インバウンド特集レポート

2019.05.08

マンガに魅せられる訪日客。マンガ・アニメ施設が行うインバウンド対応とは?

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マンガ・アニメは、クールジャパンとして海外に浸透している。その影響もあってか、マンガ・アニメの舞台を訪ねる聖地巡礼を楽しむ外国人観光客が増えており、まさに地方創生の可能性を含んでいる。さらに、マンガに関連した施設では外国人観光客の来訪が増え、もはやインバウンド対応が欠かせないほどである。マンガやアニメの影響は多岐にわたっているが、今回ここで取り上げるのは、ごく一部に過ぎない。マンガ好きなアメリカ人翻訳家に現状をうかがっても、やはり裾野は広く一括りにできないという。日本全国でどのような取り組みがあるのかピックアップしてみた。

 

ドラえもんの施設では、インバウンド対応があたりまえ?

神奈川県に「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」がある。ドラえもんをはじめ藤子・F・不二雄氏が描いたマンガの原画やゆかりの品が展示されている。

入館者数は2018年度が約43万人で、そのうちの20パーセントにあたる年間約8万人が外国人客だ。取材当日も、朝から外国人観光客が並んでいた。

建物を川崎市が所有し、運営を株式会社藤子ミュージアムが担う。川崎市からの要請で、2011年の開館時から多言語対応をしている。「おはなしデンワ」という名称の首からぶらさげる館内音声ガイドは、日本語の他、英語、中国語、韓国語に対応している。パンフレットは日本語版と多言語版の2種類あり、掲示版も英語表記が並列されている。

実際に外国人観光客の入場数が増え、英語や中国語対応のスタッフも配置するようになり、ショップでは、中国人スタッフが販売向上に一役かっている。

また入場券に関しては、完全日時指定制でローソンチケットでの事前購入となっており、英語や中国語(繁体字、簡体字)での表記があり、海外でも購入可能だ。入館券の受け取り方法は、ローソンチケットの他、QRコードでの対応があり、外国人客にとっての使い勝手も上々だ。

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中国からの来場者数が一番多い!

同施設では、実際来る外国人の実数や国別の割合を厳密に把握していないが、「おはなしデンワ」の貸し出し件数で統計をとっている。一番利用が多いのが中国語版で、次に英語、そして韓国語の順番だ。中国語が圧倒的に多く、割合は70%程度。そして英語が25%程度で、韓国語が5%だ。

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担当者によると、中国での人気が圧倒的に高い理由は、かつてはテレビアニメが放映されていたこと、そして最近では、映画の公開で話題になり、幅広い年代に支持され、ファミリー層にハマるからだ。最近では3DCG映画「STAND BY ME ドラえもん」が中国で大ヒットした。もちろん台湾や香港でも人気だ。

一方、英語版の利用は、東南アジアからの旅行者が多いと担当者は言う。タイ、インドネシア、マレーシアといったところだろう。取材当日も、オープンを待つ列の中にヒジャブと呼ばれるイスラム教徒の女性が被るスカーフを身につける女性数名が並んでいた。

また、ベトナムでのドラえもんの受け入れられ方は特別だ。出版物の管理が整っていなかった時代から、ドラえもんの漫画はベトナム語に翻訳され海賊版として広く普及していた。その後、正式契約によって得られた印税をベトナムの子供たちの未来に使ってもらいたいと、藤子・F・不二雄氏からの申し出があり「ベトナムの子供たちのためのドラえもん教育基金」がはじまった。その縁もあり、ベトナムではドラえもんの人気が高い。

「これ以外にもドラえもんのマンガは、15カ国語で展開され、認知度は海外で高いです。」と担当者は続ける。

多くのアジアの国々でドラえもんが支持され、このミュージアムを訪れる動機になっている。館内のシアターではオリジナル短編を上映していて、英語の字幕を追加したところ、外国人観光客が多く立ち寄るようになった。

「ギフトショップでは、中国からの方がフィギュアやぬいぐるみなど、立体的なものをお土産に購入される方が多いですね。またキャラクターのマグネットも人気です」と担当者。

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「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」は、都心から離れているものの、ここを目的にやって来る。川崎市まで足を運ぶ動機になっていることは確かだ。

 

マンガに囲まれて眠れる宿が誕生した!

さて次に紹介する施設は、東京の神保町に今年2月にオープンしたマンガがテーマのホステルだ。

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正式名称は「MANGA ART HOTEL, TOKYO(マンガ アート ホテル トーキョー)」という。コンセプトは「ただひたすら、マンガの世界に浸る“一晩中マンガ体験”」ができる「漫泊(まんぱく)」で、「眠れないホテル」をテーマとしてマンガ体験を提供している。

「神田テラス」というデザイナーズビルの2つのフロアにあり、1階からエレベーターに乗り、受付のある5階で降りると、目の前がチェックインカウンター。カウンター奥にはトイレやシャワー室、洗面所等の水回りがある。さらにそこを抜けると、2段ベッドのドミトリーになっていて、その一角がまるで異空間に迷い込んだかのように本棚がマンガで埋め尽くされている。その数は5000冊を超える。外国人観光客向けに英語版も用意し、男性フロアと女性フロアで選書内容が異なる点もこだわりのポイントだ。

オープン後、宿泊者の外国人観光客の割合は35%ほどまで割合が増えてきたそうだ。アメリカ、イギリス、ドイツがトップ3で、欧米からが多いのが特徴だろう。もちろんアジアの国々からも人気で、国数は現状で33カ国を超えた。

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宿泊者の目的は、ほとんどの方がマンガを読むこと。マンガに囲まれて寝ること自体が至福だというゲストもいて、5日泊まったのに1冊しか読んでないというケースもあったそうだ。

 

新規事業としてベンチャーが挑戦する!

同ホテルを運営する株式会社dot(ドット)は、御子柴(みこしば)雅慶氏ともう一人の共同代表・吉玉泰和氏が4年前に起業した。当時は、民泊軒数が日本で急速に増え始めたころで、彼らはその需要を見越して民泊代行業を始めた。全国で400室を手掛けるまでになり、業界では信頼を集めるまでになったものの、いつかは自分たちで物件を持ち、運営をしたいと考えていた。そして1年半前の2017年の夏ごろ、その実現に向けて動き出すことになった。メンバーは2人のほかに、建築家の山ノ内淡氏を迎えてチームを組んだ。ホテルのコンセプトを3人で議論するなかで、「マンガ」がテーマと固まった。これまでにない宿泊体験を提供する場として注目したのが、日本が世界に誇る文化の一つ「マンガ」で、外国人旅行客に日本をもっと好きになってもらえると考えた。

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マンガのラインナップで重視した点は、アートとしてのマンガだという。彼らのアートの定義とは、ストーリーに感情を動かされたかどうか、また装丁のクオリティーの高さも評価基準だ。作家の世界観や画力、文字フォントのデザイン性も問われ、総合的に判断していったという。

英語版の選定も、常に検討をしている。日本の文化に対する予備知識の有無でその価値が伝わらない場合もあり、試行錯誤を続けている。今後、マンガのラインナップも変えていく予定で、どんな新刊を入れて、その代わりどれを外すかも宿泊者の声を参考にしていきたいと御子柴氏。

まずは、ここでのサービスの完成度アップを目指し、その先には地方でも展開できればと考えている。マンガに特化したホステルが、全国に広がるかもしれない。

マンガ・アニメの施設が増え、着実に訪日外国人の需要を掴んでいるようだ。

(次回へ続く)

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