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新型コロナウイルスからの観光復興に向け5つの優先領域 国連が提示、SDGsを踏まえた経済発展などを強調

2020.09.02

国連が8月25日、観光と新型コロナウイルスに関する政策概要とグテーレス事務総長による声明を発表した。

国連事務総長が観光復興へ5つの優先領域を提示

事務総長は声明で、観光業の再建が我々の責務であること、またその再建は安全で公平、かつ気候変動に配慮した形であることが不可欠と強調した上で、観光復興に向け5つの優先分野を提示した。まず、第1に危機下での社会経済的影響の緩和。次に、観光バリューチェーン全体の回復力を構築すること、第3に、観光産業におけるテクノロジーの活用を最大限に進めること。第4に、サステナビリティーと環境分野での成長を推進すること。最後に、観光での持続可能な開発目標(SDGs)をさらに支援できるようパートナーシップを育成することだ。

観光産業と生物多様性の関係

政策概要によると、観光産業は自然・文化遺産保全の重要な柱にもなっている。世界の観光の7%は野生生物の観光に関連しており、アフリカでは、保護区の入場料として推定1億4200万ドルを生み出していた。観光収入の減少で、保護区とその周辺では密漁や生息地の破壊が増えているほか、多くの関連地元企業や世界遺産登録地の閉鎖により、地域に欠かせない生計手段が失われている上、生物多様性危機の悪化が危惧されている。

先住民族や無形文化遺産、世界遺産への影響

また先住民などにとって観光は所得創出の主な手段となっている。これまで文化的産業は2兆2500億ドルの年間総収益と2500億ドルを超える輸出を生み出していたが、市場の閉鎖や伝統的な祭りなどの多くの無形文化遺産の慣行も中止または延期されていることで大きな打撃を受けている。また、世界遺産や博物館も観光収入に大きく依存しており、訪問者の減少は運用予算に直接的な影響を与えている。90%の国々がパンデミックの際、世界遺産を閉鎖し、観光収入に依存するコミュニティに多大な社会経済的影響を与えた。美術館なども、その90%が閉鎖され、うち13%は再開される見込みがないと言われている。

一貫した安全衛生ガイドラインが不可欠

今後、全ての観光産業において、適切な安全衛生プロトコルの伝達と実施が、旅行者、労働者、受け入れ地域の安全を確保し、信頼関係を築く上で不可欠となる。各国で一連のガイドラインが作成されており、国際労働機関 (International Labour Organization)の「安全な職場復帰:COVID-19防止に関する雇用者向けガイド」では、関連する保健当局と労働当局が発行した一連の詳細な行動と推奨事項を提供している。

デジタル化の重要性と使い捨て衛生用品による環境負荷への配慮

またデジタル化は、ホテルでの電子チェックイン、タッチレス国境管理など無駄を最小限に抑えながら安全とセキュリティを向上させることを可能とする。必要とされる安全上のプロトコルの実施により、マスク、手袋、食品包装などより多くの廃棄物につながる可能性があるので、それを十分に考慮した上での健全な管理の効率化が求められる。

あらゆるレベルでの連携が鍵

将来的に、SDGsを達成するために、あらゆるレベルでのパートナーシップを構築することが不可欠となる。国と地方自治体の間の一貫した協力体制、航空、陸上および海上輸送をはじめとする強力な官民パートナーシップなどセクター間の調整を強化し、受け入れ地域住民の平穏な暮らしを脅かさないことを念頭に、対応していくことが大切となる。

(やまとごころ編集部)