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~人民日報海外版から~

第31回 円安に在日中国人は悲喜こもごも

2015.08.14

市場での円相場は、このほど1元=20円を超え、13年ぶりの最安値を記録した。「アベノミクス」の特効薬として、円安は日本経済の復興のためのカンフル剤となってきた。しかし、在日中国人70万人にとっては、「ある人は憂い、ある人は喜ぶ」といった悲喜こもごもな状況となっている。

目次:
資産が目減り
株や預金がある中国人、甘い汁を吸う
円安に対し、理性的な投資が重要

 

資産が目減り

円安によって持ち込んだ資産が目減りしてしまう現象が起きている。
特に、中国人の出稼ぎ労働者が被害をこうむっている。

日本在住のある出稼ぎ労働者は、「多くの日系企業は優秀な外国人を雇用することを希望している。しかし、日本の給料を人民元に変換すると価値が下がってしまうため、中国人にとって日本企業の魅力はますます弱まっている。このような状況下では、北京や上海、広州で働いたほうがましだ」と語る。

厚生労働省が4月に発表したデータによると、2014年度の働く人1人あたりの「実質賃金」が前年比3.0%減少し、史上最大の減少幅となった。

日本の東北大学で科学研究の仕事をしている張勇捷さんの月給は約40万円だが、円安によって資産が目減りしたという。

張勇捷さんは、「人民元に変換すると、2万元にも満たず、過去2年間に比べて25%も減少した。特に、家族にお金を送金すると、手持ち資金が一気に心もとなくなる」と語る。また、円安による原材料価格の高騰や物流費用の価格上昇が中国人に困難をもたらしている。張勇捷さんは、「多くの中国人は日本の生鮮食品を食べ慣れない。しかし、地元にある中国物産店の販売価格が円安によって値上がりし、皆ジレンマに陥っている」と語る。

 

株や預金がある中国人、甘い汁を吸う

大幅な為替レートの下落によって、同額の人民元をより多くの円に変換できることから、一部の中国人は甘い汁を吸っている。
日を追うごとに人気が高まりつつある代理購入業も多くの中国人にかなりの利益をもたらしている。

最近の代理購入は、日用品がよく売れるだけでなく、高級品や薬品の人気も高まっている。

日本で代理購入業を営む武さんは、「同じコーチのバッグが中国の公式サイトでは3000元(約6万円)で販売されているのに対して、日本の楽天では税込約3万2000円で販売されている。
円安のため、1円=0.05元で換算すると、人民元で約1700元となる。価格差はほぼ2分の1で、知り合いなら2000元でも売れる」と語る。

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円安に対し、理性的な投資が重要

人民元の対日本円レートが上昇し続けるのに伴い、日常生活においてすでに多くの中国人が人民元で支払いを済ませるようになってきている。
特に銀聯カードを持っている人は、人民元による支払いの方がより得になる。

日本僑報社の段躍中編集長は、1日、池袋の銀行で3万元(約60万円)以上の人民元を円に両替した。段氏は、「もし手元に人民元の現金があれば、銀行で円に変えることができる。両替する場合は、銀行窓口に行くのがベストだ。街の両替商より得だ」とアドバイスする。

同時に、円安の重要さはクレジットカードを利用した時に実感する。段氏は、「日本は、銀聯カードを使用できる店が日増しに増えており、カードさえあれば、日本全国どこにいっても、困ることはない」と総括した。

現在の状況から見ると、円安の下落はおそらく長期的な傾向になる可能性が高い。在日中国人の企業は事前に円安に対応し、計画的にリスクを回避しなければならない。

対外貿易大学国際経済研究センターの呉敏副センター長は、「一方では、なるべく人民元やドルによる決算を行い、日本の大口注文や長期間注文に対して慎重になることだ。
他方では、モデルチェンジとアップグレードを堅持し、製品の質の向上を通した企業の技術革新で市場の多様化を追求することによって、円安がもたらすリスクを減らす必要がある」とアドバイスしている。