インバウンド特集レポート

2019.06.04

「SNS映え」で地方に訪日客を呼び込め! 注目の雲海ツーリズムとは?

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今日の訪日外国人にとって「SNS映え」するスポット探しは大きな関心事のひとつ。必ずしも全国的有名観光地である必要はなく、彼らの感性や嗜好にマッチするかどうかにかかっている。それだけに、まだインバウンドの恩恵を受けていない地方にも可能性がある。今回は雲海をテーマにそれを探ってみたい。(執筆:中村正人)

 

日本は全国的に雲海の名所がある!

日本政府観光局(JNTO)によると、2019年に入っても訪日外国人数は順調に伸びてはいるものの、「観光公害」が取りざたされるほど過度に集中する都市・地域がある一方、まったく外国人の姿を見かけることのない地方もまだたくさんある。こうした明暗こそ、今日の日本のインバウンドの大きな課題といえるだろう。本来、インバウンドを必要としているのは、海外からみて無名の地域であるはずだ。

では、どうしたら外国人観光客に無名の地域の存在に気付いてもらうことができるのだろうか。

これはすでに広く指摘されていることだが、それぞれの地域における「SNS映え」する観光素材の発掘が課題解決のひとつの手がかりになるだろう。

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▲雲海越しに富士山が見える山梨県韮崎市甘利山から眺め

その注目事例として、雲海ツーリズムについて述べてみたい。

雲海とは、山や飛行機など高度の高い場所から見降ろすと、雲が海のように拡がっている光景をいう。雲の発生状況は、そのときどきによって変わることから「同じ表情を二度と見せることのない一期一会の出逢い」が、多くの観光客を魅了する理由である。放射冷却などいくつかの条件が揃って初めて発生する自然現象で、以下の5つの発生条件がある。

1.季節:東日本では春や秋、西日本では冬が多い
2.時間帯:夜明け前~早朝
3.気象:湿度が高い・放射冷却がある・無風状態・快晴
4.気温:前夜の気温と次の日の早朝の気温に差がある
5.場所:山間部や盆地

日本はこうした条件に恵まれていることから、全国各地で雲海スポットがある。楽天トラベルが選んだ日本の雲海スポット9選と主な発生時期は、以下のとおり。

北海道 雲海テラス 営業期間:2019年5月11日(土)~10月14日(月)
群馬県/長野県 渋峠 5月〜11月頃
静岡県/山梨県 富士山 登山シーズン(5合目~山頂)7月上旬~9月上旬
長野県 高ボッチ高原 雲海 発生時期 10月~12月頃
長野県 雲海Harbor 営業期間:2018年10月22日(月)~11月25日(日)
兵庫県 竹田城跡・立雲峡 秋~冬 11月下旬〜12月上旬がもっとも濃い雲海が出やすい
京都府 大江山 11月~12月頃
岡山県 備中松山城 9月下旬~4月上旬頃
宮崎県 国見ヶ丘 9月中旬~11月下旬頃

「日本のマチュピチュ」と称される兵庫県の竹田城跡や富士山から眺める雲海などは、広く知られているだろう。こうした雲海スポットは、観光名所としてのみならず、ドライブ旅行や登山、そして最近では撮影スポットとしてなど、さまざまな旅のストーリーづくりと結びつくことで注目度がアップしているのだ。

 

星野リゾートの北海道の雲海テラスが進化中

なかでも北海道の星野リゾートトマム内にある「雲海テラス」は、「雲海が見える」宿泊施設であることのみならず、雲海を体験するためのさまざまな工夫としかけが施されているという意味で、屈指のスポットといえるだろう。

同テラスの公式サイトによると、「リゾート内には循環バスが運行しており、リゾナーレトマムから約10分、ザ・タワーから約5分でゴンドラ乗り場に到着。そこからは片道約13分。ゴンドラの空中散歩」でテラスに着くという完備されたアクセス、2005年夏から始めたというテラス内の早朝カフェの運営。さらに2015年9月に誕生した、“雲の上を歩く”ような体験が楽しめる新デッキ「クラウドウォーク」の設置、そして今後数年間かけて進めていく、雲海テラスでの9つの過ごし方を提案する「Cloud9(クラウドナイン)計画」など、次々と新しいアトラクションが予定されている。

※2019年3月現在、Cloud1~5まで完成し、2019年夏にはCloud6にあたる「Cloud Bar(クラウドバー)」が完成予定。

また、シーズン中、雲海に出逢える確率は40%ということから、独自の「雲海予報」を出すなど、情報発信も行っている。気温や湿度、風向や風速といった気象情報をもとに「ある方角に午後から雲が出ると、翌朝は冷え込む。するとトマムに雲海が出やすい」といった経験則を組み合わせて予報するというもので、この地を訪れる人たちにとって最も知りたい情報を発信することに注力していることも、好評の理由だろう。

こうした取り組みは、すでに海外でも知られるようになっている。たとえば、台湾のネット上では、「日本の10大雲海ホテル」ランキング1位として雲海テラスが紹介されおり、旅行サイトでも人気商品となっているようだ。

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▲Yahoo!台湾の「日本の10大雲海ホテル」ランキング

1c雲海テラス 

▲台湾の旅行サイトでも雲海テラスは人気スポットとして紹介される

また、中国のSNS微信でも、雲海テラスだけでなく、実際に全国各地の雲海スポットを訪れた中国客による投稿も盛んに行われている。

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▲中国SNS微信による雲海テラスの「クラウドウォーク」を紹介する投稿

 

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▲星野リゾートトマム以外の全国各地の雲海スポットの投稿が見られる

今日の訪日外国人の多くは、国籍にかかわらず、「SNS映え」するスポットに魅かれることは知られているが、なかでも台湾や中国の人たちのこだわりは突出しているといわれる。しかも、彼らにとって雲海は「SNS映え」するだけのスポットではなさそうだ。次回は、その理由を探ってみたい。

(次回に続く)

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