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アメリカ老舗旅行メディアフロマー、観光客による選択と行動で業界をサステナブルへ導こうと訴える

2021.08.31

アメリカの旅行メディア「フロマー(Frommer's)」にて『バケーションでグリーンウォッシングに騙されない方法』という記事を見つけました。フロマーは旅行ガイドブックの先駆け的存在で、1957年に「Europe on $5 a Day(1日5ドルで旅するヨーロッパ)」の出版でスタートした旅行ガイドの老舗。これまで300以上の地域のガイドブックを出版しており、現在はWeb版やアプリでも情報提供をしています。

 

サステナブルな旅を計画したのに、中身が伴わない実態に直面した時には

同記事は「環境に配慮している事を謳い、しかも輝かしいエコ認証を受けたリゾートを予約したのに、到着した時点で部屋のエアコンがフル稼働していたり、リサイクル用のゴミ箱が見当たらなかったりすることがあるかもしれない。そんな時自分を責めてはいけない。それはあなたの計画した”エコな旅”がグリーンウォッシングに巻き込まれてしまったというだけ」と始まります。ここでいう「グリーンウォッシング」とは「事業者が持続可能性への努力や環境への配慮について詐称すること」と定義されています。

私個人も"エコやサステナブルをテーマにした記事を書くことも多いですが、実際は自販機でペットボトルも買うし、実態は伴っているのだろうか”と反省することがあります。ホームページなどで、一見、環境に配慮しているかのように装うのは意外とたやすいことです。

環境保護の認証を鵜呑みにしない

では、旅行をするにあたって「グリーンウォッシングに騙されない方法」とはどんなものなのでしょうか。記事によると、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC) のCEO、ランディ・ダーバンド(Randy Durband)氏は、認証が常に信用できる訳ではないといいます。もし企業が、環境保護とサステナブルの認証を受けていると、大々的にロゴを掲げていたら、疑ってみる必要があります。

なぜなら、GSTCによると、観光業界にはおよそ180もの多種多様な認証が溢れていて、その質もまちまちだからだといいます。今、GSTCはサステナブルな旅とツーリズムに関する認証基準の策定に動いている最中なので、しばらくの間は、国や州、公的な観光機関、もしくはGSTCによって認定されたものを探すようにとしています。

認証の有無が全てではない

多くのローカルビジネス、小さなホテル、小さな旅行会社は、基準を満たしていたとしても、認証を受ける資金等が不足している場合もあります。ホームページで、サステナブルへの取り組みについて書かれているかどうかを探し、実践しているかどうかに注目しましょう。

予約する前に的確な質問をしよう

ダーバン氏は、旅行者の側から、サービスの提供者にサステナブルへの取り組みについて質問することを促しています。それによって、旅行者が情報を得られるだけでなく、事業者に、サステナブルが顧客にとって重要だということが伝わるからです。

・水のペットボトルを含めた、使い捨てプラスチックの使用をやめているか。
・特に冷暖房について、使用エネルギーをモニターしているか。
・事業主はサステナブルに包括的に取り組んでいるか。

といった質問が例に上がっています。

旅ナカでも質問しよう

旅行中にも質問を投げかける事によって、旅行関係者がサステナブルを実践していく助けをしようと書かれています。

データインバウンドでも取り上げた、今年6月の Booking.com の調査によると、半数近くの人々が「サステナブルな旅行の選択肢が十分でない」と回答しており48%が、旅行中にサステナブルでいることを妨げられる(例えばリサイクルの選択肢がないなど)と不愉快だと答えています。

それならば、消費者である旅行者の方から声をあげて、サステナブルな選択肢を積極的に要求することで、業界に関心を持たせようではないかという提案です。

積極的に自分の役割を演じよう

環境に大きなダメージを与えてしまう航空機による温室効果ガスの排出は、観光業界にとって弱点であり、そのため企業は、他の誰かにお金を払って、バランスをとってもらおうとするようになってきているとダーバン氏はいいます。

排出したCO2に見合った分の、エコ活動を「購入」することで、自分が排出したCO2を相殺できる、つまり「カーボンオフセット」が簡単にできるサイトがあります。記事内にも登場する、米国のカーボンオフセットの非営利団体 Cool Effect のサイトでは、「あなたのフライトと旅行をオフセットしよう(Offset Your Flying & Travel Carbon Emissions)」というページから、旅行で排出されるCO2を相殺することができます。例えば10-12時間の航空移動を選択すると、CO2排出量が約1.89トンで、相殺に必要な費用が18.73と算出され、そのまま、その分の「オフセット」を購入できるのです。

記事は、ユナイテッド航空やルフトハンザでは、航空券のオプションとして、カーボンオフセット込みのプログラムがあることに触れています。カーボンオフセットの効果については様々な議論があるとしながらも、多くの旅客が求める事によって、他の方法も含めて排出量を抑える動きが航空会社でも増えていくかもしれないとしています。

 

旅行者自らの選択の積み重ねで、観光業界を真のサステナブルへと

ダーバン氏は更に、旅にマイボトルを持参して、RefillMyBottle などの安全な水をリフィルできる場所を見つけられるグローバルなアプリを使って、使い捨てプラスチックの量を減らそうと勧めています。

そういった小さな選択は、環境問題そのもののを解決できるわけではないですが、事業主に、需要とマーケットの変化を気づかせるきっかけになるといいます。そして、それがもし大きな動きになれば、未来の世代の旅人を含むみんなの利益になると述べています。

旅行者がグリーンウォッシングに騙されないよう注意を促すに留まらず、事業主に積極的にサインを送っていこうと促す締めくくりでした。

世界の旅行者を「ガイド」し続けてきた老舗旅行メディアが、旅行者に対して、旅行業界をサステナブルへと導くよう訴えかけているこの記事は、今こそ、事業主が気づき、変わらなければ、未来の旅人や旅行業界の利益は守れないのだと示しているようです。