インバウンド特集レポート

2019.05.09

アニメ好きの訪日客による「聖地巡礼」が、地方創生の起爆剤になる!?

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前回は、着実に外国人の需要を掴んでいるマンガ・アニメの施設のインバウンド対応についてお伝えした。今回は、マンガ・アニメの舞台を訪れる「聖地巡礼」をする訪日外国人に向けて、地域はどのような取り組みをしているのかを紹介する。

 

地域の活性化にマンガの可能性をかける

さて、マンガ・アニメの影響力は、地方にも及ぶようになっている。それは「聖地巡礼の楽しみ」があるからだ。聖地巡礼とは、アニメやマンガの舞台となった地域を訪れ、作品の世界観を体感するというもの。鎌倉にある江ノ電の海沿いの踏切は、バスケットボールをテーマにしたマンガ「スラムダンク」で有名になり、そのファンが海外から写真を撮りに来るほどだ。

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聖地巡礼を含め、マンガで地域を盛り上げようとしている自治体がある。鳥取県だ。

なぜ、鳥取県がマンガに力を入れるようになったのか?それは、鳥取県が生んだマンガ3巨匠の協力が大きい。故郷を盛り上げようと、地元サイドも町づくりにマンガを生かしている。

3巨匠の1人目は、鳥取県境港市出身の「ゲゲゲの鬼太郎」の作者水木しげる氏。境港市には、1993年に妖怪のブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」ができ、人気観光スポットになっている。

2人目は、フランスで文化勲章シュバリエを受章した、鳥取市出身の漫画家谷口ジロー氏だ。鳥取県が舞台の作品「父の暦」や「遥かな町へ」も素晴らしい。

そして最後の1人「名探偵コナン」の作者、青山剛昌氏は鳥取県中部の北栄町の出身だ。2007年には同町に「青山剛昌ふるさと館」ができ、多くの人が訪れている。

 

マンガを横断的にまとめる部署「まんが王国官房」鳥取県庁に発足

このような背景からも、鳥取県としても観光のキラーコンテンツとしてマンガを押し出していく素地があった。そこで、このテーマを横断的にまとめる部署として、2012年に「まんが王国官房」が発足した。

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©水木プロダクション ©パピエ・谷口ジロー/小学館 ©青山剛昌/小学館

「名探偵コナン」作者の出身地ということもあり、2015年に「名探偵コナン鳥取ミステリーツアー」が鳥取県で実現した(現在は、終了している)。

この実現のために実行委員会が立ち上がり、JR西日本、鳥取県まんが王国官房、関連の地元行政が加わった。

「名探偵コナン」の世界観で本格推理に挑みながら、鳥取県内の観光を楽しむことができ、ツアー終了後、全ての謎が解けた正解者にはプレゼントがもらえるというもの。「名探偵コナン」になりきって旅をしながら、指定の場所でヒントを集め、謎を解いていくというストーリー仕立てになっている。

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©青山剛昌/小学館

まず、2015年は日本人向けの企画として開催。翌年はそれをアジア向け(台湾、韓国、香港、タイ)に開催した(2016年4月から2017年2月末まで)。エリア内の路線を3日間または5日間周遊できるレールパスで移動しながら謎を解いていくというもの。

外国人の参加者は、マンガ好きな若い層だけではなく、子供連れのファミリー層も多い。また、謎解きのための訪問場所も県内に分散させて、回遊する仕組みを作ることで、幅広い層に多くの見どころを見てもらうことができた。

参加者からは、今まで鳥取県を知らなかったが、見どころが多くて楽しかったというコメントがあった。また、新しい発見があったという意見もある。海外で知られている「名探偵コナン」をきっかけに、鳥取県を多くの方々に知っていただくことができたと、まんが王国官房の担当者は語る。

 

ヨーロッパや香港でマンガに関連した新しい取り組み

鳥取県では昨年、フランスのパリで開催された日本文化の祭典「ジャポニスム2018」に出展し、谷口ジロー氏の作品を日本文化会館で展示した。鳥取県の四季を描いた2.4×8.4メートルの巨大な「屏風絵風パネル」に複製原画を貼ったもので、複製原画に描かれた鳥取県の風景と合わせて、実際の鳥取県の風景の写真も展示した。来場者の中には谷川ジロー氏のファンもおり、彼の出身地だと知って鳥取県に興味を持ったという声もあった。今後フランスからの旅行者を増やすための布石になればと、同担当者は言う。

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©パピエ・谷口ジロー/小学館

また鳥取県は、香港で毎年7月下旬に1週間開催されている「香港ブックフェア」に出展している。アニメツーリズム協会が中心に出展しているジャパンパビリオンの一角にブースを設けPRを行っている。旅行博と違って、マンガやアニメを目的に来場する方も多いので、新しい顧客の開拓につながったと手ごたえを感じたそうだ。

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©水木プロダクション ©パピエ・谷口ジロー/小学館 ©青山剛昌/小学館

2018年度と2019年度は、外国人の受け入れ強化として、韓国、台湾、香港向けに「まんが王国とっとり満喫周遊パス」を販売している。水木しげる記念館や青山剛昌ふるさと館を含めた県内観光6施設を格安の料金で入場できるお得なパスだ。スタンプを重ねて捺(お)していくことで、1枚の作品に仕上がる重ね捺しスタンプラリーも楽しむことができる。そこでも「名探偵コナン」や「ゲゲゲの鬼太郎」や「遥かな町へ」などがアイキャッチになっていて、鳥取県への誘客促進に一役かっている。

 

静岡市のちびまる子ちゃんランドがインバウンドで盛り上がる?

さて、次に紹介するのは、マンガ・アニメの舞台として成功している静岡市だ。昨今、静岡市内の清水区にある「ちびまる子ちゃんランド」というちびまる子ちゃんに関するミュージアムが、外国人観光客からも人気となっている。ここは、1999年10月にエスパルスドリームプラザという商業施設内に開設されたもので、特に最近は外国人の比率が伸びている。

ちなみに、ちびまる子ちゃんランドで外国人の人気を集めているのは、写真撮影だ。背景もアニメにそっくりなシーンで、主人公の自宅や小学校の教室、近所の街並みなどが再現されている。そこで登場キャラクターの衣装を着て写真を撮ると、まるでアニメの世界に紛れ込んだような写真に仕上がる。

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ここの人気の要因をちびまる子ちゃんランドの担当者に伺うと、それは「立地がゴールデンルート上にあること」だとわかった。名古屋と東京を結ぶ中間地点にあり、どちらを起点にしても、バスで移動すると昼食スポットにちょうど良い。

ちびまる子ちゃんランドが入るエスパルスドリームプラザは、寿司レストラン街があり、昼食にうってつけだ。まぐろの解体ショーを行うこともあり、エンターテインメント性も高い。また、ここでしか買えない加工食品も人気がある。一部個人客の外国人も来場するが、団体のツアー客が多く、マニアックなアニメファンは少ないそうだ。

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聖地巡礼が外国人旅行者にも広がっている

『巡礼ビジネス ポップカルチャーが観光資源になる時代』(角川新書)の著者でもある奈良県立大学・地域創造学部准教授の岡本健さんは、FNN.jpプライムオンライン上で「インターネットの普及にともない、アニメ聖地の情報が共有されやすくなっていった」という主旨のコメントをした。「ごく一部の熱心なファン」から「一般的なファン」へと広がっていったのは、インターネットの普及によるところが大きい。

さらに、同氏のコメントはこのように続く。「2018年の人気アニメ『ゾンビランドサガ』の聖地である唐津市歴史民俗資料館(佐賀県唐津市)へ調査に行ったところ、現地の住民の方からさまざまな国の方が聖地巡礼に来られていると聞き驚きました。同様にアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台として盛り上がっている静岡県の沼津市にも、世界各国から聖地巡礼者が訪れています」

つまるところ、海外から一般的なファンが聖地巡礼する場所と、マニアックなファンが聖地巡礼をしている場所との二極化が進みつつあるのだろう。

(次回へ続く)

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