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コロナ禍で航空便での都市間の接続が大幅減少、世界で最も繋がっているのはどこ?

2020.12.08

新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界の航空路線は様変わり。上海が世界で最も航空路線で繋がった都市になった。

IATA(国際航空運送協会)の調査によると、今年初めには航空便で接続されていた1万9300以上の2都市間の路線のうち、約7000が現在航空会社の運航スケジュールに含まれていないという。

国内路線の豊富な中国、アメリカがトップ10を占める

従来、世界でも有数の国際路線を持つ都市が、新型コロナウイルス感染症のせいで、多くの接続性を失った。たとえば、IATAによると、2019年9月に世界で最も繋がっていた都市ロンドンはこの1年間で接続性が67%低下し、2020年9月の調査では8位に陥落。世界第3位だったニューヨークは接続性が66%低下、5位だった東京は65%低下し、それぞれトップ10圏外に落ちた。他にもバンコク(同81%減)、香港(同81%減)、ソウル(同69%減)がトップ10圏外になった。

代わりに上位を占めたのは、上海、北京、広州、成都の中国の4都市で、6位にも深圳が入っている。また、トップ5以下にシカゴ、ロサンジェルス、ダラス、アトランタとアメリカの4都市が入った。中国、アメリカとどちらも広大な土地を持ち、国内航空路線が数多いためであり、国際的な接続が停止された結果が如実に表れているといえるだろう。

IATAの上級副社長であるセバスティアン・コミスは、「順位の変動は接続性が向上したためではない。全市場で接続性は減少したが、一部都市では他の都市よりも減少幅が大きく、順位が入れ替わった。つまり、ここには勝者はなく、痛手の少なかった者がいるということだ。人々を結びつけ、市場をつなぐというこの1世紀の進歩がこんな短期間で失われてしまった。この調査からわかるのは、すぐにでも国際的な航空運送ネットワークを再構築する必要があるということだ」と語った。

地域別ではアフリカ、欧州に打撃大きく

IATA接続指数によると、地域的にはアフリカの接続性が93%減で最も打撃を受けた。アジア太平洋は76%の減少だっだが、国内線が発達している中国、日本、韓国は打撃が少なく、一方で国際観光に大きく依存するタイはより打撃が大きかった。

ヨーロッパは93%の減少だったが、ロシアは西ヨーロッパよりは減少率が少なかった。中東諸国では88%の減少だが、唯一カタールは国境の閉鎖にもかかわらず、トランジットを許可し、航空貨物の重要なハブとしての地位も保持した。

北米では73%の減少で、特にカナダ(85%減)はアメリカよりも打撃が大きかった。ラテンアメリカでは91%の減少だった。

 

航空路線の接続性低下は世界経済の回復を脅かす

新型コロナウイルス感染症が発生する前までのこの20年間に、空路で直接繋がった都市の数は2倍以上になり、旅費は大幅に減少し、その分、旅行者は増えた。航空輸送は世界経済の主要な原動力となっており、8770万人の雇用とGDPの4.1%にあたる3.5兆ドルが航空によって支えられていると言われている。IATAによれは、2019年の航空旅行者は観光に8550億ドルを消費したが、2020年は3470億ドルに減少するだろうと推測している。

日本ではビジネストラック、レジデンストラックの運用開始で徐々に国際線の運航が再開されているものの、本数はまだまだ限られている。航空路線の本格的な再開のためには発着都市双方の感染状況も大きく影響するだけに、国際線の今後を予測するのは難しい。一方、国内線は旅行需要の回復とともに便数も増加傾向にあり、たとえばANAの11月の減便率は29%で、10月の43%から大幅に改善した。