インバウンド特集レポート

第98回 2018.07.11

外国人に人気の日本のスポーツとは? 「スポーツで人は動く」

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前回、異文化体験を求めるツーリストにとって、その国独自のスポーツへの参加や観戦、地域資源とスポーツを融合した観光を楽しむ体験は大きな満足を与えていることがわかった。今回は、日本のスポーツツーリズムに関する調査結果から、具体的にどのようなニーズがあるのかを考察してみる。

 

スポーツに関する海外マーケティング調査が実施された

では、どんなスポーツ体験の満足度が高いのか?

2015年に文部科学省の外局として設立されたスポーツ庁が昨年(2017年)実施したスポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査をみてみよう。同調査は、訪日外国人数の多い中国や韓国、台湾、香港、アメリカ、タイ、オーストラリアの7カ国・地域を対象とし、直近3年以内に日本を訪れた人をモニターとして日本のスポーツツーリズムに対するニーズをつかむために行われたものだ。

 

「する」スポーツと「みる」スポーツ

調査には、二つの観点があった。それは「する」スポーツと「みる」スポーツだ。前者についての設問は「日本で実施すると楽しそう・おもしろそうだと思うスポーツ・運動の内容をお答えください」。

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「する」スポーツの人気度(スポーツツーリズムに関するマーケティング調査報告書 スポーツ庁 平成30年3月) より

国・地域によって若干の違いはあるものの、「する」スポーツで総じて人気が高かったのは「スノースポーツ(スキー・スノーボード等)・スノーアクティビティ」「登山・ハイキング・トレッキング」「ウォーキング」だ。国・地域別にみると、スノースポーツは台湾で47.7%、タイで42.3%と自国に降雪のない南の国の人たちを惹きつけているようだ。

彼らの中には、スキーをやったことはなくても雪に触れてみたいという人もいるのだろう。日本の上質なパウダースノーを求めるスキーヤーも多いはずだ。

一方、登山は香港43.7%、台湾37.3%、ウォーキングはオーストラリア41.0%、アメリカ37.0%が上位だった。一般にスノースポーツはオーストラリア客、登山は韓国客が多いことが知られているが、この調査をみるかぎり、まだ顕在化していない、さまざまな意向がありそうだ。たとえば、ウォーキングを押し上げているのはオーストラリアの女性の回答であるなど、興味深い結果もみられる。

 

アウトドアスポーツと武道が人気

「みる」スポーツに関してはどうだろう。「日本で観戦・応援すると、楽しそう・おもしろそうだと思うスポーツ」の設問に対し、人気が高かったのは「大相撲」「武道(柔道、空手、剣道、合気道など)」「スノースポーツ」だった。

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「みる」スポーツの人気度(スポーツツーリズムに関するマーケティング調査報告書 スポーツ庁 平成30年3月) より

国・地域別でみると、大相撲は中国42.0%、タイ33.3%、武道は中国50.7%、アメリカとタイ37.3%が上位。日本の国技であり、日本でしか観ることができないスポーツに対する人気は高い。アメリカやオーストラリアの女性も大相撲や武道を観たいという意向が高いようだ。またスノースポーツは「する」だけでなく、「みる」意向も高いことがわかる。

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左:両国国技館には多くの外国人ツアー客が訪れている  右:国技館の相撲博物館の来場者は「四分六で外国人が多い」という

これらの結果から、日本を訪れる外国人が体験したいのは、アウトドアスポーツと武道であることがみえてくる。
同調査は国・地域別のそれぞれ異なるニーズやその背景について分析しているので、一部を紹介しておこう。さらに詳しい内容は報告書を参照してほしい。

<各国別の分析>※「する」「みる」それぞれの人気上位スポーツ
●中国 「する」登山・ハイキング・トレッキング/「みる」武道、大相撲
●韓国 「する」登山・ハイキング・トレッキング/「みる」野球
●台湾 「する」スノースポーツ/「みる」野球
●香港 「する」登山・ハイキング・トレッキング/「みる」武道、大相撲
●アメリカ 「する」ウォーキング/
「みる」(男性)バスケットボール、サッカー、野球 (女性)大相撲

●タイ 「する」スノースポーツ/「みる」バレーボール、サッカー
●オーストラリア 「する」ウォーキング/
「みる」(男性)サッカー、ラグビー (女性)武道、大相撲

 

スポーツで人は動く

こうした調査をふまえ、スポーツ庁では「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を掲げている。これまで同庁は、各種スポーツイベントの開催や誘致、スポーツチームの団体の合宿やキャンプの誘致などに取り組んできたが、今後新規重点テーマとして取り組むのはアウトドアスポーツと武道ツーリズムの振興である。

同報告書によると、日本のアウトドアスポーツの強みは、雪質や里山などであり、そこには海外からも高い関心が寄せられ、すでに多くの外国人が訪れている。そのような世界に誇る日本の自然資源を活用して、地方への誘客につなげることも重要だ。

一方、武道ツーリズムの強みは、すでに海外の愛好者も多く、日本文化への関心が高い層に対して発祥の地である日本への関心・訪日意欲を喚起できることにあるという。

スポーツツーリズムの振興のために2012年に設立された一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)の中山哲郎事務局長は「スポーツで人は動く」と話す。

このことは、全国のJリーグのサポーターが地元を離れて対戦相手との試合を観戦するため出かけるバスツアーが盛んなことや、プロ野球のキャンプ地を訪れるツアーの人気などにもすでにみられることだ。

宮崎県は毎年1月から2月にかけてプロ野球やサッカーJリーグのキャンプ地となり、多くの観光客が訪れる

 

スポーツは地域活性化に貢献するコンテンツだ!

だが、スポーツツーリズムの推進が目指すのはその先にある。中山事務局長によると、以下の3つの目的があるという。

1, より豊かな観光資源の創造
スポーツを通じて新しい旅行の魅力を創り出し、日本の保有する多種多様な地域の観光資源を健在化させるといったスポーツをテーマにした観光魅力化による感動の実現

2, 新たなビジネスの創出
今までにないスポーツ産業、観光産業の新しい収益源となるビジネスを生み出すこと

3, スポーツの普及とスポーツを通じた地域活性化
スポーツ振興のみならず、健康増進、活力ある長寿社会づくりに寄与し、地元住民のライフスタイルに好影響を与えること

そのためには、これまで教育の一環として捉えられがちだったスポーツを、外から訪れる人たちを楽しませるための地域資源として発想を転換していくことが必要となる。

(Part3へつづく)

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