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東南アジアで感染拡大、制限強化に政府非難の声高まる。タイのサンドボックス制度で1万人が入国、金メダル選手凱旋帰国

2021.07.28

タイで感染者数が過去最多を更新、政府のコロナ対応に批判集中

タイの保健当局は7月26日、1日当たりの新規感染者が過去最多の1万5376人に上ったと発表した。この日の死者は87人だった。首都バンコクでは7月12日から夜間外出禁止令を出し、県をまたぐ移動を制限するなどの措置をとっているが、感染力の強い変異株「デルタ株」によって感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。24日には日本人1人の死亡も確認された。

医療機関のひっ迫は深刻化しており、バンコクでは人員や防護服が不足する中、救急隊の到着が遅れたことで死亡した例や、感染が疑われる路上生活者の死亡も複数報告されているという。政府はロックダウンを強化、プラユット首相はフェイスブックで「危機のターニングポイントにある」と訴えている。

同国はこれまで、比較的感染を抑え込んできたことで知られているが、今年4月中旬頃より感染者が急増し、ワクチン調達の遅れなどをはじめとする政府の対応に、国民から批判の声が高まっている。これを受け同政府は、ワクチンを共同購入し、途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」への参加を急きょ決定した。同国のワクチン接種率は、1回接種した人が全人口の18.94%、ワクチン接種を完了した人が全人口の5.6%(7月26日現在)にとどまっている。

 

隔離なしで外国人観光客受入「サンドボックス」1万人以上が入国

プーケットで7月1日からスタートしたワクチン接種済みの外国人観光客を隔離なしで受け入れる「サンドボックス」制度だが、プーケットでの感染拡大を受けて、一次中断の可能性も出ている。7月27日までの直近1週間で新たに125人の感染者が報告されたが、これは政府が設定した一次中断の条件「週90件以上」を超えている。なお、これまでにサンドボックス制度を利用した入国者は累計で1万人を超えており、制度を利用した入国者のうち16人が陽性となっている。(サンドボックス制度の詳細はこちら

なお、同制度の対象となる国は低・中リスク国のみで、高リスク国に分類されている日本は当初制度の対象外だった。しかし、「ビジネス目的に限る」との条件付きで現在は、同制度の対象国になっている。

また、東京オリンピックの女子テコンドー49キロ級で金メダルを獲得したタイ代表のパニパク・ウオンパタナキット選手も726日、他のテコンドー代表チームと共にタイのプーケット空港を利用して帰国した。

 

マレーシア、首都圏中心に感染拡大が深刻化

マレーシア政府は7月25日、1日当たりの新規感染者が過去最多の1万7045人に上ったと発表した。同国では6月28日にロックダウンを無期限で延長しているが、デルタ株の流入により、首都圏を中心に感染拡大が深刻化している。同政府は1日の新規感染者が週平均で4000人を下回り、医療ひっ迫が改善されるまでは、ロックダウン規制が続くと述べている。感染抑制に失敗したとして、ムヒディン政権に批判が強まっており、7月26日には公立病院の医師を含む医療従事者が、ストライキを決行した。

 

来月には首都圏在住の成人40%がワクチン接種完了の見込み

マレーシアでは、ワクチンを1回接種した人が全人口の36%、ワクチン接種を完了した人が全人口の16.9%(7月24日時点)となっている。マレーシア政府によって実施されているワクチン接種キャンペーンを担当する、カイリー・ジャマルディン科学技術・イノベーション大臣は、1日あたりのワクチン接種回数を1.5倍に拡大する考えを示し、首都圏在住の18歳以上の全成人の40%がワクチン接種を完了する来月には、新規感染者数と入院者数が減少すると説明している。サウジアラビアは25日、マレーシアの深刻な状況を受け、同国に100万回分のワクチンを供給すると発表した。

 

15万の中小企業が閉鎖に、120万人の雇用が喪失

マレーシアの中小企業協会(SAMENTA)によると、昨年のパンデミック発生以来、少なくとも15万の中小企業が閉鎖に追い込まれ、120万人の雇用が失われた。マレーシアの繊維、アパレル業界も長引く操業制限で苦境に陥り、繊維製品の輸出額が大幅に減少しているほか、現地生産から撤退する外資系企業も出ているという。

 

ベトナム、感染急拡大によりハノイやホーチミンで規制強化

ベトナムの保健当局は7月25日、1日当たりの新規(市中)感染者が7525人に上ったと発表した。海外からの輸入症例は6人となった。ベトナムでは4月下旬から感染が急拡大し、7月に入ってからは連日数千人の新規感染者が確認されている。

感染者数が最も多いベトナム最大の都市ホーチミンでは、7月26日以降、毎日18時から翌朝6時までの外出を禁止している。また、首都ハノイでは7月24日から制限措置を強化し、不要不急の外出を禁止している。

同国でワクチン接種を完了した人の割合は全人口のわずか0.4%で、ワクチンの調達も進んでいない。そんな中、7月23日にはアストラゼネカから購入したワクチン3000万回分のうち、第5弾となる122万8500回分が到着し、24日には「COVAX(コバックス)」を通じて米国から供給された300万回分のモデルナ社製ワクチンが到着した。