インバウンド特集レポート

2018.12.12

2018年、日本各地で起きた災害 教訓を生かしスムーズな対応も

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前回は、9月に発生した北海道での大地震と関西国際空港の水没の際の現地の様子と宿泊施設での対応についてお伝えした。今回は、西日本に甚大な被害が及んだ7月の「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」と2月に北陸地方で発生した大雪の現地の状況、そして以前の災害時の教訓を生かした対応についてレポートする。

 

7月には歴史的大雨を西日本にもたらし、大きな被害となった

さて、今年を振り返ると、台風、地震以外に大雨があった。それは7月に西日本で発生した「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」。大洪水をもたらした災害だ。

この月、訪日観光客数の対前年同月比全体は増加しているものの、韓国市場は、前年同月比5.6%減の60万8000人と減少している。もともと韓国人には九州や関西方面が人気で、大雨の被害によって手控えたとJNTOのレポートが示していた。

筆者もちょうど7月6日に関西方面にいたが、雨量の多さに驚いた。車のワイパーが追い付かず、前が見えないのだ。

今回の豪雨で、気象庁は数十年に一度の重大な災害が予想される場合に出す「大雨特別警報」を7月6日から8日にかけて福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、京都、兵庫、岐阜、愛媛、高知の11府県で発表した。実に広範囲だ。一つの災害で4都道府県以上に出されたのは初めてとなった。

7月の月降水量平年値の2~4倍となる大雨に見舞われた場所があり、この影響で、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生し、死者、行方不明者が多数となる甚大な災害となった。また、全国各地で断水や電話の不通等ライフラインに被害が発生したほか、鉄道の運休等の交通障害が発生した。

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京都の嵐山のホテルでは、全館避難指示を出したケースも!

さて、特に外国人観光客が多く集まる京都の状況はどうだったのだろうか。

京都の嵐山付近では、桂川の氾濫の危険が迫っていた。当時、桂川沿いのホテルLiv嵐楼閣で避難指示の陣頭指揮をとっていた山本博氏に話を聞いた。同氏は、京都に40~50のホテル、ゲストハウスの運営を専門とする会社で開発事業部長(当時)を務めていた。ホテルには、8~9割の外国人客がいたそうだ。

ここの運営会社は、本社が京都駅前にあったので、今回のような災害などの際には、現場の声に基づき、本部が判断して避難を指示する。

山本氏によると、「7月5日の早朝から京都市の桂川の災害注意報がスマホに届いていました。5分おきにピーピーなるほど、刻一刻と災害が迫っていることがわかります。ホテルが渡月橋に近い、桂川沿いに建っていることもあり、浸水の危険が想定されます。そこで、5日の朝には、お客様の全員避難が決定しました。

しかし、2013年も桂川が氾濫し、今回はそれほどの警戒レベルではなかったので、着の身着のままの早急な避難という状況ではなく、もし予想より降水量が増えた場合を考え、今回は念のため、避難をしておくというレベルでした。」

そこで、すでに滞在中の方には、空室のある他の施設への移動をお願いしました。本来は、嵐山に泊まりたいお客様は、街中に泊まりたい方とニーズが異なりますので、無料で案内したのです」

また5日にチェックイン予定の方には、あらかじめメール、電話等、いろいろな手段を使ってアプローチして、他の宿泊施設への変更をすすめたそうだ。

まずは、お客様の安全を確保して、次に現場スタッフの安全確保をした。パートスタッフの方々には、早めに帰ってもらい、深夜には本来、夜勤が入るところ、山本氏自らが宿直した。何か非常事態が起きたら、対応できるようにとのことだ。

この宿には、災害時のマニュアルがある。以前の台風の際は桂川が氾濫し、それを契機に避難マニュアルを作り変えたのだ。大雨の緊急速報だけではなく、現場からの声も大事にした。オフィシャルな緊急速報が、ときにタイムラグが生じる場合があるからだ。現場から写真や動画を送ってもらい判断材料とした、と当時を振り返る山本氏。

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嵐山界隈は、地域で消防訓練を行う仕組みになっている。宿が多いので合同で行うため横の連携もできる。そのおかげもあり、困ったときに相談することも可能だから心強いという。

まさに以前の教訓をいかし、マニュアルづくりや連携を大事にしたことで、慌てずにスムーズな対応になっているのだろう。

 

2月には全国各地で大雪をもたらし、北陸地方は完全ストップに

さて、1年近く前の出来事なので忘れてしまいがちだが、今年は大雪も発生した。北海道も例年より多く、東京も大雪に見舞われた。

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なかでも2月に北陸地方にもたらした大雪の被害では、2月7日の福井市の積雪量が147cmとなり、1981年の「昭和56年豪雪」以来、37年ぶりに140cmを超えた。そのため福井県・石川県を中心に在来線の運休が相次いだほか、石川県の小松空港では2月5日から8日の4日間にわたり全便が欠航となった。長期化した交通への影響は物流にも打撃を与え、店頭の商品が品薄になり、ガソリンスタンドの給油がストップする事態になったのだ。

北陸地方の大雪の際は、交通がストップすることが事前にわかっていたため、外国人観光客には大きな混乱がなかったというのが、現場の声だ。事前にコースを変更して迂回してもらうなどの措置が取られていたからだ。

しかし、風評被害が発生して、客足を取り戻すのに時間がかかったと、富山県黒部市の宇奈月温泉にある宿の経営者はいう。そのような風評被害の対策については、次の章で述べるとしよう。

このように、2018年は、大雪に始まり、大雨、台風、地震が続き、停電等の2次災害まで発生している。そこで次回では、これを受けて各地で行われた取り組みを紹介する。

(次回へ続く)

 

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