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株式会社JTBコミュニケーションズ 代表取締役社長 坂本典幸氏

2011.04.09

確実な観光客誘致を目的とした国際観光展やキャンペンを展開

プロフィール:

昭和55年3月  早稲田大学 商学部卒業
昭和55年4月  株式会社日本交通公社入社
平成14年6月  同社東日本海外旅行仕入れ販売部 部長
平成17年2月  同社団体旅行上野支店 支店長
平成18年4月  株式会社JTB法人東京入社
平成18年4月  同社法人営業上野支店 支店長
平成20年6月  同社取締役マーケティング部長
平成21年2月  同社取締役総務部長
平成22年2月  同社常務取締役総務部長
平成24年4月  株式会社JTBコミュニケーションズ入社 代表取締役社長就任

 

国際観光展への出展からインバウンドが始まった

村山

まずは御社の事業概略からお聞かせいただけますでしょうか。

坂本

交流・集客の拡大と進化をめざし、さまざまなコミュニケーションサービスを提供する総合プロデュースカンパニーです。元々は、日本交通公社から生まれた株式会社で、JR(当事の国鉄)さんと一緒に設立した、いわゆる広告会社が前進となっています。

村山

インバウンドへ取り組みは早かったとお聞きしていますが。

坂本

1990年代のはじめ、いわゆるバブル経済が弾ける少し前の頃、もちろん当時、“インバウンド”という言葉はなじみがなく、“外国人旅行”と呼んでいた時代ですが(笑) ……。ビジネス目的ではなく、あくまで観光目的とした外国人の誘致を進めようという動きがありまして、そんな流れの中で、当時の運輸省と一緒に取り組ませていただいたのが国際観光展への出展でした。

当社が総代理店となり、日本国内の参加企業や自治体を募るところから、ブースの設置・運営までも担当。その一連の活動が、当社にとって最初のインバウンドの取り組みであり、業界の中でも先駆的なものであったと思っています。

 

村山

なるほど。御社のインバウンドに対する取り組みの歴史については理解しました。ところで、坂本社長ご本人は、これまでにどのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

 

坂本

1980年に当時の日本交通公社に入社。13年間に渡って、営業職として団体旅行を販売してきました。日本のお客様に対して海外旅行ばかりを販売していましたから、インバウンドとはまったく逆の立場。今では当たり前になりましたが、各国への視察、例えばアメリカのコンピューターショーやヨーロッパで行われていたメッセなどの視察と観光を合わせ、国際会議に出席するというビジネスマン向けのツアーを実施していましたね。

今では、日本の展示会に東南アジアの方々をお連れするというのが大切だと思っていますが……。その後は本社で営業統括や店舗展開の戦略を進めていくセクション、航空機の席を確保する仕入れの業務など、幅広く経験してきました。

村山

株式会社JTBコミュニケーションズの社長になられたのは昨年の4月でいらっしゃいましたよね。

坂本

そうです。広告という業界は、まったくはじめての経験でしたが、販売促進やイベント、コンベンション運営などは、これまでの旅行会社における経験と重なる部分も多いですね。これまでの経験を元に、新たな視点で広告業に取り組んでいくことができていると自負しています。

 

観光庁と共に進める「Meet The New JAPAN 2013」

村山

これまでのご経験の蓄積による御社の強みが存分に生かされていらっしゃるようですね。

坂本

元々は旅行関連から発生している企業ですから、各都道府県自治体や観光協会の方々と密接に連携を図って事業を進めてきたという経緯があります。そのネットワークを生かしながら、海外で実施される展示会や各種キャンペーンを通じ、各都道府県のニーズと海外のお客様とのマッチングを進めることができるというのが、当社の最大の強みであり、逆に言えば、そのメリットや意義というものをきちんとお客様に伝えていかなくてはならないという使命を持っていると自覚しているのです。

 

村山

国際的な展示会を中心に事業展開をされてきたということですが、他に大きなキャンペーンの運営も実施されてきましたよね。

坂本
インバウンド関連の大きな取り組みとしては、2003年からスタートした
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」で使用されていたキャンペーンロゴ“YOKOSO! JAPAN”は弊社が手掛けたものです。全体のキャンペーン事業の事務局ではなかったのですが、このほかにも様々な側面からご協力申し上げ、その一翼を担ってきました。

そして、2012年の12月からスタートし、現在も続いている「Meet The New JAPAN 2013」も、観光庁と共に当社が手掛ける大変意義のあるキャンペーンとして内外から注目を集めています。

これは、「あなたの好きな日本がきっと見つかる。日本の魅力、新発見!」をコンセプトに、東日本大震災後の世界中からの支援に対する感謝の意味を込めて、外国人の方が訪日旅行をしていただく動機を作ることを目的としたもの。期間中、東京・関西地区にて外国人の方がパスポートを提示することでイベント参加や特典を得ることが出来るということで、キャンペーン参加企業、外国人観光客の両方から好評をいただいています。

村山

今回の「Meet The New JAPAN 2013」のように若い世代をターゲットとするなど、しっかりセグメントされたキャンペーンというのは珍しく、新鮮な印象を受けましたが、この戦略は御社が強く意識された部分なのでしょうか。

坂本

今後はターゲットを明確にし、絞り込んでプロモーションをしてい
くことが主流となっていくと考えています。限られた予算で実効性の高いキャンペーンとすることが求められるのは当然ですからね。どこの国のどんなお客様をどういう風に誘致するのか、それを私どもが各都道府県自治体や観光協会、あるいは国に対して提案をしていくべきであると考えているのです。

セグメントと面を意識したキャンペーンと展示会を促進

村山

しっかりセグメントされたキャンペーンは、狙いを絞る点で難しさがあるかと思いますが、ご経験が豊富な御社にならお任せできるのでしょうね。

坂本

今年の4月から社内体制を一新し、これまで縦割りだった組織間の壁を取り払い、横断的な企画セクションを立ち上げました。4月からすぐに機能できるように、スタッフはすでに机を移動しています。

広告、イベント、展示会とそれぞれの部門に強力なノウハウが蓄積されているので、そのシナジー効果により、斬新かつ説得力のある企画を生み出していくことができます。
各方面から、セグメントされたターゲットにキャンペーンを打つなら弊社に、と認識していただけるくらいまでに徹底して戦略を押し進めるべきと考えています。

村山

それぞれのプロフェッショナルが集結して生み出される発想には非常に期待が持てますね。

坂本

そういった意味では、さらに展示会での来場者訴求の効果をアップし、確実に誘致に繋いでいけるような工夫も必要だと考えているところです。これまでは、各ブースごとに個性を売ろうとする意識が強くなり、トータルとしての魅力が生み出せていないというケースもよく見られていましたが、私たちがプロデュースするからには、日本という大きな魅力の中に、それぞれに魅力的な個性が存在するという見せ方にしていかないと。それぞれの点を繋いで面として印象付けていくことが必要ではないかと思っていうのです。

村山

なるほど。セグメントと面を意識した企画というのは、御社のノウハウから生まれてくるものなのですね。それでは最後に、今後の展開についてお聞かせいただけますか。

坂本

展示会というのはひとつのフックですから、そこに留まっているだけでは、我々の本来の力は発揮できないと思っています。最終目的はパンフレットの配布ではなく誘致ですから、国や自治体はもちろん、業界関係者が一丸となって取り組んでいくべきです。もちろん、私たちはJTBグループの一員として、展示会をきっかけに観光客の方がいらっしゃったら、日本という国を楽しんでいただくツアーを組むなど、総合的な対応が可能ですから、積極的に働きかけていきたいと思っています。

村山

坂本社長のお言葉からも、現在のインバウンドにおける課題が見えてきますね。

坂本

キャンペーンは実施しますが、外国人観光客を受け入れる体制、インフラの整備が追いついていないような気がします。英語表記されたわかりやすい案内板の設置や、あるいは、おもてなしの心は持っているものの、それを上手に表現できないようなシャイな日本人気質を持つ国民への啓蒙も必要でしょう。そういった意味では、オリンピックの誘致も日本のインバウンドが飛躍する大きなフックとなると思います。このチャンスを“変わっていくことができる”経験としていかすべきでしょう。弊社としては、さまざまな関連イベントを企画して、地域活性化のお手伝いができればと思います。

村山

本日は、ありがとうございました。