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【コロナ:世界の動きまとめ】パンデミック後の航空業界は、ビジネス客減少でチケット急騰? 第2波の本格化を懸念する欧州各国

2020.08.16

例年なら移動する人が多いお盆期間も、今年は各交通機関とも激しい混雑はなく静かなものとなった日本。新型コロナウイルスの拡大もなんのその、多くの人がバカンスに出掛けた欧州では、新規感染者数が増加している。海外渡航制限を緩和させたアメリカに対して、年末までの国境封鎖を望むカナダ国民。新型コロナウイルスに揺れる世界各国の様子をお伝えする。

 

厳しい状況続く航空業界。航空チケットは2倍の値段に…

新型コロナウイルスのパンデミックで各国が国境を閉鎖する中、世界中の航空会社は苦境に立たされている。海外出張で飛行機を利用するビジネス客の数は今後減少すると見られており、航空券の料金が急騰するとの見方もある。つまりビジネス客が減ることで、海外旅行者の航空代金が上がるということだ。一部の専門家からは、「飛行機に乗る人が半分しかいなければ、チケットは2倍の値段になる。今後旅行は裕福な人々だけに許される活動になるだろう」との声も上がっている。

IATA(国際航空運送協会)の予測によると、航空需要がコロナ前のレベルに戻るのは2024年。世界の航空業界はこれをどう乗り切るのか、刻一刻と対策を迫られている。

 

アメリカ政府は海外渡航制限を緩和

アメリカ政府は6日、国民に対する海外渡航制限を緩和することを発表した。これまでアメリカ政府は国民に対して海外旅行を避けるよう厳重に呼びかけていたが、現在の状況では一律の勧告は妥当ではないと表明。海外への渡航勧告は4段階のレベルに分けられており、中国は「渡航禁止」のレベル4、日本、イギリス、フランス、ドイツは「渡航を再考してください」のレベル3、台湾とオーストラリアは最も危険度の低いレベル1となっている。

世界の多くの航空会社は現在、乗客の安全性を高めるためにミドルシートの使用を禁止しているが、一部にはすでにこれを停止している航空会社もある。一方で、アメリカンエクスプレスが行なった最新の調査によると、アメリカ人の63%は追加料金を支払ってでも座席を1つ空けてほしいと考えていることがわかった。ミドルシートの使用については航空会社によって対応が異なるため、事前に確認する必要がある。

 

アメリカ=カナダ間、カナダ人の8割が「年末まで国境閉鎖を希望」

1日の新規感染者数が5万を超すなど、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないアメリカと、隣国カナダ間の国境は8月21日まで閉鎖する予定となっている。カナダ国民は感染者数の多いアメリカからの来訪に不安を抱いており、国境閉鎖はその後も延長されそうだ。グローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスが行なった世論調査によると、カナダ人の10人に8人が2020年末まで国境を閉鎖したままにすることを望んでいることがわかった。

現在、アメリカ、カナダ間での旅行は禁止されているが、生活に必要な商品を届けるためにドライバーがアメリカからカナダへ入国することは許されている。しかし、アメリカのナンバープレートで入国すると嫌がらせを受けたり、時に車を破壊されたりといった事件が相次いで報告されているという。

 

ヨーロッパ各国、第2波が本格化する懸念

欧州(EU)では新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、閉ざされていた国境を6月15日から再開。EU内ではパスポート審査なしで行き来できるようになっており、EU域外からの受け入れも少しずつ再開させている。しかし、現在はスペインやフランス、ドイツなどで新型コロナの感染者数が増えており、「第2波」が本格化すれば再び移動制限などの措置がとられる懸念も出てきている。

 

スペイン:非常事態宣言解除、2週間後から再び感染者が増加

14日、スペインの新規感染者は2,987人となり前日の2,935人に続き、増加が続いている。スペインでは3月~4月に新型コロナウイルスが猛威を振るい、最多を記録した3月20日には新規感染者は10,851人だった。ロックダウンを実施することで、6月の1日あたりの新規感染者数は100人~400人に抑えられていたが、感染者は7月上旬より再び急増し始めている。6月21日に非常事態宣言を解除し、国境封鎖・入国規制の段階的な解除を始めてから2週間経った頃からのことだ。

スペイン政府は14日、2メートル以上の距離が確保できない場合は、屋外や公共スペースでの喫煙を禁止すると発表した。EUでは屋内での喫煙が禁じられているため、喫煙者には厳しい措置となる。また、ナイトクラブやディスコに休業を要請、路上での飲酒も禁止する。レストランやバーは午前1時までの閉店が義務付けられる。

 

経済危機に直面するスペイン、6月の観光収入は97%減

 国立統計研究所の調べによると、2020年の上半期にスペインを訪れた観光客は約1100万人で、前年同期比71.7%減となった。6月は特に影響が大きく、観光収入は前年同月比97.7%減少した。昨年のスペインでは観光業がGDPの14.3%を占めており、経済危機への懸念が高まっている。

 

フランスの新規感染者が3日連続2,500人超、2カ月ぶりの高水準に

フランスでは14日、新規感染者は2,846人となり3日連続2,500人以上を超えている。同日、フランス政府はパリとマルセーユ周辺のブーシュデュローヌ県を感染リスクの高い地域として指定。これにより、地元当局が人や車の移動、公共交通機関や航空機の利用、公共の建物への立ち入りを制限でき、感染リスクが高い施設を閉鎖することができるようになった。パリとマルセーユなどでは、公共交通機関や商業施設などの屋内や、屋外でも混雑する場所でのマスクの着用が義務付けられており、違反すると135ユーロ(約17,000円)の罰金が科せられる。

パリ市当局は、パリ広域を含むフランス全土で新規感染者数が増加していることを受け、4月5日から11月15日に日程を変更していた同市のマラソン大会を中止すると発表した。

 

ドイツ:バカンス客が海外から戻ってきた頃から、新規感染者が増加

ドイツの感染症対策を担う政府機関ロベルト・コッホ研究所は13日、新型コロナウイルスの新規感染者数が1,445人になったことの原因について言及。他国へバカンスに行き戻ってきた帰国者や行楽客、パーティーや家族の集まりなどにより、感染が拡大していたのではないかと分析している。

ドイツでは、4月は1日あたりの新規感染者数が6,000人を超えていたが、5月以降は数百人に減少。しかし、バカンスシーズンが始まる6月半ばからEU各国との国境が再開し、バカンスに行っていた人々が戻ってきた7月半ば以降から再び、新規感染者数が増加。国内各地で感染者数が増加している。

 

オランダ:ミンクにも感染拡大、60万匹を殺処分

オランダでも新規感染者数が急激に増加しており、これまでに6,100人以上が死亡したと発表。野党は政府の新型コロナウイルス対応を批判している。同国の公衆衛生当局が11日に発表したデータによると、過去1週間の新規感染者数が4,036人に上り、前週に比べて1,448人増加している。

また、オランダは中国、デンマーク、ポーランドに次ぐ世界第4位のミンクの毛皮生産国であるが、毛皮用に飼育されているミンクの新型コロナウイルスへの感染率が上昇している。ミンクを飼育する17の農場で、感染例が確認され、これまでにオランダで飼育されている80万匹のミンクのうち約60万匹が殺処分されたという。従業員2人もミンクから感染した疑いがあるとみられている。

 

ベルギー:フランス、スペイン、スイスの一部地域への旅行を禁止

ベルギー政府は、新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加しているフランス、スペイン、スイスの一部地域への旅行を禁止した。これらの国から到着するすべての人に検疫とスクリーニングが義務付けられている。ベルギーのこれまでの感染者数は7万人以上、死亡者は9000人以上となっている。

また、ベルギーの首都ブリュッセルや、アントワープ市、およびアントワープ州などではコロナウイルス感染者が増加しており、再度のロックダウン発動を回避するために行動制限が厳しくなっている。ベルギーでは、各自治体(コミューン)ごとに規制することができるため、首都ブリュッセルなどでは公共の場でのマスク着用を義務化。オランダと国境を接するアントワープ州ではマスク着用に対して、レストランで着席している時はマスクを外しても良いが、席を立つ際にはマスクをしなければならないなど拡大して義務化。また、客の連絡先の記録や23時までに閉店。23時半から翌朝6時までの外出規制や、スポーツジム閉鎖などの措置も行っている。

 

イギリス:スペイン、フランスなどからの入国者に2週間の自己隔離を復活

このような欧州での感染者の増加を受け、イギリス政府はスペインやベルギーなどからの入国者に2週間の隔離を再び義務づける措置をとっているが、フランスやオランダ、モナコ、マルタ、タークスカイコス、およびアルバからの入国者に対しても15日から同様の措置を義務づけることを発表した。

イギリスでは6月8日以降、海外からの入国者には2週間の自主隔離を求め、違反者には罰金を科す厳しい措置をとっていたが、航空業界が反発。7月10日以降、日本を含む59の国や地域と在外英領14カ所からの入国者への規制が緩和され、これらの国からの入国者には2週間の自主隔離が免除されている。

フランスには約16万人のイギリス人が夏休みで滞在しているが、今回の政府の発表を受け、2週間の自主隔離が義務付けられる前に帰国しようと、急ぎ予定を変更して帰国する数千人のイギリス人の姿があった。

この発表を受け、14日のイギリスの株価は航空株を中心に下落。景気後退が再燃することを市場が懸念しているためとみられる。

 

飲食業の需要喚起策がスタート、外食が50%割引に

イギリス政府は飲食業の需要喚起策として、8月3日〜8月31日までの限定で「Eat Out to Help Out」キャンペーンを行っている。これは、月曜日から水曜日の終日、キャンペーンに参加した飲食店で外食すると全フードメニューとソフトドリンクメニューが半額で提供される(1人上限10ポンドまで)というもの。利用者側はクーポン等を使う必要がなく、他のオファーや割引と併用できる。また店舗側は、売上の記録を提出すれば割り引いた額が政府から支払われるというシンプルな仕組みとなっている。このキャンペーンの恩恵を受け、中には「キャンペーン前の3倍程度のお客さんが来ている」という店舗もあるそうだ。

 

ロシア:世界で初となる新型コロナウイルスのワクチンを承認

ロシアが新型コロナウイルスのワクチンを承認したことに対し、他国からは効果や安全性について疑問の声があがっている。ドイツのスパーン保健相は、世界初というのが重要なのではなく、安全できちんとした臨床試験が行われたワクチンを開発することが重要だと指摘している。

 

オーストラリア、ニュージーランド間のトラベルバブルが延期に

オーストラリア=ニュージーランド間で予定されていた「トラベルバブル」は、オーストラリアのビクトリア州で再び感染が拡大していることを受け、少なくとも年末まで延期されることが決まった。ニュージーランドのアーダーン首相はオーストラリアとのトラベルバブルについて、「数カ月後に延期されるだろう」との見解を示している。

 

ニュージーランド:102日ぶりに新規感染者

一方、新型コロナウイルスの封じ込めに成功したと称賛されていたニュージーランドでも102日ぶりに同一家族の4人の新規感染が確認された。これを受け、最大都市のオークランドで再びロックダウンを行い、レストランやバーなどの店舗、学校の大半が閉鎖されるほか、10人以上での集会が禁止された。また、全土に対して、移動制限が敷かれた。

衛生当局者らは貨物を通じてウイルスが同国内での感染が広がった可能性があるとみて、調査を進めている。

 

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