インバウンド特集レポート

第75回 2018.02.07

豪州だけではない、スキー場が今後狙うべきターゲットとは…⁉

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Part1:雪は日本の最強コンテンツ! 世界のスキー・スノボー需要をつかまえろ
Part2:スノーリゾートとして外国人誘致のポテンシャルを持つ、2つのエリアに迫る

 

今後のマーケットとして中国が伸びる?

今年(2018年)の冬季オリンピックは、韓国の平昌で開催され、その次の冬季オリンピックは、2022年に北京となる。北京の冬の平均気温は、東京よりも寒く、郊外に出ると気温はマイナスの世界で、スキー場やスケート場ができている。

予定としては、フィギュアスケートやカーリングなど氷上競技を北京市中心部で、アルペンやボブスレーなど雪上競技は市中心から90キロ離れた延慶と、160キロ離れた張家口で開かれる。張家口市周辺を中心に莫大な投資が行われ、続々と新しいスキーリゾートが開発されている。なかでも2003年に開業した万龍スキー場や、マレーシア資本で2012年開業の崇礼密苑雲頂楽園スキー場、さらにはスイスやイタリアなどの海外資本も呼び込む巨大プロジェクトとなった、2015年開業の崇礼太舞スキー場がある。 

中国事情に詳しいジャーナリストの中村正人氏によると、中国政府は、スケートやスノボなどのもろもろのウィンタースポーツ人口と業界関係者なども含めたウィンタースポーツに関わる人を合わせ、3億人くらいにしたいと言っているそうだ。現在の愛好者は200万人ほどで、人口規模からいえば、まだ特別な人たちのレジャーである。

昨年、中村氏が、吉林省の新しいスキーリゾートを訪れ、その最新の設備を見て驚いたという。中国の有名建築家・王硕氏が設計した展望台『森之舞台』があり、山頂近くに巨大な三角形の建造物がある。中に入ると、美しいゲレンデと氷結する松花湖が見渡せる仕掛けになっている。

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中国ではスキーは富裕層のためのレジャー

今後、日本を訪れる中国人スキーヤーは、こうした最新リゾートを体験済みであることを知っておかなければならないと中村氏は指摘する。
日本と中国でのスキーに向き合うスタンスがまったく異なると言うのだ。 

日本では、スキー人口が減り続けているため、スキー場への投資が限られ、なかには老朽化したスキー場もある。また、日本のスキーリゾートは、庶民がスポーツとして楽しむのが目的で、すそ野を広げることに重きを置いた。レストランではカレーライスやラーメンなど庶民的なメニューが人気だ。また夜行バスでスキー場に行き、なるべく余計なお金をかけたくないというのが日本の主流。

一方、中国は、そもそも富裕層向けのスポーツのため、ある程度、快適性を求める。スキー場のレストランでは、庶民的なメニューよりも豪華なメニューが人気だ。リゾートで非日常を楽しみたいからだ。
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富裕層が最新式のスキーリゾートで、新しくスキーを始めるというパターンが多く、吉林省に来るスキーヤーは、海外スキーの経験が豊富で目が肥えている。

そんな彼らには、老朽化した庶民的な日本のスキー施設は、あまり喜ばないだろうと中村氏。

ニセコや白馬など、海外資本のエリアのほうが、共感を得やすいという。やはり外国人目線をスキーリゾート開発に活かすことが肝になりそうだ。

 

中国語対応のインストラクター派遣のニーズが高まる

海外からのスキー客というとオーストラリア人に注目がいきがちだが、台湾からのスキー客が年々増えている。

台湾からの受け入れがメインでランドオペレーターをやっている株式会社ワイケーティーは、ライオン旅行社等、現地大手旅行会社の日本での添乗サポートもしている。スキーツアーは、一般の旅行の扱いとはまったく異なるため、専門性が高いワイケーティーへの依頼が多いのだ。

ここ最近は、やはり中国も伸びていて、他にマレーシア、シンガポールからも依頼が来ると担当の本多氏。台湾の団体ツアーの場合は、日本でスキーの試験を受ける人もいて、そのために終日スキーレッスンという日程だ。

そのツアーには、現地からスキーインストラクターが添乗員としてやってくるが、やはり30人の案内となると手が回らず、同社のスタッフがサポートをする。

カリキュラムには、スノーボードのコースもあり、その際には、別のインストラクターを同社の関連会社が日本で派遣をしている。ゴーファンジャパンという会社で、白馬にオフィスがあり、所属する台湾・中国・香港・マレーシアのインストラクターが全国に派遣される。

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中国語(北京語、広東語)ができるインストラクターが少ないため、ニーズが高まっているという。外国人に人気の北海道、本州の長野県・新潟県などからも中国語対応のインストラクターの依頼がくるそうだ。

このような専門会社の活躍によって、今後の中華圏・東南アジアマーケットの展開にも注目したい。

 

白馬にマナー条例が必要になった!

ところで、急速に増えた外国人に対してマナーが悪い等、批判的な声も増えてきた。もっともこれは日本のルールを知らないから、きっちり明文化して教えるなりの対応が必要なのだろう。
そのような外国人客に向けたルールづくりに動いたのが、長野県の白馬村だ。白馬村では、2015年12月18日にマナー条例が施行されている。正式には、「美しい村と快適な生活環境を守る条例」と言う。

なぜマナー条例が必要なのか?具体的にどのようなトラブルが発生していたのだろうか。

例えば、ゴミの路上への放置や深夜の花火が挙げられる。また、酒量が多く、酔っ払って夜中に大声で騒ぐといったこともある。そこで、2015年6月に、条例により、禁止事項等を明文化していく方針となった。英語と日本語併記のポスター、看板、チラシを制作して村内で配布したのだった。

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より良いスキーリゾートとしていくために!

条例では、酒を提供する飲食店の午前2時以降の営業や、歩きながらの飲酒、喫煙などを禁止している。さらに、午後10時〜午前6時に花火をすること、路上でスキーやスノーボードをすることなども禁じている。

条例のベースになっている考え方は、白馬村を美しい村として存続させることだ。白馬村としては、日本人スキー客が減っている現状もあり、海外からの外国人スキーヤーは大歓迎で、もっと多くの外国人に訪れてほしいと意欲的だ。

しかし、無法地帯としてルールやモラルがおざなりになれば、日本人はもちろん外国人もリピートしなくなってしまう。外から来た観光客が、「白馬は美しいところだった」と、思い出に持って帰ってもらいたいというのが、白馬村の思いなのだ。

日本の雪国では、外国人需要を取り込もうと動き始めている。ニセコの成功に始まり、本州でも着実に成果をあげたエリアが登場してきた。この動きは、まだまだ続き、大きな資本が動いている。一方で、摩擦も起きている現状もあり、関係者すべてにウィンウィンの関係をいかにして築いていけるかが問われそうだ。

Text:此松タケヒコ

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