インバウンド特集レポート
年々増加傾向の春節シーズンの外国人旅行者。もちろん中華系が多くを占める。となれば、彼らの日本観光の目的であるショッピングはおおいに盛り上がる。商業施設も、この市場は重要と位置づけ、呼び込みを強化。そのためにもエリア内の連携が進んでいる。この時期のエリアのキャンペーンを追った。
目次:
原宿表参道では、VISAカードのロゴマークが入ったフラッグが並ぶ
日本ではクレジットカードが使えないと思われている?
競争と共存を育み、原宿の強みをバージョンアップ
商店街主催のキャンペーンが渋谷でも立ち上がった!
スマホをシェイクして景品を当てる!
新宿では、冊子の配布でショッピングの訴求を目指す
福岡では、民間から手弁当で立ち上げたキャンペーンが拡大中
2016年の春節も、瞬間風速的に中華圏の旅行者が増えた。
この春節とは、旧暦の元旦のことだ。今年は2月8日が「元日」にあたり、中国の政府機関などは7~13日が休み。中国本土や香港、台湾などでは爆竹を鳴らし、盛大に祝う。帰省する人も多く、中国大陸では民族の大移動となる。最近では海外旅行をする人も増加した。
東京も人気観光地の一つ。そのタイミングに向けたショッピングキャンペーンが都内各所で開催された。
原宿表参道では、VISAカードのロゴマークが入ったフラッグが並ぶ
まず先進的なのが原宿の表参道だ。4回目の開催になった。
2月1日(月)〜14日(日)の14日間は、春節のコアウィークとして、街頭にフラッグを掲出してキャンペーンを盛り上げた。表参道にある122本のストリートフラッグを4言語(英語、繁体字、簡体字、ハングル)で掲出。
表参道の歩道には、街頭コンシェルジュを配置し、訪日観光客に対して英語と中国語でキャンペーンを案内。着物を着たコンシェルジュも常駐し、道案内だけでなく、訪日観光客といっしょに記念撮影などのサービスも提供した。
回を重ねるごとに、より売り上げにつながる施策にフォーカスが移ってきたようだ。以前の文化体験やショー形式のものは縮小されている。
やはり目玉は、昨年好評を得た「訪日観光客限定スクラッチカード」だ。訪日観光客による消費拡大を目的している。
当たり券(1,000円金券)を前年比2倍の2,000枚に設定 (総額200万円)し、6万枚のスクラッチカードを印刷したが、途中で足りなくなり急遽、印刷の追加オーダーをしたほどだ。
外国人比率が50%を超える「原宿キデイ・ランド」では、8割のスクラッチカードが利用されたという。当たりがでると、さらにお買い物をしてくれた外国人も少なくない。
このスクラッチカード、原宿・表参道エリアの対象店舗(200店舗以上)において、税込1,000円以上購入・飲食をしたお客様に、1回の支払いにつき1 枚プレゼント。もしも当れば、次回の買い物ですぐに利用できる「1,000円クーポン券」になる。
さらに海外発行のVisaカードで支払うと、スクラッチカードをさらにもう1枚(合計2枚)もらえ、ダブルチャンスになる。
このキャンペーン名は「Tokyo Shopping Week 2016 at Harajuku / Omotesando」と変更されたが、主催は、引き続き商店街振興組合原宿表参道欅会だ。また協力も引き続きビザ・ワールドワイド。
なぜ、ビザ・ワールドワイドが表参道界隈を協力するのか。そこには、ビザ・ワールドワイドの戦略があるからだ。
日本ではクレジットカードが使えないと思われている?
昨年、同社が主催するセミナーで、「決済インフラ」の課題とVisaの取り組みと題して龍武史氏が登壇し、日本でのショッピングにおける機会損失について言及した。
日本ではクレジットカードが使えないと外国人に思われていて、売り逃しをしているという。
同氏によると、東京は、海外の26の国際都市と比較した場合、交通アクセスが高い評価がある一方、ショッピングや支払いについて評価が低いというアンケート結果がある。
それを裏付けるように、クレジットカードが使える店が少ないとガイドブックに書かれている。理由としては、店の入り口やレジ脇にクレジットカードが利用できることを示すアクセプタンスマークが付いてない店舗が多いからだ。同社の調査によると、クレジット決済ができるにも関わらず、店頭に掲出していない店は92%のぼった。
アクセプタンスマークが店頭の目立つ位置にあると、利用客の利便性、安全性、不安解消につながる。
ユーザーの83%が、マーク表示のある店を好む傾向だ。実際にアクセプタンスマークを掲出したところ、平均単価があがったという調査結果がある。また同社が試算したところ、年間3,300億円の機会損失をしていることがわかった。
つまり原宿表参道で、通りにフラッグを掲出し、店舗の入り口付近にアクセプタンスマーク貼ることで、店舗の売り上げを向上させるとともに、日本でのクレジットカード利用を促進したい考えだ。
競争と共存を育み、原宿の強みをバージョンアップ
さて4回目を迎えた今回、参加店舗が積極的になってきたと手ごたえを感じる同商店街のインバウンド担当の中島圭一氏。
夏場から定例ミーティングを設け、表参道ヒルズ、ラフォーレ原宿、東急プラザ 表参道原宿、キデイ・ランド原宿店の販促担当者が顔を合わせる。
普段はライバル同士でもあるが、キャンペーンに関しては協力関係になる。
日本人であれば、どこかの店舗を目的に訪れることはあるが、外国人の場合は、まずそのエリアに足を運んでもらうことが先決。そのためにも、実際に来られた外国人の満足度を高めるには、情報交換をして受入れ環境を高めあうことが欠かせない。
エリアをあげた盛り上がり感を出すために、キャンペーンポスターとアクセプタンスマークの掲出を徹底している。
通常、個店や商業施設のテナントショップの入口にポスターを貼るのは、容易ではない。
店舗ごとにレギュレーションがあり、本部の了解をとらないとならない。それはブランドイメージを損ないかねないデリケートな問題をはらんでいるからだ。
しかし今年で4回目を数え、参加店舗の理解も深まって、街をあげた取り組みに育ってきた。
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