インバウンド特集レポート

第92回 2018.06.05

民泊新法施行、直前 「インバウンド業界に携わる者として押さえておきたいポイント」

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2020年東京オリンピック・パラリンピックの宿不足解消と地域活性化のための空き家対策として、6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。この新法をきっかけに民泊はもちろん、周辺産業を含めた新たなビジネスチャンスが生まれる。そこで新法の基本や活用方法、直前の最新動向など、インバウンド業界に携わる者として押さえておきたいポイントをご紹介する。

 

まずはここは、しっかり押さえておきたい

住宅宿泊事業法(民泊新法)の基本

民泊新法は、急増する訪日外国人観光客など宿泊ニーズの多様化に対応するため、既存の住宅を利用して宿泊サービスを提供する場合に、安全面・衛生面の確保や騒音・ゴミ出しといった近隣トラブルなどを解消するため、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及と振興を推進するため新たに制定された法律。

民泊新法の対象は、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3種類の事業者となっている。

民泊新法の対象は3種類の事業者_表

 

民泊を行うには下記の3種類の方法があり、いずれかの許可あるいは届出の必要がある。
1.旅館業法(昭和23年法律第138号)の許可を得る
2.国家戦略特区法(平成25年法律第107号)(特区民泊)の認定を得る
3.住宅宿泊事業法の届出を行う

下表のように民泊やホテル旅館などの宿泊業を所管するのは、厚生労働省と国土交通省・観光庁。各HPに法令はもちろん登録手続きの詳細も記載されている。

 

民泊は3つのいずれかに登録

3つの制度

住宅宿泊事業法では、営業日数が180日以下に規制され、さらに都道府県・市・特別区などの地方自治体によって、営業可能な期間などそれぞれ独自の規制が追加で設けられている。

通年180日以上365日営業したい場合は、物件の所在地が商業地域であれば、旅館業法で簡易宿所の許可を得る。また国家戦略特区なら国家戦略特区法(平成25年法律第107号)(特区民泊)の認定を得て特区民泊に。

3つの制度比較_表

 

違法民泊への取締りが強化されている

注意すべき点

特に注意すべき点は、旅館業法の許可を得ずに営業している「違法民泊」が、改善指導を受けながら従わなかった場合、旅館業法改正で立ち入り権限を持つ管轄保健所と消防、警察が連携して検査・指導する取締りが徹底強化されたことだ。また罰金の上限も100万円に引き上げられた。

さらに住宅宿泊事業者には、標識の掲示が義務付けられ、届出番号の記載された標識が施設の玄関に掲示されているか否かで、合法か違法か近隣住民にも簡単に確認できるようになった。だからこそ安易な気持ちで手続きを怠り「違法民泊」の営業をしてはならない。

 

新たな連携が続々誕生

最新動向

5月21日観光庁は厚労省と「違法民泊対策関係省庁連絡会議」を開催し、取締り連携体制の強化と自治体には違法民泊対策には積極的に警察に通報するよう通達を実施した。また(株)百戦錬磨の上山代表取締役社長の呼びかけで集まったairbnbなど国内・海外の民泊仲介事業者が、業界任意団体「住宅宿泊仲介業者適正化協会(仮称)」設立にむけた準備会合を観光庁も支援した。

宿泊仲介業者だけでなく、住宅宿泊管理業務委託の周辺産業にも新ビジネス誕生と異業種間の連携が広がっている。

具体的には、届出住宅の台所、浴室、便所、洗面設備、ドアやサッシ等などの設備や水道や電気などのライフラインが正常に機能するようメンテナンスや清掃などが必要となる。また空室時における施錠の確保や、住宅又は居室の鍵の管理も含まれるため、入室時の名簿やパスポート確認なども含まれる。そうした管理業務委託には、ファミリーマートなどのコンビニなど異業種との提携が開始され、清掃作業やリネン類の貸出といった周辺産業への新規参入が可能になり、三井住友海上火災保険は5月28日、民泊・旅館事業者向け個人賠償責任保険の販売を始めるなど、新ビジネスが誕生するきっかけにもなっている。

 

観光庁が発表した5月11日時点での、住宅宿泊事業法の届出・登録の申請等の状況は、
・住宅宿泊事業の届出受付は724件、受理済み件数は152件(4月13日時点で受付は232件)
・住宅宿泊管理業の登録申請は512件(4月13日時点では284件)
・住宅宿泊仲介業の登録申請は33件(4月13日時点では22件)

さらに、
京都市での簡易宿所の営業許可件数は、
 平成27年度696件、平成28年度1493件、平成29年度2291件
大阪市での特区民泊の認定施設(居室)数は、
 平成29年3月48施設95居室、平成30年3月604施設1683居室

以上の最新データを見るとやはり採算性など重視した場合、年間営業日数の上限が180日と限られた規制がある民泊よりは、365日営業可能で日数に規制がなく帳場設置撤廃など、より規制緩和された旅館業法上の簡易宿所の許可や特区民泊の認定件数が著しく増加している。

民泊新法施行直前のデータ傾向を参考に、新しい健全な民泊と周辺ビジネスの開拓を目指して頂きたい。

[参照サイト一覧]
民泊を管轄する行政は、厚生労働省と国土交通省・観光庁
★は必ず見ておきたい

【厚生労働省HP】:
⚪︎生活衛生課・旅館・ホテルのページ
⚪︎旅館業法の改正について
旅館業法の一部を改正する法律の概要
「旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」について(概要)
⚪︎旅館業における衛生等管理要領の改正について(平成30年1月31日発出)
⚪︎旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令等の公布について(平成30年1月31日発出)
⚪︎民泊サービスを始める皆様へ ~簡易宿所営業の許可取得の手引き~
⚪︎民泊サービスと旅館業法に関するQ&A

【観光庁HP】:
⚪︎民泊制度ポータルサイト
⚪︎民泊が行われている周辺にお住まいの方へ

取材・文:渡邊 輝乃
旅行ジャーナリスト。新聞、雑誌、専門誌、TV、ラジオ番組など掲載出演多数。
元JTBグループ社員


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