナムの観光業界では従来型の銀行ローンではなく、クラウドファンディングによる資金調達が注目を集めている。ベトナムでトレッキングサービスを提供するツアーオペレーター「Sapa Sisters(サパシスターズ)」は、これまでにガイドした顧客に電話をかけ、クラウドファンディングで900名を超える支持者から3万1400ドル(約340万円)以上を調達し、オフィスの家賃や人件費、雑費などの固定費に充てるという。

 

タイ:ロックダウン緩和間近、中国からの観光客の再来を期待

タイでは5月1日より国内のフライトを再開し、政府が搭乗の際のガイドラインを発表した。それによると乗客は搭乗から降機するまでの間、常にマスクを着用する義務がある。チェックインの際にマスクを着用しておらず、手に入らない人に対しては搭乗を拒否するという。機内での飲食は禁止され、航空会社は乗客間に少なくとも1つの空席を設けることで、フライトの収容人数を制限する必要がある。

タイ商工会議所大学の調べによると、タイでは観光産業だけで600万人が失業すると予測されている(同国の総人口は約6600万人)。観光はタイの経済にとって重要な産業で、直接的な観光収入は国のGDP(国内総生産)の15〜18%を占め、観光業に付随する他の全てのビジネスを含めると最大で21%となる。タイ商工会議所大学はさらに、「6月末までにパンデミックが収まらなければ、失業者数は1000万人に上昇する可能性もある」と発表している。

一方で、タイでは4月初旬から感染率が頭打ちになっていることから、今後数週間でロックダウン規制が緩和されるのではないかと予想されている。中国人観光客に人気の渡航先となっているタイの観光事業者は、国境が開かれ、国際的な旅行制限が解除された後には、中国から再び多くのインバウンドが来訪することに期待を寄せている。

 

香港:観光地としてのリカバリーは未だ不透明

昨年の大規模なデモに続き、新型コロナによる影響で、国内の重要な基幹産業の一つである観光が大打撃を受けている香港。観光業関係者約1500人が参加する年次会議がライブストリーミングで行われ、香港政府観光局のパン・ユウカイ会長が今後の観光業に見通しについて発言。「香港の観光業は、世界各国の出入国禁止など厳しい規制措置と航空路線の中断に直面しており、リカバリー期に入ってもV字回復は難しい」との見解を示した。

中国本土の状況については、「経済活動も再開され、人々の生活も通常に戻りつつある。彼らは今後、より“健康と自然”を重視するようになるだろう」とコメント。旅行の目的地を選ぶ際に、より価格を意識し、健康へのリスクが低いものを好むようになるであろうことから、しばらく中国国内を旅行する人が増えるであろうと述べた。さらに香港からのアウトバウンドについても、年内の再開はない可能性がある、と付け加えた。

 

その他:リスク回避のための客室乗務員の保護服を開発

新型コロナウイルスの影響により、世界各国で外国人の入国禁止・制限の措置が拡大ししている。こうした中、航空会社各社では感染の疑いのある人々を含む本国送還や救急飛行に対応するべく、リスクを回避するための客室乗務員の保護服が開発されている。

マレーシアの格安航空会社(LCC)のエアアジアは、ロサンゼルスを拠点とするフィリピン人ファッション・デザイナーと共同で、客室乗務員用の保護服を開発した。

頭からつま先までをカバーし、フェイスシールドとN95マスク顔面の開口部に取り付けられているこの保護服は、救急飛行にの使用されるという。エアアジアでは、4月29日よりマレーシア国内線の飛行を再開しており、外国人の入国措置を延長しない国への国際線は5月中の再開に向けて準備を進めている。

[caption id="attachment_38280" align="alignright" width="221"] △新型コロナウイルスの感染リスクに考慮したフィリピン航空の保護服[/caption]

フィリピンのナショナル・フラッグ・キャリアであるフィリピン航空でも、客室乗務員が保護服を着て業務にあたっている。同社は4月と5月にマニラからニューヨークとロンドンへの特別便を飛ばしているため、客室乗務員を新型コロナウイルスの感染リスクから守るための対策となる。

(やまとごころ編集部 外島美紀子、深谷昌代)

 

 

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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各国・地域の入国規制まとめ_2020,05.01更新


 

 

※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】

 

 

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