インバウンド特集レポート

2019.09.02

個人事業者の参入により、多様化や盛り上がりを見せるインバウンド向け体験プログラム

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ここ数年、モノ消費からコト消費への転換というのは、インバウンド業界ではお題目のように、あちらこちらで聞かれるテーマだ。数年前までの「爆買い」のインパクトがあまりにも大きかったからだろう。さて、その体験ツアーも、多様化する旅行ニーズに歩調を合わせるように、実に多くの商品が生まれ、群雄割拠という状態だ。
特にここ最近、面白い現象が生まれている。それは、個人による体験プログラムの訴求で、その多様化したニーズに応えているのだった。インバウンド業界は、個人も参加するフェーズへと間口が広がっていると考えられる。では、なぜ、ここ最近、そのような状況になったのか、そしてどのような個人が参入しているのか、レポートしていきたい。(執筆:此松タケヒコ)

 

メニューづくりに変化がおきている

取材を通じて、個人が主催する体験プログラムが普及した要因は、2つの理由があることがわかってきた。

1つ目は、マッチングサイトの登場だ。海外のお客様と日本側の個人が提供する体験をマッチングするAirbnb(エアービーアンドビー)の参入がターニングポイントとなり、実に簡単に予約できるようになった。2つ目は、2018年に通訳案内士に関する法律が改正され、誰でも有償で外国人にガイドできるようになったことだ。

まず、1つ目のAirbnbについてだが、もともとは民泊のマッチングサイトとして伸びてきたことでご存じだろう。そして「体験」に参入したのが、2016年11月のこと。12都市、500件の体験が提供された。まずはパイロット版としてつくられ、改善が施され、現在は全世界で約4万件以上に拡大している。そのうち、日本では約1000件が登録されている。

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日本では、2018年に法律が改正され、自由化されたことで、一気に拡大するようになった。加えて、人々の関心がモノ消費からコト消費へシフトしつつあることも体験への興味の要因であろう。Airbnbでは、2018年7月以降、体験を積極的に全国展開し、東京、京都、大阪とインバウンド客が多いエリアを重点地区として件数の増加に力を入れた。今もなお、日本の体験は大変好評だ。

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特に人気のジャンルは、食、自然、アートだとAirbnbの広報担当者。そのホスト役は、すべて個人が対応しているという。

 

個人同士のコミュニケーションがベースにある

 Airbnbの広報担当者によると、「これまで個人宅に泊まることを提供してきたが、それは、世界の離れている個人同士がコミュニケーションするという体験を生み出し、そのようなふれあいを求めている旅行者が増えたのも要因だろう。つまり個人のホストが多くいる背景は、個人旅行者がより独自なパーソナルな旅を目指すようになったのが大きな理由だ」と続ける。

そのような個人が増えるなか、もっと敷居を下げたのが体験だ。誰でも参加しやすい。民泊であると、空き室等、不動産を持っていることが前提になり、簡単にはできない。一方、体験では、自分の趣味等のエキスパートの部分を提供するだけで可能だ。

ある分野に精通している個人が、その知識や能力を旅行者に提供してもらおうというもので、民泊と違って、ミニマムコストで参入できるのが特徴。新しく何かを学ぶ必要がなく、新規で投資をする必要がなく、もともと持っているスキルを提供するだけで実現できる。Airbnbの体験にはクオリティの基準があり、体験のクオリティが維持されている。

なかには、西荻窪の飲み屋巡りという体験もあり、その体験ホストは、帰国子女の男性で、英語を日常でも使いたいと始めたものだった。飲むのが大好きなホストは、地元のディープな飲み屋を案内し、訪日外国人たちと盛り上がるという。

他にも、和菓子づくり体験、着物のモダンな着こなし体験、サムライ道場体験など、ありそうでなかったユニークな体験を提供しているのが特徴だ。

いずれもAirbnbのマッチングがあるから実現できた体験だ。個人同士のつながりによって共感できる内容になっている。またAirbnbではホスト同士のコミュニティづくりにも力をいれていて、お互いに情報交換してスキルアップできるように、ミートアップの機会を設けている。

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通訳案内士の法律改正が大きく影響!

次に、2つ目の理由である通訳案内士の国家資格の法改正について説明しよう。

これは、2018年に施行されたもので、急増する訪日観光客に対応するため、国交省が通訳ガイドの量の確保を目指すことになったのが背景にある。それまでは、通訳案内士という国家資格の所持者のみが、有償でガイドできる業務独占だった。無資格で行った場合には50万円以下の罰金が定められていたのだ。それが、法改正により、誰でも可能になった。

通訳案内士の国家資格を取得するには、語学はもちろん幅広い知識が要求されるが、受験者数も伸び悩んでいたので、このままでは日本の良さを伝える人材が不足してしまうからだ。

一方、通訳案内士の国家資格制度がなくなった訳ではなく、名称独占へと変わった。この資格を有していることで、クオリティの担保となり、安心して仕事の依頼ができるという。さらに、その法改正のタイミングで、地域に特化したガイドである地域通訳案内士の資格制度を国交省は創設している。

つまり、誰でも自由に有償でガイドができるようになった結果、体験プログラムを提供するホストは、自分のスキルをいかして、満足度の高いコースをつくれるようになったのだ。

まさに、この法改正のきっかけによって生まれたユニークなガイドを二人、掘り下げて紹介しよう。個人だからできるという、よりエッジが立ったものばかりだ。

次回へ続く

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