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【コロナ:世界の動きまとめ】『Go To トラベル』不安と共にスタート。中国では4カ月ぶりに国内旅行制限を解除

2020.07.22

日本では、国内旅行を対象に宿泊および日帰り旅行の費用を政府が半額補助する『Go To トラベル』キャンペーンが22日より開始されたが、都市部を中心に新型コロナウイルス感染症が再拡大する中でのキャンペーン実施に、波紋が広がっている。こうした中、他国ではどのように観光再開が進められているのだろうか。中国の例を中心に紹介する。

 

二転三転『Go To トラベル』、キャンセル料は政府が補償

新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた観光業の回復に向け、7月22日から政府による『Go Toトラベル』キャンペーンが開始された。しかし、一旦落ち着いたと思われた感染者数が東京都を中心に再び増加していることを受け、政府は東京発着の旅行を同キャンペーンの対象外とすると発表。政府は当初、東京を対象から外したことで生じる旅行のキャンセル料を補償しないとしていたが、地方自治体や与野党からの批判が相次ぎ、一転してキャンセル料を補償することを決定した。キャンペーン開始を公表した7月10日から、東京を対象外とすることを表明した17日までの間に旅行を予約した人を対象とするという。

キャンセル料については、利用者が直接政府に請求するのか、旅行会社を通じて支払われることになるのかなど詳細はまだ決まっておらず、現場は混乱している。

また旅行者側も戸惑いを感じている。四国へ旅行し現地からしばらく仕事もするワーケーションの計画を立てていた東京都内の会社員(42)は、「仕事も絡んだ旅行なので予定通り行くつもりだが、東京から来たというだけで病原菌扱いされるのではないかと心配だ」と話した。

 

知事、東京都民へ不要不急の外出を求める

21日、東京都の小池百合子知事は、東京都内での新型コロナウイルスへの感染者数が再び増加していることを受け、東京都民に対して23日からの4連休は不要不急の外出を自粛するよう呼びかける予定であることを明かにした。東京都では7月2日以降、7月8日を除いて連日、100〜200人台の新たな新型コロナウイルス感染者が確認されている。

 

『Go To イート』は8月下旬スタートへ向け準備

需要喚起のため1兆6794億円の補正予算を投じて実施される『Go Toキャンペーン』は、旅行喚起のための『Go To トラベル』の他、イベントなどのエンターテインメントを2割相当補助する『Go To イベント』、商店街などで使える地域共通クーポンを配布予定の『Go To 商店街』、外食需要喚起策の『Go To イート』の4つで構成される。

その内、『Go To イート』 キャンペーンを早ければ8月下旬に始める見込みであることを、江藤拓農相が21日の閣議後の記者会見で明らかにした。『Go To イート』では、外食産業を支援するために、食事券を25%のプレミアム(上乗せ)付きで発行する。ウェブサイトで飲食店を予約した場合は次回使えるポイントを昼食で500円分、夕食で1000円分付与する予定となっている。

 

中国:5月の連休には1億5000万人が国内旅行

4月上旬に武漢市の都市封鎖が解除されて以来、中国では新型コロナウイルスに伴う各種の規制を緩和し、日常生活を取り戻している。中国政府の文化観光部によると、5月上旬の5日間の連休には約1億5000万人が国内を旅行したという。観光客数は昨年同時期と比べて60パーセント減だったというが、売り上げは476億元(約7272億円)に上った。現在、中国の主だった観光スポットでは、事前予約をしてから訪れることが一般的となっている。

 

空港や駅、観光スポットでの入場に求められる「健康コード」

また、中国ではAIやビッグデータ分析を感染収束や事業再開に向けて活用されている。その始動は早く、1月20日には大手通信会社によるビッグデータ分析チームが立ち上がり、政府へのデータ提供が開始。2月3日の新型肺炎対策会議において、中国政府は感染収束や事業再開に向けAIやビッグデータの活用を正式に決定している。

経済を再開させるに当たり広く市民に浸透したのが、アリババやテンセントが開発した感染の可能性の有無を色付きQRコードで表示する「健康コード(健康碼)」だ。ユーザ(住民)はAlipayやWeChat Payなどの決済サービスを通じて自身のスマートフォンにアプリをインストール。身分証明書番号や過去14日以内に高リスク地域に立ち入ったか、発熱など体調不良はあるか、などの質問に回答する。合わせて、地方政府に集められた病院での診察データや監視カメラの情報、スマホのGPSから集まる位置情報、感染者との濃厚接触などを判定し、AIが感染の可能性を判断し、赤「感染」、黄「濃厚接触の疑いまたは隔離が必要」、緑「問題なし」の3色のQRコードで示す。

アプリの利用は強制ではないものの、中国の空港や駅、商業施設、飲食店などの入り口ではQRコードの提示が求められ、場所によっては提示しないと入場が認められない所もある。「健康コード」が広く浸透していることで、感染者が発生した場合も、行動や濃厚接触者の追跡ができる仕組みとなっている。

北京では6月16日、クラスター発生のために、警戒レベルを引き上げ学校なども閉鎖したが、新たな感染者が13日連続で確認されなかったことで、7月20日から再び引き下げられた。これにより500人規模の会議の実施や、展示会、スポーツイベント、映画館などが再開された。

 

国内旅行の販売解禁により、検索も急増

中国文化観光部は14日、『文化と観光部門の旅行企業営業の再開の拡大についての通知』で、国内旅行の解禁を発表した。これによると、新型コロナウイルス対策の徹底を条件に、旅行会社は国内団体旅行および「航空券+ホテル」を組み合わせた商品の販売を再開することができる。ただし、中、高リスク地域では「航空券+ホテル」業務を再開することができない。

観光地は「人数制限」「事前予約」「集中の回避」を徹底することを条件に、入場者制限をこれまでの定員30%から50%に緩和した。この発表は4〜5カ月間苦境に立たされ続けてきた旅行業界のみならず、旅行を楽しみにしていた観光客にとっても朗報となり、大手観光プラットフォームでは中国国内ツアーの検索数が激増しているという。

 

旅行のトレンドは「近場」「一人旅」

そんな中、中国の大手オンライン旅行会社「シートリップ(Ctrip)」は、「2020年夏休み旅行消費報告」を発表した。これによると、今年の夏休みで人気の高い旅行先トップ10は上海、広州、成都、杭州、深セン、重慶、西安、昆明、南京、鄭州の順となっている。旅行の傾向としては省内や市内といった近場を訪れる人が多く、旅行のスタイルは一人旅が人気で、中でも女性の旅行者が多いという。また、ドラマや映画のロケ地の人気も高かった。

 

上海国際空港、利用者数も前年の8割まで復活

上海虹橋国際空港では今月の10日以降、1日当たりの国内線の便数がほぼ前年同期と同水準にまで回復しているという。また、同空港の利用者数も1日延べ10万人となり、前年同期の8割以上にまで戻った。上海浦東空港も5、6月で国内線を利用する旅客数が増加の一途をたどっており、今後も回復傾向が続くと予想されている。

 

国内線乗り放題の航空券も続々登場

中国では航空各社が国内線乗り放題チケットの販売を始め、話題となっている。
乗り放題航空券を「週末随心飛(週末に気のままに飛ぶ)」という名称で、一番初めに売り出した東方航空では、6月18日の発売から10日間ですでに10万セットが売れたという。このチケットは週末限定で、年末までの期間、国内便(香港·マカオ·台湾線を除く)のエコノミークラスが乗り放題となる。

中国国内最大の民間航空会社とされる春秋航空は就航15周年を記念し、2999元から3999元(約4万6000円〜6万円)で年内国内線乗り放題となる航空券を7月中旬に発売すると発表した。今年の年末までの期間、中国国内線(香港、マカオ、台湾への往来を含む)に何度でも搭乗できるという。

 

香港:40万人を対象とした無料のPCR検査で感染拡大防止を目指す

香港政府は新型コロナウイルス感染症の再拡大を受け、老人ホームの入居者と職員、飲食業者、不動産管理業者、タクシー運転手など感染リスクの高い約40万人を対象に、無料でPCR検査を実施すると発表した。できるだけ早いタイミングで感染者を特定することで、今後の感染拡大防止につなげていきたい考えだ。

香港ディズニーランド・リゾートは、7月15日から再度の閉園をしている。6月18日に営業を再開したばかりだったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたものとみられる。

 

タイ:市中感染ゼロを継続、国内観光支援キャンペーンを実施

タイ政府は、国内観光支援キャンペーン「ラオティアオドゥワイカン」を15日より実施している。専用のウェブサイトで登録すると、宿泊費や航空券代が40%割引となるほか、食事券や旅行券を無料で取得できるという。タイでは、国内の市中感染ゼロが55日間続いており(7月19日時点)、厳しい制限を設けた新型コロナウイルス対策が少しずつ緩和されつつある。

 

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