インバウンド特集レポート
日本一のDMOを目指し、地域連携のための協議会も立ち上げ
アクアイグニス・古田悟朗氏
伊勢志摩サミットも開催され、インバウンド気運の高まる三重県。その北勢地区に位置し連日日本人をはじめ、多くのインバウンド客も訪れている「アクアイグニス」。そのインバウンド施策はどのようなきっかけで始まったのか。今後の展開や地域ぐるみでの取り組みについて、飲食部マネージャー兼 営業部 マネージャー 団体・法人担当の古田悟朗氏にお話しを伺った。
自然発生的に始まったインバウンド
名古屋から1時間、大阪からも2時間ほどの三重県北勢地区。アクアイグニスへの最寄駅・近鉄湯の山温泉駅は、どの地方にもあるごく普通の小さな駅。バスで2分、忽然と姿を現わす建物の周りに、平日昼間だというのに駐車されている乗用車の数にまずは驚かされる。
温泉を中心とした複合施設「アクアイグニス」。ラテン語のアクア(水)+イグニス(火)からの名称は、温泉は水と火で成り立っているからとのオーナーの造語。オープンは2012年10月、いわゆる伝統的な温泉施設のイメージとはかけ離れたデザイン性ある建物が目を惹く。
全体のコンセプトや、総合ディレクションを手がけたの赤坂知也氏。温泉棟はミヤマケイ氏といった有名クリエイターのディレクションにより、諸泉茂、牛島孝といったアーティストや女性に人気のミナ・ペルポルンなどの作品や家具が、空間に合わせ取り入れられている。
平日でも4千人、週末にもなると8千人から1万人もの人が県内はもちろんのこと、県外からも訪れるという。一年間の訪問客数110万人。宿泊施設も兼ね備えており畳の和室が全17室に加え、4人のクリエイターが1棟ずつ趣向を凝らし内装を手掛けたオーガニック離れの宿も4棟ある。それらの宿泊施設には、連日2、3組の海外からの利用客が宿泊しているという。
「インバウンドのお客様がお見えになるようになったのは、2年程前からです。その時は特に何かインバウンド対策をした訳ではありませんでしたが、台湾や香港からのお客様は日本人の方が発信したSNSの情報などを見つけてきてくださるようになりました」。飲食部マネージャー兼 営業部 マネージャー 団体・法人担当の古田悟朗氏によると、日本に何度か訪れているリピーター達が、日本人発信のSNSからアクアイグニスに訪れるようになり、さらに彼らが発信する情報を見て、空港からも離れたこの場所までインバウンド客が連日訪れているという。
日本人に流行っているものが人気コンテンツ
開業以来、日本人向けも含め広告はほとんどしておらず、マスコミの取材に対応してきたのみ。今でこそ道路に案内看板を設置したが、それも最近のこと。ただし田舎のことゆえ、新しいものができたら話題になると見込み、人々が話題にしたくなるコンテンツはしっかりと備えた。
それが広大な敷地に併設されたレストラン、パティスリー、ベーカリーだ。日本だけでなく、世界からも注目されているパティシエ辻口博啓氏のケーキショップ「コンフィチュール・アッシュ」と石窯パン「マリアージュ・ドゥ・ファリーヌ」。地産地消のイタリアンで知られる奥田政行氏が手がける「サーラ・ビアンキアル・ケッチァーノ」。和食の笠原将弘氏の「笠庵・賛否両論」もオープン。都会と同じコンテンツを、地方の温泉地でも楽しめるようにしたのだ。
「海外からのお客様からも、日本のスイーツは繊細で美しいと大変好評をいただいています。施設内にはイチゴ農園もあり、シーズンにはイチゴ狩体験もできます。日本の果物は人気も高いので、体験ものがお好きな海外の方にはとても喜んでいただいています。お土産としてお菓子を購入される方も多く、海外の方には凝ったパッケージものが人気です」。
訪日客が増えるにつれて“何かしなければいけないのではないか…”。そんな風に思い始めた2015年11月に、タイミングよく開催された三重県主催のインバウンドセミナーに参加。それをきっかけにもう一つ大きく動いたインバウンド施策がある…(次回へつづく)
【三重県内のインバウンド研修】
三重県主催セミナー
「訪日外国人を呼び込む!インバウンド研修in三重」
◎基礎研修
開催日時:桑名 12月12日(月)13:30-17:30
◎専門研修
開催日時:桑名 1月17日(火)15:00-18:00
開催日時:名張 1月18日(水)9:30-12:30
開催日時:松坂 1月18日(水)15:00-18:00
▶︎詳しくは
https://www.yamatogokoro.jp/mie_2016/
【三重県内のインバウンド求人】
三重県のインバウンド企業で働く
▶︎詳しくは
https://www.yamatogokorocareer.jp/mie.html
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