インバウンド特集レポート

第109回 2018.10.10

温泉を活用したPR 外国人にヒットする仕掛けとは?

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前回は、外国人に人気のある温泉として、城崎温泉のインバウンド受入れについての経緯を紹介した。城崎温泉ほど大幅に増加していないものの、全国各地の温泉でも外国人客が増加傾向にある。今回は、温泉を様々な形でPRしている各地の具体的な取組みを紹介する。

 

温泉県・大分では、動画の活用に積極的、海外でも注目!

次は、大分県の動画のプロモーションを紹介しよう。大分県は、「おんせん県」と名乗り、別府市、由布市、九重町など16市町村で温泉が湧出し、2017年3月末における源泉総数は4,385カ所、湧出量は281,331リットル/分で、ともに全国第1位だ。

海外でも話題になっている「シンフロ」という動画がある。県内の温泉で「シンクロナイズドスイミング」をしているユニークな映像だ。水深わずか50~100cmという過酷な条件の下で披露する演技の中で、大分県の特産品など、数々のこだわりのエッセンスを盛り込み、大分県の魅力を伝えている。メンバーはオリンピックメダリスト・藤井来夏氏が主宰するプロのシンクロナイズドスイミングチーム「RAIKA ENTERTAINMENT」所属のメンバーだ。使用しているBGMは、大分県出身の作曲家・瀧廉太郎氏の名曲「花」をアレンジしたもの。バラエティ豊かな大分県の温泉での、息の合った華麗な演技は圧巻だ。

2015年から2017年まで3本が制作され、高校生編、歴代のオリンピック選手編と続いた。

これを制作した大分県庁の広報によると、外国人観光客の温泉地での宿泊が増えているそうだ。もっともこの映像が影響したかどうかの判断は難しいとのことだが、海外での再生数は確実に増え、認知度が高まっていることは確かだという。

ところで大分県では、シンフロを制作した前年の2014年にも積極的に留学生を活用した動画を作成している。大分県がAPU(アジア太平洋立命館大学)に委託する形で、韓国、中国、台湾、タイ、英語圏の5つをターゲットに、留学生を中心とした学生が大分県の魅力をアピールするCM(1作品3分間)を制作した。そちらは「観光と食と文化」がテーマだった。海外へ映像を活用したPR力をこのときに認識していたのだろう。

 

松山の道後温泉では、アートとのコラボ!

次に紹介するのは、愛媛県の松山市だ。道後温泉という古くからの温泉街があり、アートと温泉を融合した企画が2014年から立ち上がると、海外メディアからの取材も増え、結果、海外での松山の認知度向上に貢献した。松山の外国人観光客数は、2012年までの10年間は、年間平均で約35,000人前後を推移していた。ところが、2013年に63,600人、2014年に88,700人、2015年には133,800人、そして2016年は187,500人、2017年は195,300人と着実に増加している。温泉アートがスタートして以降、数年で飛躍的に伸びており、道後温泉を担当する市職員によると、外国人観光客の増加には2014年に開催した温泉とアートを融合させたプロジェクトのインパクトが大きく影響したそうだ。

そのプロジェクトとは、道後温泉本館改築120周年の大還暦を記念して実施した「道後オンセナート2014」だ。

道後温泉はもちろんのこと、道後温泉エリアのホテルの部屋がアートになっていて、例えば草間彌生の作品が並ぶホテルの部屋も出現した(草間作品は公開終了)。昼間は一般に公開しているが、その部屋に泊まることも可能だ。街中では影絵アートもあり、地区をあげての取り組みとなっていた。

まず国内メディア向けにプレスリリースをした後、記事の掲載に伴って海外メディアからの取材が増えた。パワーブロガーの取材にも対応したそうだ。また、1年間という長期で開催していたので、海外の旅行会社もツアー企画を練りやすく、アートにちなんだ旅行商品がいくつも造成されたそうだ。アートと温泉という組み合わせにインパクトがあったのだろうと、市の観光担当者は当時を振り返る。松山の温泉街としての知名度を海外に広げるきっかけになった。

こうした成果を受け、地元の観光事業者から「アート」にちなんだ取組みを継続するよう要望が出され、翌年以降も「道後」=「アート」の展開を定着させるべく、毎年開催されている。ちなみに2015年は蜷川実花、2016年は山口晃とのコラボレーションで海外でも話題になった。そして2018年は「アートにのぼせろ ~温泉アートエンターテイメント~」をテーマに、2017年9月から2019年2月までの18ヶ月間の長期開催となっている。

 

桜島での温泉掘り体験がインスタ映え?

鹿児島県の桜島で外国人観光客に話題になっているのが、温泉堀り体験だ。

温泉堀り体験の内容は、桜島ビジターセンターから車で20分の海岸に、温泉が湧くポイントがあり、そこで小さいスコップで源泉を掘り当てるというものだ。実際には、スコップがなくても、手を泥だらけにしながらでも可能だという。わずか2cmほど掘るだけで温泉が湧いてくるのだ。高い時は42度ほどで、手でしっかりと温かさを実感できる。

ガイドと行く体験ツアーは5,400円で、NPO法人桜島ミュージアムへ事前に連絡して申し込むことができる。

体験ツアーとは別に、桜島ビジターセンターでは、タオルとスコップ、海岸周辺のマップがセットになった「温泉掘りセット」を1,000円で販売している。こちらは、ガイドを伴わずに体験することも出来るため、外国人の購入者も増えているという。

香港のブロガーのモニターツアーの受け入れを行っていて、温泉堀り体験は、キャッチーなコースであり、写真映えすることもあって、ブロガーには好評だったという。

桜島ビジターセンターによると、ここ数年の入場者数は日本人客が減少傾向だが、一方、着実に伸びているのが、外国人旅行者だという。そのうち最も高い伸び率を示しているのが、中国本土からで、2013年度が733人、2014年度が1,822人、2015年度が4,607人だ。その伸び率は6倍を超えている。また、香港からは、2013年度が1,997人、2014年度が5,033人、2015年度が5,737人だった。

桜島の景観と温泉の魅力が相乗効果につながっているのだろう。

Part3に続く

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